上 下
66 / 113
第三章 進路とダンジョン攻略

66話目 2回目のダンジョンアタック 6

しおりを挟む




罠に気を付けつつしばらく進むと今度は狼の群れが出た。
10匹くらいの大所帯だ。

これも桜井さんのスキルで事前に察知出来たおかげで不意打ち攻撃を防ぐことが出来た。
私もスキルで狼の群れを分断させた。

伊勢さん達の方に3匹、こちらに2匹、結界でこちらに来れないのが5匹。

こちらに来た狼は葵が水魔法で首をはね、五十嵐に突撃し、跳ね返されたところを茜がハンマーで一撃。

私の出番は無かった。

伊勢さん達の方を見ると、伊勢さんが狼の背を触っているようだ。
一見すると撫でているようにも見えるが、狼の動きが鈍い。
まるで関節が固まってしまったかのように前後に不規則な動きを見せている。
ただその場から逃げ出す力はないらしい。

伊勢さんがその様子を開いている方の手で撮影する。
その狼を助けようとしたのか別の狼が飛びかかる。

鈴木さんが飛びかかり無防備になったお腹を横から蹴る。
蹴られた狼はそのまま壁に激突し、光となって消えた。
もう一匹の狼は桜井さんに仕留められたようですでに消えていた。

「橘さん、そっちの残りの狼、逃げないよう後ろも塞いでもらっていいですか? こっちは少しばかり撮影したいので」

「いいですよ……あっち仕留めておきますか? ウズウズしてるのが二人いるので」

「あー……そうですね。 任せました」

伊勢さんが撮影しながらそう言うと、茜と葵が結界に阻まれキャンキャン言っている狼の下へ走った。

「私の獲物」

「私にも頂戴よ」

「……私が3、茜が2」

「えー……まぁいいか。 サンキュー!!」

「結界解除が先でしょうに!!」

結界解除するより先に3匹が、結界解除した直後に2匹が2人の手によって光となった。

「なんか……橘が振り回されるのって新鮮だな」

五十嵐にそんな感想を述べられた。

「別に振り回されてなんか……なにそれ」

「ん?」

五十嵐は競って狼を刈ろうとする2人をほったらかしにして、同じようにほったらかしにされているアイテムを回収していた。
返事をしながら振り返ると、五十嵐の手にはふさふさの何かがあった。

灰色で長さは30cmほど。 例えて言うなら先ほどの狼のしっぽのような大きさ……しっぽか!!

「五十嵐君」

「君?」

「そのしっぽはいただこう」

「しっぽ? あぁ、これのことか? ほれ」

ポイっとぞんざいに投げてよこした。
それをキャッチする。
硬く野性味溢れる毛並みだがそれもまたよし。
両手でにぎにぎしていると自分達が倒した狼から落ちたアイテムを回収し終えた2人が戻って来た。

