高校からの帰り道、錬金術が使えるようになりました。

マーチ・メイ

文字の大きさ
上 下
104 / 113
第四章 それぞれの生活

104話目 メルディス

しおりを挟む



メー爺からメモ帳とペンを貰い個数を書いていく。
植物系のダンジョンと聞いていたけど出てくる魔物は植物系は少ない。
森に生息するやつらが出てくるようなそんな感じだ。

「材料は結構揃ったね。 回復薬には使えないけど。 これで何が出来るかルヴァルダン君に聞いてみようかな」

そんな事をしている間にミーリアと父が迎えに来た。


そのまま応接室に行くと初老の男性がソファーに腰かけていた。 背筋はきちんと伸びてロマンスグレーの髪はきちんと整えられている。 今まで見た魔族の人たちのどれよりも凄みがあって貫禄がある。

「メルディス連れてきたぞ」

父が軽く話しかけてぎょっとする。

「メルメル腰は大丈夫カ? 寝たきり辛くなかったカ?」

ミーリアが腰の心配している。 二人とメルディスさんの温度差が酷い。

二人から話しかけられたメルディスさんはスッと立ち上がると私たちの目の前まで歩いてきた。

目の前に影が出来見上げる。
私の身長が160弱だからメルディスさん2m近くあるんじゃないか!?
おっきい!!

「君が優介の娘か」

「は、はい」

少し背をかがむようにして観察される。
しばらくすると目じりにしわが寄った。

「こんな小さいのに協力してくれてありがとう、ミーリアもよく頑張りましたね」

頭に重さを感じ、視線を上へずらすとメルディスさんの手が頭の上に乗っていた。

ひとしきり満足したのかメルディスさんが私達をソファーへと案内してくれた。
ソファーに腰を下ろすのと同時にドアが開きメイドさん達がお茶を煎れてくれた。

人居たんだ!?

思わずメイドさんの動きを目で追うとその様子に気づいたメルディスさんがクッと笑みをこぼした。

「優介がまさかそこまで過保護とはな」

「ほっとけ」

話を聞くと眠りについているのは師団長と魔王のみで他の魔族の人たちは普通に働いているそうだ。
眠りについている人たちの世話係以外はお城には居ないとはいえ少ない人数ではあるがお城に入る。
どうやって清潔に保たれていると思ったが私との接触しないように父が計らっていたそうだ。

「そんなやり方だと嫌われますよ」

「う……」

メルディスさんは笑顔でそう述べた。

それからはメルディスさんが眠っている間の出来事とこれからのことをすり合わせが行われた。
ミーリアサイドと父サイド。
影響を受けたこっちの世界の情報は私から話をした。

メルディスさんは頷きながら話を聞いていた。




一通り話を終えるとメルディスさんが私の方を向きながら

「それで優奈さんは何か望みはありますか?」

そう問いかけた。

「え?」

「今現状元の場所に返すことは得策ではありませんが様子を気づかれないように見る事くらいはできますよ」

「見れるんですか?!」

「声は届けられませんがね」

穏やかな表情で話しかけられる。

「メルディス!!」

「優介、あなただって気になっているはずですよね。 無事を確認するぐらい良いでしょう」

父は口を開けたり閉じたりして何かを言おうとしたがメルディスさんが言う通りに気になっていたのも事実だったようで口を閉じうなだれるように頷いた。

「まだ本調子ではありませんので数分だけですが……いきますよ」

メルディスさんがそう呟くとテーブルの上が鏡のようになり徐々に見慣れた風景が映し出されていった。





メルディスという魔族は最古の魔族の一人である。

魔族は人族よりも寿命が長い。
メルディスに至っては数百年も生きてきた。

要するにメルディスにとってしまえば最年少の師団長であるミーリアも、優奈も優奈の父の優介もまだほんの幼子同然だった。
数百年生きるメルディスにとって数十年など誤差だった。

幼子が頑張れば微笑ましく映り褒めてやりたくなるし、感情が高ぶっていれば落ち着かせたくもなる。

メルディスの目には優介はちょっと先走っているように見えた。
種族は魔族と人族と違えど、ミーリアに頼られて張り切る兄のように。
その子供の優奈に至っては見ず知らずの所に連れてこられた赤子のように映り、ところどころに見え隠れする不安が不憫に思えた。

優介は家族がこちらの世界にいる、話を聞くに優奈に負い目があってか、優奈がこちらに来てから久しく様子を確認していないようだ。
里心がついてしまうからなのか分からないが。
だが現状把握は悪くない。
それを見せて落ち着かせよう、そう考えた。

