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旦那様はお怒りです 1
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ウォルト様に手を引かれてセルシスフィート伯爵邸に帰れば、アリス様が憤慨して待っていた。
「ウォルト。どこに行っていたの?」
「ティアナを迎えに行っていた」
「勝手に夜会を飛び出していった人よ。夜会での評判も最悪だし、早く別れた方がいいわよ。本当に迷惑な人だわ」
「夜会の噂を知っているのか?」
「知っているわ。貴族の務めも果たさない誰かさんと違って、私は貴族としての社交もちゃんとしているもの」
夜会にしっかりと参加する私と違ってアリス様は、幾度となく夜会へと行っている。
「だいたい、ウォルトの気を引くために飛び出したのではなくて? あなたのせいで、私も急いで帰って来たのよ!」
「アリス様も、夜会に行ってましたか……」
「当たり前でしょ! セルシスフィート伯爵家が参加しないなど、ありえないわ!」
むしろ、離縁を考えて飛び出していった。夜会に参加すらしない私は、そんな噂自体を知らなかったのだ。
「ウォルト様。おかえりなさいませ」
ウォルト様の帰宅に、玄関に迎えに出ていたトラビスがツンと腕を組んで不貞腐れているアリス様の隣で言うと、ウォルト様が冷ややかな様子で睨みつける。
「……ちょうどいいから言っておくが、父上がお前たちにどう伝えていたか知らんが、ティアナとの離縁はない。何をしてもだ。セルシスフィート伯爵の妻は、ティアナただ一人だ。父上のように妾も取らない」
「ウソでしょ……それじゃあ、私はどうなるの!? ウォルトと結婚するためにここにいるのよ!!」
「俺が約束したことではない。お前が父上と勝手に決めたのだ。ティアナまで巻き込んで……」
「信じられない……」
アリス様が、小さな子供のようにトラビスに泣きついた。
「ウォルト様。これではあんまりです……アリス様は、ずっとお待ちしていたのです。セルシスフィート伯爵家の縁の者を蔑ろにするなど……」
「待っていたのは、アリスだけではない。ティアナもだ。だが、お前はティアナも気にしていたのか?」
「もちろんです。ティアナ様はルドルフの管轄ですが……」
私が、ウォルト様が帰ってくることを待ってたのは間違いないけど、アリス様とは理由が違う。いつかは離縁するつもりでいたのだ。
でも、昨夜の夜会までは、同情したかもしれないけど、今のアリス様には同情すらできないでいた。
「なら、なぜティアナには迎えの言葉がない。俺は、ティアナと一緒に帰って来たのだぞ」
「……っ!!」
「言われるまで気付かなったのだろう?」
泣きついているアリス様の肩に手を置いたままで、トラビスが目を反らした。ウォルト様の言う通り、トラビスは、私には『おかえりなさい』と言わないのだ。
トラビスは、図星を刺されて赤らんだ顔で歯を食いしばっている。
「少々お前の見方を変える。よく考えろ。それと、俺たちが乗って来た御者が外で待っている。彼に食事を用意してやれ。彼はティアナ付きの御者として、セルシスフィート伯爵家で雇う。名前は、ハルクだ。わかったらすぐに動け」
「……っ畏まりました」
頭を下げるトラビスに、アリス様が青ざめ驚愕してウォルト様を見る。ウォルト様もその様子に気付いているのに、何もアリス様に向かないでいた。
「ティアナ。行こう。二人でいたい」
優しくウォルト様が私を守るように抱き寄せて歩き出した。
これでいいのだろうか。
お義父様は、私を隠したがっていたけど、ウォルト様は私の存在を公にしようとしている。
一抹の迷いが頭を掠り、ウォルト様に手を握られて後ろを振り向くと、アリス様とトラビスが憎しみを込めた様子で睨んでおり、思わず背筋がゾッとした。
「ウォルト。どこに行っていたの?」
「ティアナを迎えに行っていた」
「勝手に夜会を飛び出していった人よ。夜会での評判も最悪だし、早く別れた方がいいわよ。本当に迷惑な人だわ」
「夜会の噂を知っているのか?」
「知っているわ。貴族の務めも果たさない誰かさんと違って、私は貴族としての社交もちゃんとしているもの」
夜会にしっかりと参加する私と違ってアリス様は、幾度となく夜会へと行っている。
「だいたい、ウォルトの気を引くために飛び出したのではなくて? あなたのせいで、私も急いで帰って来たのよ!」
「アリス様も、夜会に行ってましたか……」
「当たり前でしょ! セルシスフィート伯爵家が参加しないなど、ありえないわ!」
むしろ、離縁を考えて飛び出していった。夜会に参加すらしない私は、そんな噂自体を知らなかったのだ。
「ウォルト様。おかえりなさいませ」
ウォルト様の帰宅に、玄関に迎えに出ていたトラビスがツンと腕を組んで不貞腐れているアリス様の隣で言うと、ウォルト様が冷ややかな様子で睨みつける。
「……ちょうどいいから言っておくが、父上がお前たちにどう伝えていたか知らんが、ティアナとの離縁はない。何をしてもだ。セルシスフィート伯爵の妻は、ティアナただ一人だ。父上のように妾も取らない」
「ウソでしょ……それじゃあ、私はどうなるの!? ウォルトと結婚するためにここにいるのよ!!」
「俺が約束したことではない。お前が父上と勝手に決めたのだ。ティアナまで巻き込んで……」
「信じられない……」
アリス様が、小さな子供のようにトラビスに泣きついた。
「ウォルト様。これではあんまりです……アリス様は、ずっとお待ちしていたのです。セルシスフィート伯爵家の縁の者を蔑ろにするなど……」
「待っていたのは、アリスだけではない。ティアナもだ。だが、お前はティアナも気にしていたのか?」
「もちろんです。ティアナ様はルドルフの管轄ですが……」
私が、ウォルト様が帰ってくることを待ってたのは間違いないけど、アリス様とは理由が違う。いつかは離縁するつもりでいたのだ。
でも、昨夜の夜会までは、同情したかもしれないけど、今のアリス様には同情すらできないでいた。
「なら、なぜティアナには迎えの言葉がない。俺は、ティアナと一緒に帰って来たのだぞ」
「……っ!!」
「言われるまで気付かなったのだろう?」
泣きついているアリス様の肩に手を置いたままで、トラビスが目を反らした。ウォルト様の言う通り、トラビスは、私には『おかえりなさい』と言わないのだ。
トラビスは、図星を刺されて赤らんだ顔で歯を食いしばっている。
「少々お前の見方を変える。よく考えろ。それと、俺たちが乗って来た御者が外で待っている。彼に食事を用意してやれ。彼はティアナ付きの御者として、セルシスフィート伯爵家で雇う。名前は、ハルクだ。わかったらすぐに動け」
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これでいいのだろうか。
お義父様は、私を隠したがっていたけど、ウォルト様は私の存在を公にしようとしている。
一抹の迷いが頭を掠り、ウォルト様に手を握られて後ろを振り向くと、アリス様とトラビスが憎しみを込めた様子で睨んでおり、思わず背筋がゾッとした。
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