「遥なにそれ」

「しっぽ? しっぽ?」

貸して貸してと2人にせがまれる。
どうやら2人が倒した狼からは出なかったようだ。

葵に渡す。

「野性味良き」

「ああ、私も私も!!」

葵が次に茜に渡す。

「お土産用の狐のしっぽみたい。 これ良い!!」

「良い」

「美雪と美緒さんの分も狩ろう!!」

「「良い」ね」

私達が狼狩りで盛り上がっていると、

「……お前らの感性怖いわ。 羽ウサギのしっぽと言い……なんなんだそのしっぽに対する執着……」

五十嵐からそんなことを言われた。



「いやーお待たせお待たせ」

撮影とアイテム回収を終えた伊勢さん達もやって来た。

「伊勢さん、どうでした? やっぱり魔物相手にも使えました?」

「使えた使えた、……とその件は拠点に戻ってからにしよう。 まずは探索だ」

「そうですね」

再び桜井さんに探知のスキルを使用してもらい、ダンジョンの先に進むことにした。

8階に降りてから間もなく3時間、魔物部屋にも当たらず、順調に攻略していた。
7階の感じからすると間もなく9階への階段が見える頃だ。

「そろそろ荷物がいっぱいになってきたわね」

「時間も時間だな」

「……そこ階段じゃないか?」

「おお!!」

「丁度いい、今日はここまでにして拠点に引き返そう」

「そうですね」

9階への目途がついたのでここで拠点へ戻ることにした。
手探り状態の攻略と違い、来た道を戻るだけの撤退は1時間ほどで終わった。

「あら、おかえりなさい」

「食事準備してあるよ」

「見てみてー狼のしっぽ!! カッコ可愛くない?」

「カッコいい!!」

「可愛いわね」

「ここの女性の感性よ……」

「五十嵐うるさい!!」

五十嵐は男性陣に肩を組まれて、その話題おさわり厳禁とばかりに連行されていった。

7階の拠点へ戻ると食事の準備がされていた。

「お腹空いたー」

「旨そう」

「手を洗ってきてね」

「拾ったアイテムはこっちのテントに置いてくれ、明日自衛隊の拠点の護衛に戻る組に持たせるから」

「「「「はーい」」」」

私と葵と茜が鞄からアイテムを取り出し、テントに置きに行った。
伊勢さんや鈴木さん達がそれらを運びやすいように新しい鞄へと詰めていく。

「結構アイテム落ちましたね」

「な、使えるかどうか分からんけどな。 ゴブリンの腰蓑なんて死んでも要らん」

「私も要らないです」

「しっぽ欲しい」

「しっぽ良いよね。 加工してキーホルダーにしてベルトに着けたい。 絶対可愛い」

「あはは……」

伊勢さん達は苦笑した。
そうは言ってもアイテムは全部提出なのでしっぽ含めて全て置いた。

「しっぽ……」

「皇さん、名残惜し気にしてもダメだって、まだ前回のも全部鑑定出来てないんだから」

伊勢さんの言葉に興味を惹かれた。

「鑑定出来たら貰えるかもしれないんですか?」

「んー亘理さんが確かそう言ってたと思う。 金策がどうのこうのってなー」

「亘理さん独り言で色々呟いてますからね」

「そう言えばアメリカのあの臨時速報のダンジョンはなんか言ってましたか?」

私達には何も教えられてないけれども、その亘理さんの独り言を聞ける立場に居る社会人組なら何か知ってるかもしれない。
そう思い質問したが、

「あぁ……外務省の役立たずめ!! って言ってたぞ。 なんも情報こないみたいだ」

「……亘理さんの独り言、それはそれでいいの? 情報駄々漏れじゃん」

「まぁ、俺たちしか聞いてないからな」

そう言って伊勢さん、鈴木さん、桜井さんが苦笑した。



しおりを挟む
感想 84

あなたにおすすめの小説

最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』 たったこの一言から、すべてが始まった。 ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。 そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。 それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。 ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。 スキルとは祝福か、呪いか…… ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!! 主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。 ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。 ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。 しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。 一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。 途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。 その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。 そして、世界存亡の危機。 全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した…… ※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。

称号は神を土下座させた男。

春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」 「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」 「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」 これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。 主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。 ※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。 ※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。 ※無断転載は厳に禁じます

異世界転移ボーナス『EXPが1になる』で楽々レベルアップ!~フィールドダンジョン生成スキルで冒険もスローライフも謳歌しようと思います~

夢・風魔
ファンタジー
大学へと登校中に事故に巻き込まれて溺死したタクミは輪廻転生を司る神より「EXPが1になる」という、ハズレボーナスを貰って異世界に転移した。 が、このボーナス。実は「獲得経験値が1になる」のと同時に、「次のLVupに必要な経験値も1になる」という代物だった。 それを知ったタクミは激弱モンスターでレベルを上げ、あっさりダンジョンを突破。地上に出たが、そこは小さな小さな小島だった。 漂流していた美少女魔族のルーシェを救出し、彼女を連れてダンジョン攻略に乗り出す。そしてボスモンスターを倒して得たのは「フィールドダンジョン生成」スキルだった。 生成ダンジョンでスローライフ。既存ダンジョンで異世界冒険。 タクミが第二の人生を謳歌する、そんな物語。 *カクヨム先行公開

「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした

御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。 異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。 女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。 ――しかし、彼は知らなかった。 転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――

俺の召喚獣だけレベルアップする

摂政
ファンタジー
【第10章、始動!!】ダンジョンが現れた、現代社会のお話 主人公の冴島渉は、友人の誘いに乗って、冒険者登録を行った しかし、彼が神から与えられたのは、一生レベルアップしない召喚獣を用いて戦う【召喚士】という力だった それでも、渉は召喚獣を使って、見事、ダンジョンのボスを撃破する そして、彼が得たのは----召喚獣をレベルアップさせる能力だった この世界で唯一、召喚獣をレベルアップさせられる渉 神から与えられた制約で、人間とパーティーを組めない彼は、誰にも知られることがないまま、どんどん強くなっていく…… ※召喚獣や魔物などについて、『おーぷん2ちゃんねる:にゅー速VIP』にて『おーぷん民でまじめにファンタジー世界を作ろう』で作られた世界観……というか、モンスターを一部使用して書きました!! 内容を纏めたwikiもありますので、お暇な時に一読していただければ更に楽しめるかもしれません? https://www65.atwiki.jp/opfan/pages/1.html

現代ダンジョンで成り上がり!

カメ
ファンタジー
現代ダンジョンで成り上がる! 現代の世界に大きな地震が全世界同時に起こると共に、全世界にダンジョンが現れた。 舞台はその後の世界。ダンジョンの出現とともに、ステータスが見れる様になり、多くの能力、スキルを持つ人たちが現れる。その人達は冒険者と呼ばれる様になり、ダンジョンから得られる貴重な資源のおかげで稼ぎが多い冒険者は、多くの人から憧れる職業となった。 四ノ宮翔には、いいスキルもステータスもない。ましてや呪いをその身に受ける、呪われた子の称号を持つ存在だ。そんな彼がこの世界でどう生き、成り上がるのか、その冒険が今始まる。

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

処理中です...