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第一章 ブラッドフォード編

うちに魔女の鍋はない!

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朝の支度に来たマリオンに、急いで支度をしてもらった。

どうしました?とマリオンが聞くが言えない。

夕べのこともそうだが、ファーストキスでこんなにワタワタと心乱されているとは恥ずかし過ぎて言えない。

しかし、あのオズワルド様の色気は何!?
私より絶対色気がある!

さっさとコーヒーでも飲んで落ち着こう!

「マリオン!」
「はい、」
「オズワルド様が万が一来たら、先に行ったと言ってね!」
「一緒に行かないのですか?」
「大丈夫!」

ドアを頭一つ分開け、廊下を左右にキョロキョロと見るが誰もいない。
オズワルド様もいない。
アレク様達の姿もない。
本当は廊下を走るなんていけないけど、今なら誰もいない。
よし!今がチャンス!
そう思い、足早に食堂へと降りた。

食堂に行くとまだ、アレク様達は来てない。
昨日、急遽レオン様が帰った為、スクエアのテーブルから、一回り小さいラウンドテーブルになっていた。
スクエアのテーブルより小さいとはいっても、まあまあの大きさだが。

リンクスによると、一人減った為こっちのテーブルの方が話しやすいのではとのことだった。

リンクス、気が効きすぎです。

そして、アレク様とヒース様がやってきて席に座った。
最後にオズワルド様がやってきて、どうして先に行くんだ?と聞きながら、キスをしようとしてきた。

「オ、オズワルド様待って下さい!アレク様達がいますからっ!」

昨日、ファーストキスをして翌日にいきなり人前でする度胸はないんですよ!
だから先にきてオズワルド様から離れた席をとろうとしたのに!

私に抵抗され、唇にはしないが頬にチュッと、キスをするとオズワルド様は何なんだ、という表情で席に座った。
当たり前のようにオズワルド様の隣が私の席になった。

オズワルド様の隣に座り、朝食を食べているが、視線が痛い!
コーヒーを飲みながら、チラッとオズワルド様を見ると、肘をついてこっちを見ている!
無表情なのか表情が読み取れない。
その顔で見つめないで欲しい!
目の前を見て下さい!
アレク様もヒース様もいますよ!

「リンクス。」
「はい、どうされました。」
「オズワルド様がまだ寝惚けてらっしゃるので、魔女の鍋でグツグツに煮込んだ熱くて苦いコーヒーを差し上げて下さい。」
「…魔女…コーヒーですか…」

リンクスはぎょっとしていた。

「おい!うちに魔女の鍋はない!」

オズワルド様がこいつは何を考えとるんだ!というような表情で言った。

すると、アレク様は吹き出したように笑い出した。

「何だかリディアは大人しいイメージだったが少し違ったみたいだな。」

私の穏やかなイメージが壊れそうです。

「リディア、朝から機嫌が悪いのか?夕べのことを怒っているのか?」
「…怒ってはいませんけど、そうやってくるから、どうしていいのか…」

アレク様達もいるのに恥ずかしい!
テーブルの下に潜りたい!
超逃げたい!
でも、ここで逃げたら、アレク様達にオズワルド様と仲が悪いと思われるのは嫌だわ。
ていうか、困る。

「困らせたりはしないぞ。だが、普通のコーヒーにしてくれ。あと、逃げるなよ。」

見透かされているのか、心を読むな!と言いたい。

リンクスがオズワルド様に普通のコーヒーを出して私がチラッと見ると、後で二人で図書館に行こうと言ってくれた。
私もコーヒーを音もなく飲みながら、はい、と少しだけ小さな声で返事した。

その様子を見ていたアレク様が、来月の宮中の夜会に二人で来い、と誘ってくれた。

そして、1ヶ月後にオズワルド様と宮中の夜会に行くことになった。


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