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警護はいりません

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リュード様の迫力に負けてか、もしくは切羽詰まった様子だから、リュード様が気にならないのかわからないけど、フレッド様はいきなり迫ろうとしてきた。
それをリュード様は私を後ろに隠す。

「アシュリー!   すぐに結婚しよう!   アニエスは妾にするから!」
「はぁ!?    ついこないだ婚約破棄したばかりですよ!?   何をバカなことを言っているのですか!」

屋敷の庭で叫んでいたかと思えば、急に何を言い出すのか。

「フレッド様、ご近所迷惑ですから、叫ばずにお帰りください!」
「ダ、ダメだ!   アシュリーと結婚するまでは帰らない!」
「結婚はしません!」

きっぱりと断る。リュード様は何故か怒っている。

「さっさと帰れ。アシュリーは俺と婚約した。貴様との結婚は認めん!」
「そ、そんなわけは!   アシュリーは俺が好きだろ!   12歳で婚約してから、二人で仲良くやっていたじゃないか!?」
「昔のことです。今はなんとも思っていません」

確かに、婚約したばかりの頃は、将来この方と結婚するんだと、ときめいたことはあったかもしれないが、それはまだ若かったからだ。
今はなんとも思ってない。

ツンと横を向くと、リュード様がかがみ横からキスをしてくる。
不機嫌ながらも、フレッド様に見せつけるようだった。

「アシュリー、先に屋敷に入っていろ」
「……大丈夫ですよ?」
「こいつを追い出すまで、屋敷から出るな」
「なっ!?   こいつとは何だ!   俺は時期伯爵だぞ!」

叫ぶフレッド様を無視して、リュード様は私を玄関の中に入れた。
フレッド様なんか魔法で追い返せるから、気にしなくていいのに、リュード様は自分で追い返そうとしてくれている。

玄関の扉を閉められ、見えないからピタリと扉に耳を当てる。

「アシュリーは渡さないぞ!」

フレッド様がそう叫ぶ。
渡さないぞって……フレッド様が堂々と捨てましたがね。

「アシュリーには近づかないでもらおう」
「ギャァーーーー!!」

いきなりのフレッド様の叫び声。
リュード様は一体何をしているのかしらね。
そして、玄関扉が急に開いた。

「アシュリー、もう大丈夫だ」
「フレッド様は?」
「逃げ足は速かったぞ」

確かにフレッド様の姿はもうない。
何をしたのかはわからないが、剣は腰に納まっている。

「アシュリー、屋敷からは出るなよ。あとで人を寄越す」
「だから、大丈夫ですって……」
「ダメだ!」

引く気がないリュード様に負けてしまう。
意外と心配性なのだろうか?
不機嫌なのか心配性なのかわからない様子でリュード様は仕事に行ってしまわれた。

しかし、何故今さらフレッド様は結婚しようなどと言うのかしら?
アニエスご令嬢と別れるつもりはないから妾にすると言ったのだろうし……。
慰謝料はアレックスに頼んだけど、茶葉専門店はかなりの売り上げだから、お金には困らないだろうし。

おかしいわね……と悩んでいた。
しかし、昼前には掃除に来ていたデイジーがまた走って部屋にやって来た。

「お嬢様ーー!!」
「デイジー……走ってはダメよ。落ち着きなさい」
「大変なんです!   若いイケメンです!   また素敵な方々が来ました!」

一体誰が!?

来客に思い当たる人物がなく、デイジーと玄関に行くと、そこには騎士二人が立っていた。
しかも、リュード様と同じ緑のマントだ。
まさか、と思う。

唖然と立ちすくんでしまうと、騎士の二人が名乗り始めた。

「アシュリー・バレンティア様ですね」
「そうですが、何かご用でしょうか?」
「リュード様からのご命令で参りました。俺はリチャードと申します」
「俺はユリシーズと申します。どうぞ、お名前でお呼びください」

若い二人の騎士が一礼し、挨拶をしてくる。
後ろのデイジーはイケメンに弱くみとれている。

「何のご用ですか……?」
「アシュリー様の警護に参りました。リュード様がお越しになるまで毎日警護に参ります」
「う、受け取り拒否で……!」

私の何を警護しますか!?
いらないのだけど!

「郵便物ではありません」
「で、ではお帰りで!」
「リュード様から正式に仕事を賜っていますので」

リュード様は一体何を考えているのでしょうかね!
私は、騎士に警護されるような重要人物ではないのですけど!

「「本日からよろしくお願いいたします」」

二人が騎士らしく挨拶をすると、デイジーのテンションは上がった。
騎士は女性に人気だから、デイジーも憧れがあるようだった。

「お嬢様!   やりましたね!」
「なにが!?」
「リュード様に愛されていますよ!」
「全く違うわ!」

だって私たちは婚約破棄された者同士、困っているから結婚するだけのはず!

とにかく、この二人をどうやって追い返すか!?
リュード様のいる騎士団に行くべきかしら!?
しかし、今日は本部に行くと行っていた。
きっと大事な話で呼ばれたはずだわ!

頭を抱えていると、また頭痛の種になりそうな人がやって来た。

「アシュリーーー!」

朝追い返されたフレッド様が、また血相を変えて来たのだ。

「あれか?」
「おそらく、あれのせいだろう」

二人はフレッド様を見て、そう顔を見合わせた。

「アシュリーー!    悪かった!   すぐに結婚するから!」
「結婚はしません!   お帰りください!」

鬼気迫るフレッド様に氷の魔法を放った。騎士二人が剣を抜くよりも早く。

「ギャァーー!」

小さな氷柱のようなものに追われながらフレッド様は、逃げて行く。
リュード様の言った通りフレッド様の逃げ足は速かった。




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