魔力は未だ全快していないとはいえ、姿を見せる事くらいは造作もない。

善意の気持ちで姿見の魔法を使用した。

ミーリアも自分が使えない魔法に興奮しているし優介も口では否定的な言葉を言うが気になっているようだ。

優奈の手を取り心を読み見たい場所を映す。
私も初めて見るこちらの世界に興味はあった。
今後暮らすかもしれない場所だ。
報告するためにも見ておく必要がある。
そう思い魔法を展開していった。

扉が見えた。
こちらの世界では見ないような材質の物だ。
優奈や優介の話に耳を傾けながら先に進んでいく。

この建物はどうやら家のようだ。
こちらとは違う建物の造りにメルディスも年甲斐なく心ときめいた。

時刻は昼間らしい。
玄関から場所が映り室内の扉をくぐる。
室内の扉にはガラスがはめ込まれている。
わざわざ割れ易い物を使用するなんてと驚く。
こちらのドアは破れないように頑丈な物にさらに重要な場所の物には保護魔法がかかっている。
治安が良いのだろう。

室内は外からの光で明るかった。

暗視魔法を使用しないでも良さそうだとそのまま魔法を続ける。


「え?!」

不意に声が上がった。
しおりを挟む
感想 84

あなたにおすすめの小説

スキル:浮遊都市 がチートすぎて使えない。

赤木 咲夜
ファンタジー
世界に30個のダンジョンができ、世界中の人が一人一つスキルを手に入れた。 そのスキルで使える能力は一つとは限らないし、そもそもそのスキルが固有であるとも限らない。 変身スキル(ドラゴン)、召喚スキル、鍛冶スキルのような異世界のようなスキルもあれば、翻訳スキル、記憶スキルのように努力すれば同じことができそうなスキルまで無数にある。 魔法スキルのように魔力とレベルに影響されるスキルもあれば、絶対切断スキルのようにレベルも魔力も関係ないスキルもある。 すべては気まぐれに決めた神の気分 新たな世界競争に翻弄される国、次々と変わる制度や法律、スキルおかげで転職でき、スキルのせいで地位を追われる。 そんななか16歳の青年は世界に一つだけしかない、超チートスキルを手に入れる。 不定期です。章が終わるまで、設定変更で細かい変更をすることがあります。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

追放されたら無能スキルで無双する

ゆる弥
ファンタジー
無能スキルを持っていた僕は、荷物持ちとしてあるパーティーについて行っていたんだ。 見つけた宝箱にみんなで駆け寄ったら、そこはモンスタールームで。 僕はモンスターの中に蹴り飛ばされて置き去りにされた。 咄嗟に使ったスキルでスキルレベルが上がって覚醒したんだ。 僕は憧れのトップ探索者《シーカー》になる!

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

異世界から帰ってきた勇者は既に擦り切れている。

暁月ライト
ファンタジー
魔王を倒し、邪神を滅ぼし、五年の冒険の果てに役割を終えた勇者は地球へと帰還する。 しかし、遂に帰還した地球では何故か三十年が過ぎており……しかも、何故か普通に魔術が使われており……とはいえ最強な勇者がちょっとおかしな現代日本で無双するお話です。

『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!(改訂版)

IXA
ファンタジー
凡そ三十年前、この世界は一変した。 世界各地に次々と現れた天を突く蒼の塔、それとほぼ同時期に発見されたのが、『ダンジョン』と呼ばれる奇妙な空間だ。 不気味で異質、しかしながらダンジョン内で手に入る資源は欲望を刺激し、ダンジョン内で戦い続ける『探索者』と呼ばれる職業すら生まれた。そしていつしか人類は拒否感を拭いきれずも、ダンジョンに依存する生活へ移行していく。 そんなある日、ちっぽけな少女が探索者協会の扉を叩いた。 諸事情により金欠な彼女が探索者となった時、世界の流れは大きく変わっていくこととなる…… 人との出会い、無数に折り重なる悪意、そして隠された真実と絶望。 夢見る少女の戦いの果て、ちっぽけな彼女は一体何を選ぶ? 絶望に、立ち向かえ。

スキル盗んで何が悪い!

大都督
ファンタジー
"スキル"それは誰もが欲しがる物 "スキル"それは人が持つには限られた能力 "スキル"それは一人の青年の運命を変えた力  いつのも日常生活をおくる彼、大空三成(オオゾラミツナリ)彼は毎日仕事をし、終われば帰ってゲームをして遊ぶ。そんな毎日を繰り返していた。  本人はこれからも続く生活だと思っていた。  そう、あのゲームを起動させるまでは……  大人気商品ワールドランド、略してWL。  ゲームを始めると指先一つリアルに再現、ゲーマーである主人公は感激と喜び物語を勧めていく。  しかし、突然目の前に現れた女の子に思わぬ言葉を聞かさせる……  女の子の正体は!? このゲームの目的は!?  これからどうするの主人公!  【スキル盗んで何が悪い!】始まります!

処理中です...