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第四章 それぞれの生活
92話目 優奈が消えてから2
しおりを挟む「これが証拠の品です」
対面して椅子に腰を下ろす。
机の上にそっと箱を置いた。
優奈がスキルを使用し作り出した回復薬。
それらを一つずつ丁寧に取り出し、亘理室長の前に並べていく。
見慣れた薄い青い液体の入った試験管、その横に少し濃い青色の液体の入った試験管、さらに隣には深い青色の液体の入った試験管。
下級回復薬、中級回復薬、上級回復薬だ。
最初に出てきた見慣れた薄い青色の液体の入った試験管を見た亘理室長はピクリと眉を動かした。
中級、上級と並べると目を細めた。
私は手を止めずに続いて薄い赤色の液体の入った試験管、濃い赤色の液体の入った試験管、深い赤色の液体の入った試験管を置いた。
下級解毒薬、中級解毒薬、上級解毒薬だ。
亘理室長は眉間にしわを寄せ眼鏡を上げた。
更に箱から薄い黄色の液体の入った試験管、濃い黄色の液体の入った試験管、深い黄色の液体の入った試験管を置いた。
そして私は手を止め亘理室長を見据えた。
「……証拠の品がこれか?」
「はい」
「内容を聞いても?」
「はい」
深呼吸し息を整え説明内容を頭の中で組み立てる。
「まず、見慣れた薄い青色の液体ですが、これはご存知ですよね」
「あぁ、確か下級回復薬と鑑定が出てたな」
「効果も確認されてますか?」
「擦り傷や切り傷を瞬時に治す薬だと聞いた」
亘理室長の目線は隣の濃い青色の液体たちに移った。
「こちらの液体は中級回復薬、その隣が上級回復薬になります」
「……!! 本当か?!」
「はい。 優奈の鑑定ではそうなってました。 効果は検証してません、怪我をしていないので」
「そうか。 分かった、検証はこちらでしよう、すまないが鑑定もこちらでさせてもらってもいいか?」
「はい、もちろんです」
「それで……これらは?」
「赤が解毒薬、黄色が快復薬になります」
「どちらも未発見の物か……失礼だが快復薬? こっちの青と効果は同じなのか?」
「いえ、優奈の鑑定では黄色の快復薬は病……病気に効果があるそうです」
「病気……ん? 病気?」
「下級の物でも、喉が痛いな、頭が痛いなというときに飲むとたちまち治りました。 こちらも中級、上級は検証してません」
「一つ確認だが、これらは橘君の妹が作ったんだな」
「はい」
私がそう答えると亘理室長は手を組み何やら考察を始めてしまった。
「……駄目だ。 ひとまず鑑定しなければ分からん。 もう一つ聞くが、本当に提出していいんだな。 これらの価値分かってるんだな」
その瞳にはこちらを心配する様子もうかがえた。
引き返すなら今のうちだぞと言われているような気がする。
「優奈を……見つけてください。 お願いします」
本当なら話すべきではないのは分かってる。
今後の優奈の未来を勝手に決めたようなものだ。
見つけてあげられない自分がふがいなくて申し訳なくて手をきつく握りしめた。
警察の捜査は行っている。
でもいまだに手掛かりは見つかってない。
もうこうするしか手は残っていない。
目から溢れる涙を隠すように深々と頭を下げた。
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