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第一章 ブラッドフォード編

壁の花

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婚約者の誕生日。
パーティーが開かれる為に勿論私も出席する。

私は、リディア・ウォード侯爵令嬢19歳だ。
婚約者のレオンハルト・グラディオ様はこの国の第2王子だ。

婚約者のパーティーだというから、頑張って化粧を整え、真っ赤な髪を綺麗にセットし、美しい水色のドレスでやって来た。

しかし、婚約者がきたはずなのに、レオン様は迎えに来ない。

エスコートは!?
エスコートはなしですか!?
一人で行けってことですか!?

まあ、今日はレオン様が主役ですからね!

落ち着け私。
婚約者としておしとやかに優雅にいなくては。

誰にも気付かれないように小さく息を整え、一人会場へと入るとレオン様は沢山の方々に囲まれていた。

9割?いえ、8割ぐらいにしましょうか。
囲んでいる令嬢の比率が高いのでは?
しかも、腕に絡み付いている令嬢もいますね。

彼女は、ノートン男爵の令嬢のアリシアですね。
最近仲が良いとは思っていましたが。
レオン様は嫌がる素振りも見せませんね。

あの中に私も入らないと行けないのかしら。
なんだか、レオン様と愉快な仲間達に見えるわ。
レオン様と楽しそうな集団を立ち止まり見ていると、アリシアとバチッと目があった。

アリシアはレオン様の耳元に可愛いらしく顔を近付け、何か話していた。

なんでしょうか。
あのレオン様のデレている顔は。
はぁー、だるくて体調が悪いのに来るのではなかったかしら。
何だか、私の頑張りが踏みにじられた気がしますね。

「リディア!来たなら挨拶ぐらいしなさい。」

そのつもりで向かってましたが!
その愉快な仲間達に少し圧倒されましたが!

「はい、失礼します。」

レオン様に呼ばれ、嫌な表情にならないように、いつものおしとやかな微笑みで行くが、アリシアは離れない。
いや、レオン様も離す素振りもない。

「20歳の誕生日おめでとうございます。」

取り乱さず優雅にレオン様に挨拶をした。

「何故、すぐに来ない。」
「すみません、向かっていたのですが、レオン様が先に気付いてしまいましたね。」

レオン様に礼をし、周りの方々にも礼をした。
周りの方々は、私が半年前にレオン様と婚約をしてから近づいてきた方々なのだろう。
元々お茶会で顔を合わすだけだった。
そして、お友達になったと思ったがそうではなかった。
今ではレオン様の取り巻きだ。
レオン様も私が体調を悪くしてから、私抜きで皆様とお茶会をしている。

「レオン様、そろそろ約束のダンスですわよ。」

甘い猫なで声で、アリシアがレオン様に言った。

「そうだな。約束は守らなければな。」

いつ約束をしたがわからないが、私のいない所でアリシアと二人で会い、そしてきっと、ダンスの約束をしたのだろう。

はぁ、何でデレッとした婚約者が他の方とダンスをしているのを微笑んで見ているのか。
本当なら、私とするべきなのではないでしょうか。
自分が、惨めになってきた。

周りの方々は、まあ、とか言って微笑ましく見ているし。
私に近づいてきたのも、私に取り入る為ではなくレオン様に取り入る為だったのでしょうけど。

こんなことなら、来ないで部屋でゴロゴロして本でも読んでいた方が良かったわ。

そう思いながら、私はそのレオン様の愉快な仲間達から一歩一歩下がり、クルッと回り壁の花になる為に歩き出した。



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