竜槍陛下は魔眼令嬢を溺愛して離さない

屋月 トム伽

文字の大きさ
上 下
3 / 47

縋る光は儚くて

しおりを挟む

__数日後。

すぐに出ていけと言っていたのに、私は未だにバロウ邸で監禁されていた。

それでも、明日には田舎の山小屋へと引っ越すことになっていた。少しホッとした。これで、この家から出られる。お父様たちの折檻が終わるのだ。

「ここを開けろ! 何をなさっているのかわかっているのか!!」
「我が家のことだ! いくら将軍といえども口を挟まないで頂きたい!」
「……っ! どこまでミュリエルに不当な扱いをすれば気が済むのだ! 傷ついた娘を屋根裏部屋に監禁するなどっ……」

部屋の外から言い合っている声が聞こえた。声の主は、同じ遺物持ちのチェスター・レーバセルス将軍だ。彼は40歳を超えるアルドウィン王国の将軍様だ。屈強な体躯に、レーバセルス伯爵家の当主であり、チェスター様はレーバテインと言う剣の遺物を身体に宿している。

「バロウ伯爵。そこまでにしていただこう。チェスター。バロウ伯爵を押さえろ」

部屋の前に一つの足音が聞こえると、「ミュリエル。少し離れていて」と優しい声で言われた。久しぶりに聞いた声はいつも通りの優しいルイス様の声だった。

そして、ルイス様の光魔法で、扉が音を立てて壊れた。

「ルイス様……」
「ミュリエル。一緒に行こう。君を城で保護する」
「私……でも、行けません……明日には、ここを離れて山小屋で一人住むことになっています」
「……っ!」

ルイス様が、心痛な表情で私の前に屈んだ。チェスター様も哀れんだように見ていた。

「父上には、話はつけている。頼む。一緒に来てくれ……」
「……」

素直に頷けなくて、そっと目を反らした。

「……頬を殴られたか……ミュリエル。ここには置いておけない」

ルイス様との関係がバレてから、毎日毎日お父様と兄上に折檻を受けた。
母親はすでに他界している。でも、お母様も私を疎んでいた。

私が『魔眼』を持って生まれたせいで、何度も責められた。大事に育てていた兄上が当主となれないからだ。時には、それをお父様に責められて、それを私にそのままぶつけていた。

ルイス様が頬をそっと撫でる。チェスター様がお父様たちを睨みつけると、気まずそうにお父様たちが目を反らした。

「ミュリエルになんて真似を……」

チェスター様が怒りを込めて言う。

「わからせるためだ……娘に何をしようが、あなた方には関係ない。それに、ルイス様。ミュリエルに関わったら、陛下が何と仰るか……っ、我が家のこともそうです。ミュリエルのせいで、あらぬ濡れ衣をかけられて……王家転覆を図っていると疑われているのですぞ!」
「……少し黙っていてくれるか。父上に話はつけていると、ミュリエルに言ったはずだ。君とは話したくない」

ルイス様が侮蔑を込めた瞳でお父様を睨みつけた。

「ミュリエル。さぁ、行こう。ルキア。お前もいるんだろう。一緒に行こう」

ルイス様がルキアと呼ぶと、ベッドの隅から手のひらサイズのスライムがひょこっと出てきた。私の使い魔だった。『魔眼』の力で大人しくさせたスライムだけど、今は私に懐いているおかげで、使い魔にしていた。

ルキアが私の肩に乗る。そうしてルイス様に支えられて部屋を出ると、お父様たちは侮蔑を込めた表情で私を睨みつけた。その前をルイス様に支えられて、チェスター様の威圧感の中で通り過ぎてバロウ邸を去った。







しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

思い出してしまったのです

月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。 妹のルルだけが特別なのはどうして? 婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの? でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。 愛されないのは当然です。 だって私は…。

【完結】召喚された2人〜大聖女様はどっち?

