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お世話にあがってください 2
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ある日突然やって来た使者と、我が家の居間のソファーに向かい合わせに座っていた。
ソファーの間のテーブルには、使用人もいないため、私が淹れたお茶が並んでいた。
使者の方は、フェル・ノインズと名乗る青年だった。
「お世話……ですか?」
「ぜひ、住み込みでお願いしたいのです。生活の保証はいたします。決して不自由はさせません。どうかお願いします。どうか……」
「でも……うちは、もう爵位を返上することになるのです」
伯爵だった父と母が亡くなり、お金のない我が家は、爵位返上となる予定だ。
そして、このルヴェル伯爵家はいまや私一人だった。
私、ダリア・ルヴェルは、このまま父が借金をしていたマレット伯爵家へ妾として召される予定だった。
それなのに、いきなりフェルという使者がやって来て、私に告げたのは、英雄騎士と呼ばれるノクサス・リヴァディオ様のお世話にあがって欲しいとの要請だった。
英雄騎士と呼ばれるノクサス様は、戦で武功を上げた方で、この田舎でさえ有名な方だった。
どうして私にお世話係の話がくるのかわからない。
令嬢の行儀見習いにしたって、面識のないノクサス様から、お話がくるのは違和感がある。
父と知り合いだったとも聞いたこともない。
去年の18歳の時に、戦の前線ではないが、私は回復魔法が使えるから回復要員として、傷病者を受け入れていたある村に行ったことはあるけれど、前線にいたノクサス様と知り合いになるわけもない。
困惑したまま、目の前のフェルという使者を見た。
「……申し訳ありませんがダリア様のことは、少し調べました。回復魔法が使えると」
「もしかして、ノクサス様はお怪我を? それなら、もっと能力の高い白魔法を使える方の方が……」
「ダリア様がいいのです。……いきなりのことで驚きはあるでしょうが、悪いようにはしません。どうか、お願いいたします」
切羽詰まったようにフェルという使者の方はお願いしてくる。
でも、行くならマレット伯爵様にお伝えしないといけない。
妾としてあがるのを延期していただけるのかと……。
借金を踏み倒すわけにはいかない。
「……お返事は明日でもかまいませんか? 少し考えたいのです」
「勿論です。何かお困りなら、なんでもおっしゃってください」
「……なにもありません」
そう俯きがちに言うと、フェルという使者の方は少し冷めてしまったお茶を飲んだ。
「お茶をご馳走様です。明日にまた参ります」
フェルという使者は丁寧に挨拶をして、屋敷をあとにした。
そのフェルという使者を私は、玄関まで見送った。
急な話でどうしようかと悩む。
そのまま、庭の菜園に野菜を収穫に行くが、いつものことなのに、先ほどの話ばかり頭にある。
もしかしたら、マレット伯爵様の妾にあがらなくてもいいのかもしれない。
20歳代後半のマレット伯爵様は、強引な方で、ちょっと苦手だった。
お世話係のお給金が良ければ、借金返済の当てになるかもしれない。
生活は保証してくれると言っていたから、お給金はきっとほとんど借金返済に回せるはず。
妾にあがるよりも、お給金のいい仕事をして、借金を返済したほうがいいはずだ。
そんなことを考えながら、夕日は落ちていっていた。
ソファーの間のテーブルには、使用人もいないため、私が淹れたお茶が並んでいた。
使者の方は、フェル・ノインズと名乗る青年だった。
「お世話……ですか?」
「ぜひ、住み込みでお願いしたいのです。生活の保証はいたします。決して不自由はさせません。どうかお願いします。どうか……」
「でも……うちは、もう爵位を返上することになるのです」
伯爵だった父と母が亡くなり、お金のない我が家は、爵位返上となる予定だ。
そして、このルヴェル伯爵家はいまや私一人だった。
私、ダリア・ルヴェルは、このまま父が借金をしていたマレット伯爵家へ妾として召される予定だった。
それなのに、いきなりフェルという使者がやって来て、私に告げたのは、英雄騎士と呼ばれるノクサス・リヴァディオ様のお世話にあがって欲しいとの要請だった。
英雄騎士と呼ばれるノクサス様は、戦で武功を上げた方で、この田舎でさえ有名な方だった。
どうして私にお世話係の話がくるのかわからない。
令嬢の行儀見習いにしたって、面識のないノクサス様から、お話がくるのは違和感がある。
父と知り合いだったとも聞いたこともない。
去年の18歳の時に、戦の前線ではないが、私は回復魔法が使えるから回復要員として、傷病者を受け入れていたある村に行ったことはあるけれど、前線にいたノクサス様と知り合いになるわけもない。
困惑したまま、目の前のフェルという使者を見た。
「……申し訳ありませんがダリア様のことは、少し調べました。回復魔法が使えると」
「もしかして、ノクサス様はお怪我を? それなら、もっと能力の高い白魔法を使える方の方が……」
「ダリア様がいいのです。……いきなりのことで驚きはあるでしょうが、悪いようにはしません。どうか、お願いいたします」
切羽詰まったようにフェルという使者の方はお願いしてくる。
でも、行くならマレット伯爵様にお伝えしないといけない。
妾としてあがるのを延期していただけるのかと……。
借金を踏み倒すわけにはいかない。
「……お返事は明日でもかまいませんか? 少し考えたいのです」
「勿論です。何かお困りなら、なんでもおっしゃってください」
「……なにもありません」
そう俯きがちに言うと、フェルという使者の方は少し冷めてしまったお茶を飲んだ。
「お茶をご馳走様です。明日にまた参ります」
フェルという使者は丁寧に挨拶をして、屋敷をあとにした。
そのフェルという使者を私は、玄関まで見送った。
急な話でどうしようかと悩む。
そのまま、庭の菜園に野菜を収穫に行くが、いつものことなのに、先ほどの話ばかり頭にある。
もしかしたら、マレット伯爵様の妾にあがらなくてもいいのかもしれない。
20歳代後半のマレット伯爵様は、強引な方で、ちょっと苦手だった。
お世話係のお給金が良ければ、借金返済の当てになるかもしれない。
生活は保証してくれると言っていたから、お給金はきっとほとんど借金返済に回せるはず。
妾にあがるよりも、お給金のいい仕事をして、借金を返済したほうがいいはずだ。
そんなことを考えながら、夕日は落ちていっていた。
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