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エーデルワイスが咲き乱れている限り
しおりを挟む「リラ。これで、復讐は終わりだ。どうする? 今なら引き返せる。血まみれの俺の手を取るか? それとも、このまま去るか?」
ブラッド様が、試すように私に手を出して聞く。人生の半分と言ってもいいほど戦場に身を置いて、血のつながりはなくともずっと兄弟としていたフィラン殿下を見殺しにして、親子として育った陛下と王妃を眉一つ動かすことなく殺した。
ブラッド様は、その名の通り死神だ。彼には血がまとわりついている。
でも、私の返事は決まっている。
ジェイド様に振り向くことなく立ち上がった。ブラッド様の手を取り、彼に抱き着いた。
「俺の周りは血の海だぞ」
「いいの。一緒に溺れるから」
ブラッド様が、嬉しそうな様子で抱きとめる腕に力が入る。
「好きだよ。リラ」
「私も、ブラッド様だけが好きです。どこまでも一緒に行きましょう」
ブラッド様の胸板に身体を寄せると、力強い腕で包んでくれる。何とも言えない感情が自分の中にある。誰にも感じたことのない感情が。どんなに血まみれの男でもいい。私が癒されて助けてくれるのは、この腕の中だけだった。
「では、ご褒美をくれるか?」
「ご褒美?」
「けっこう頑張ったのだが?」
「はい。お望みのままに……」
ブラッド様の腕の中で言うと、彼はジェイド様の始末をし始めたユージンたちを見た。
「ユージン。リカルド……あとは手筈通りに頼むぞ」
「はい」
ユージンが筆頭に返事をする。ブラッド様の腕のなかから彼を見上げれば、勝ち誇ったような表情のブラッド様が私を見た。
「では、行こうか」
そう言うブラッド様が、微笑んだ私の手を引いて部屋を出ると、そこには大聖女も来ていた。
「大聖女様。お迎えありがとうございます」
私が王都の城へ帰還した時に迎えに出てくれたのは、大聖女様だ。
「リラ様には、感謝しております。聖女たちをあの戦争から救っていただきました。これからも、如何なる時もお力になります」
「その言葉は、戴冠式で頼む」
「もちろんです。私たち聖女は、ブラッド陛下と、リラ王妃に忠誠を誓います」
まだ、早いのです。そう思うけど、王冠はすでにブラッド様だけのものだ。
「大聖女。明日には、君たちの地位を発表する。約束通り王妃が奪った発言力は君に戻す。聖女たちにもだ」
「はい。感謝いたします」
「では、私は大聖女様を讃えて、エーデルワイスを聖女神殿へと贈ります。エーデルワイスが咲き乱れている限り、聖女たちの発言力は決して奪わないと誓います」
「リラ様……」
エーデルワイスは大聖女様のお名前。彼女は、感動して微笑んだ。
「エーデルワイスが咲き乱れている限り、私たち聖女もお二人を讃えることを誓います」
そう言って、大聖女様が傅いた。
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