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また明日
しおりを挟む「お礼はとりあえずいいです。今のところ思いつかないので。」
「では、いつでも言ってくれ。」
そうは言われても今のところ困り事はない。
「頼みを聞いてくれて助かる。…もし良ければ、明日食事でもどうだろうか。何も礼がないのは申し訳ない。」
意外と律儀なのか、礼はしたいらしい。
「では、ご一緒致します。」
「本当か?明日仕事が終われば迎えに来るぞ。」
「はい、お待ちしますね。」
私が誘いを断らずクロード様はほっとした様子だった。
「君をラケルと呼んでもいいだろうか?」
「彼女のフリですからね。勿論良いですよ。」
「では、ラケル。明日、仕事が終われば迎えに来る。」
そして、クロード様を門のところまで見送りに行くと、お父様が走って邸から出てきた。
私達が平屋から出て庭を歩いているのを見たのだろう。
「クロード様、お帰りですか!」
「急に訪ねて、申し訳ありませんでした。」
クロード様は丁寧だった。
「ラケルに何のご用でしたか?」
彼女のフリをして欲しいとは言えないんじゃないかな。
そう思うと、やはりクロード様は彼女のフリは言わなかった。
「ラケルを食事に誘いに来ました。」
「ラケルを食事に?」
「はい、明日お迎えに参ります。」
さっきの私への態度と違い、クロード様は堂々としていた。
「…どこで、ラケルとお知り合いに?」
まさか、花屋の店番とは言いにくい。
どうしようか、と悩むとクロード様が言った。
「無粋なことは聞かないで頂きたい。」
「し、失礼しました。」
クロード様が、質問を封じてくれたおかげでそれ以上追及はなかった。
「ではラケル。明日また来ます。」
「はい、よろしくお願いします。」
彼女のフリの始まりですね。
そう心の中で言った。
いつの間にか、お父様もクロード様に挨拶が済んでおり、クロード様は帰るところだった。
クロード様が帰ったら、色々追求されそうだが、どうしようかと言い訳を考えていると、クロード様は私の考えを察したようだった。
クロード様は帰る時振り向き、お父様に釘を刺してくれた。
「伯爵、ラケルにも無粋なことは聞かないで頂きたい。」
「はい!」
お父様はまた恐縮していた。
まぁ、公爵家の方のご機嫌は損ねたくないのだろう。
彼女のフリを頼んだ時と違い、クロード様は意外と威厳はあった。
そして、お父様は私に何も聞けなかった。
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