咲雪
恋愛
日本の大学生、神代清良(かみしろきよら)は異世界に召喚された。同時に後輩と思われる黒髪黒目の美少女の高校生津島花恋(つしまかれん)も召喚された。花恋が大聖女として扱われた。放置された清良を見放せなかった聖騎士クリスフォード・ランディックは、清良を保護することにした。 ※番外編(後日談)含め、全23話完結、予約投稿済みです。 ※ヒロインとヒーローは純然たる善人ではないです。 ※騎士の上位が聖騎士という設定です。 ※下品かも知れません。 ※甘々(当社比) ※ご都合展開あり。

断罪されてムカついたので、その場の勢いで騎士様にプロポーズかましたら、逃げれんようなった…

甘寧
恋愛
主人公リーゼは、婚約者であるロドルフ殿下に婚約破棄を告げられた。その傍らには、アリアナと言う子爵令嬢が勝ち誇った様にほくそ笑んでいた。 身に覚えのない罪を着せられ断罪され、頭に来たリーゼはロドルフの叔父にあたる騎士団長のウィルフレッドとその場の勢いだけで婚約してしまう。 だが、それはウィルフレッドもその場の勢いだと分かってのこと。すぐにでも婚約は撤回するつもりでいたのに、ウィルフレッドはそれを許してくれなくて…!? 利用した人物は、ドSで自分勝手で最低な団長様だったと後悔するリーゼだったが、傍から見れば過保護で執着心の強い団長様と言う印象。 周りは生暖かい目で二人を応援しているが、どうにも面白くないと思う者もいて…

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

【完結】「異世界に召喚されたら聖女を名乗る女に冤罪をかけられ森に捨てられました。特殊スキルで育てたリンゴを食べて生き抜きます」

まほりろ
恋愛
※小説家になろう「異世界転生ジャンル」日間ランキング9位!2022/09/05 仕事からの帰り道、近所に住むセレブ女子大生と一緒に異世界に召喚された。 私たちを呼び出したのは中世ヨーロッパ風の世界に住むイケメン王子。 王子は美人女子大生に夢中になり彼女を本物の聖女と認定した。 冴えない見た目の私は、故郷で女子大生を脅迫していた冤罪をかけられ追放されてしまう。 本物の聖女は私だったのに……。この国が困ったことになっても助けてあげないんだから。 「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します。 ※小説家になろう先行投稿。カクヨム、エブリスタにも投稿予定。 ※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。

【完】夫に売られて、売られた先の旦那様に溺愛されています。

112
恋愛
夫に売られた。他所に女を作り、売人から受け取った銀貨の入った小袋を懐に入れて、出ていった。呆気ない別れだった。  ローズ・クローは、元々公爵令嬢だった。夫、だった人物は男爵の三男。到底釣合うはずがなく、手に手を取って家を出た。いわゆる駆け落ち婚だった。  ローズは夫を信じ切っていた。金が尽き、宝石を差し出しても、夫は自分を愛していると信じて疑わなかった。 ※完結しました。ありがとうございました。

【完結】私、四女なんですけど…?〜四女ってもう少しお気楽だと思ったのに〜

まりぃべる
恋愛
ルジェナ=カフリークは、上に三人の姉と、弟がいる十六歳の女の子。 ルジェナが小さな頃は、三人の姉に囲まれて好きな事を好きな時に好きなだけ学んでいた。 父ヘルベルト伯爵も母アレンカ伯爵夫人も、そんな好奇心旺盛なルジェナに甘く好きな事を好きなようにさせ、良く言えば自主性を尊重させていた。 それが、成長し、上の姉達が思わぬ結婚などで家から出て行くと、ルジェナはだんだんとこの家の行く末が心配となってくる。 両親は、貴族ではあるが貴族らしくなく領地で育てているブドウの事しか考えていないように見える為、ルジェナはこのカフリーク家の未来をどうにかしなければ、と思い立ち年頃の男女の交流会に出席する事を決める。 そして、そこで皆のルジェナを想う気持ちも相まって、無事に幸せを見つける。 そんなお話。 ☆まりぃべるの世界観です。現実とは似ていても違う世界です。 ☆現実世界と似たような名前、土地などありますが現実世界とは関係ありません。 ☆現実世界でも使うような単語や言葉を使っていますが、現実世界とは違う場合もあります。 楽しんでいただけると幸いです。

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

波間柏
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

処理中です...