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おかしな夫婦生活 5

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ティアナを部屋に送っていき部屋に戻れば、アリスが部屋の扉にもたれて待っていた。

「ウォルト。どうして、あの娘を追い出さないの?」
「追い出す理由がない」
「部屋にも、入れてくれないし……」
「当たり前だ」
「でも、恋人だったのは私よ」
「それは、父上が決めたことだ。それに、とうに別れている」

愛人に夢中になっていた父上が、アリスとの結婚を求めていた。セルシスフィート伯爵家の縁者だから、結婚相手としては誰も反対することなどない縁組だった。

それでも、アリスとの結婚生活が想像すらできなくて、仕事を理由にセルシスフィート伯爵邸を離れて一人王都へと行った。

その間に、父上が考え直してくれればいいと思ってのことだった。

母上はあの通り自分に似ているから、癒されることがなかったのだろう。それは、わかる。
自分も、穏やかな雰囲気を持つティアナに惹かれていたのだから……。

そのティアナに、父上たちと離れるために王都にいた時に出会ってしまった。
しかも、すでに、隣国へと出発する直前に。

「とにかく部屋へ帰れ。結婚したいなら、アリスの気に入りそうな縁談を探す」
「ウォルトがいいのよ」
「俺は、今からティアナのところへ行く。邪魔すると、邸から追い出すぞ」

ぎらりと睨むと、アリスがたじろいで自室へと逃げていった。

ため息交じりで部屋に入れば、従者代わりもしてくれているルドルフが寝支度をしていた。
ルドルフは、セルシスフィート伯爵領の人間ではない。元は、王都に住んでいた邸の執事として王都で雇った者だった。それを、ティアナの執事にするために王都から連れて来たのだった。

「ルドルフ。ティアナはどうした?」
「部屋でお待ちだと思いますけど……」

部屋で待ってくれればいい。

でも、ティアナは俺がアリスといてもまったく気にしてない気がする。腹立たしいと思いながら、タキシードの上着をルドルフに渡していた。

アルフェス殿下に頼んだ結婚を、勝手に父上が決めた契約結婚にしてしまったティアナに怒りがあった。それなのに、急いで帰って来てティアナに再会して、独占欲を自覚してしまっている。

言いようのない歪んだ感情が内にあるのに、それを吐きだせるのはティアナを抱いている時だけだった。
シャツを脱げば、ルドルフが受け取る。

「では、湯浴みの準備も出来ていますので、今夜はこれで失礼します」
「ああ、助かる。それと……ルドルフは、ティアナの味方でいてくれ」
「……気を付けてはいますけど……出来れば、仕える方は自分で決めたいものです」
「ティアナでは、不満か?」
「不満はありませんけど……ティアナ様は何も言いませんので。ご自分で、頼んで欲しいものです。まだ、セルシスフィート伯爵家に骨を埋める覚悟も見えませんし」
「それは、父上と俺のせいだ」

最後の言葉は聞こえなかったのか、ルドルフが「では」と言って、部屋を後にした。



晩餐のあとに部屋に戻り、湯浴みを終わらせて髪を窓際に座り拭いていた。

窓の外に目をやれば、庭もよく見える。明るければ、もっと見えるはずだった。
ウォルト様のことを考えると、憂鬱になる。

アリス様を突き放す気もないし、アリス様はウォルト様が好きなのだから、引き取ってくださいとお願いすれば、続き部屋にいるのだから、引き取ってくれるのではないでしょうか。

仲睦まじいかどうかはわからないけど、仲良し(?)の二人の邪魔はいたしません。

そう思っていると、庭にカンテラの灯りが動いていた。
こんな時間に怪しいと思い凝視すると、フードを被った人が邸に振り向いた。カンテラの灯りでフードの中の顔が見える。

「アリス様……!?」

あの方はいったい何をやっているのでしょうか!!
今夜はウォルト様が続き部屋にいるのだから、チャンスではないですか!!
こんな夜にまで、遊びに行くなんて困りますよ!!

ウォルト様が不在の頃から、幾度も幾度も遊びに行っているのを見た。2、3人のメイドを連れ立って遊びに行くために、夜な夜な邸を出て行っているのを見たこともある。

でも、今夜はいてください。ウォルト様とゆっくりと話せる夜ですよ!!

とにかく、連れ戻さなければと、慌ててお出かけ用のフード付きマントを羽織って私も邸を飛び出した。




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