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第三章 小話集

オズワルドと子供 (前編)

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オズワルド様は今日は昼から仕事で街に行っている。
私は一人部屋でセシルさんからの手紙を読んでいた。
どうやら、来月から王都の魔法学校に中途入学が決まったようでわざわざ私に知らせてくれたのだ。
しかし、良いお嬢様だと思う。
レオン様には勿体無いと密かに思ってしまった。

しかし、オズワルド様は遅い。
遅くなるから食事は先に食べろと言うから夕食はすんだが、もう夜だ。
先ほどから雨も降りガラス窓には雨音が響いている。

大丈夫かな、と思っているとやっと帰って来た。
しかし、タオルを持ち玄関でオズワルド様を出迎えると驚いた。
何とずぶ濡れで、4、5歳ほどの小さな子供を抱えていたのだ。

「…か、隠し子?」

本気で思っているわけではないが思わず、そう言ってしまった。

「違う!」

予想通り、オズワルド様は否定した。
子供もびしょ濡れで、持っていたタオルで拭いてあげながらオズワルド様に聞いた。

「どうしたのです?この子供は?」
「森で拾った。」
「そんな…森に落ちているわけないでしょう。」

森に子供が落ちていたら犯罪の匂いがしますよ。

「街の子供だ。森に入って迷子になったらしいから、探して連れて来た。」
「ご両親は?」
「…いないらしい。明日に祖父母が迎えに来ると言っていた。街に連れ帰るよりも、どうせ俺は邸に帰るからそのまま連れて来た。」

オズワルド様が話している間もぐしゅぐしゅと子供は泣いていた。

「リンクス、何か出してやれ。風呂もいるな。」
「では先にお風呂を準備します。」

びしょ濡れなのに、今からだと食事も遅くなるわ。

「私のお風呂はまだ温かいので、私の部屋でいれますね。リンクスはその間に食事を準備して下さい。」

リンクスにそう伝え、抱き上げようとすると、オズワルド様がまた子供を抱き上げた。

「さっさと行くぞ。」

全くしょうがないな。とぶつぶつ言いながらもオズワルド様は優しかった。
多分、びしょ濡れだから、私まで濡れることに気を使ってくれたんだと思う。

部屋のお風呂はまだ湯気が立ち上ぼり温かった。

「一人で入れるかしら?」
「…っ、お母さ…んと…一緒…っ、」

泣きながらも一生懸命話してくれた。
どうやら、いつもお母様と入浴をしていたらしい。

「では、私と入りましょうか? 」
「ダメだ!」

頷く子供の後ろでオズワルド様は止めた。

「子供とはいえ男だ。ダメに決まっている!」
「何を言っているんですか?子供ですよ。」
「…将来大きくなった時にリディアとの入浴を思い出したらどうする?裸だぞ。」
「何を考えているんですか。バカな事を言わないで下さい。」

一体何を考えているのか。

「とにかくダメなものはダメだ。」
「じゃあ、オズワルド様が一緒に入って下さい。びしょ濡れ同士で丁度いいじゃないですか。」

オズワルド様に子供を差し出すと、一別した後、しょうがないな、と一緒に入ってくれた。

子供はオズワルド様の迫力にまたぐしゅぐしゅと泣きそうだった。

「おい、いくら子供でも男が泣くな。」
「オズワルド様、まだ小さいですから…」
「言っていることは通じてるはずだ。」

そう言いながらも、オズワルド様は面倒見がいい。
子供の頭を洗い、バスタブに一緒に浸かってくれていた。

その頃にはもう泣き声はなかった。

バスルームの前で待っているとリンクスが子供に夜食をワゴンにのせ持って来た。
温かいスープに野菜が入っており、パンにチーズも持ってきてくれたのだ。

「寝床はどうしますか?俺の部屋で寝かせましょうか?それとも別の部屋に?」
「何だか淋しそうなので、私が一緒に寝ますよ。」

そうリンクスと話していると、バスルームのオズワルド様と子供の会話が聞こえた。

「おい、女と風呂に入るなんてまだ10年は早いぞ。楽しめるようになってから一緒に入るんだ。それに泣き虫はダメだ。弱虫だと将来女に騙されるぞ。いいか、ベッドでは…」

恐ろしい会話が聞こえた。
子供に何を教えているんですか!?

「リンクス、オズワルド様は何を言っているのでしょう。」
「…ベッドマナーでしょうか…」

変態か!

「今夜はオズワルド様のベッドで子供を寝かせます!」
「畏まりました。」

リンクスは、あの方は…と呆れるように下がった。




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