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第三章 進路とダンジョン攻略
64話目 2回目のダンジョンアタック 4
しおりを挟む4日目
「いよいよ潜るぞー!!」
「おー」
護衛の任務を他の組にバトンタッチし、下の階へと潜る。
7階までは自衛隊が先行しているので地図がある。
それをもとに拠点出立前にルートを確認する。
拠点から先行分の食料の補給分を持ち時間を確認し拠点から出立した。
先行している組の道しるべに沿って動く。
見慣れた魔物が出るところはサクッと進む。
見慣れぬ魔物が出る階からは対戦に慣れながら進むように気を付ける。
6階は狼の魔物、7階はゴブリンだ。
ゴブリンは人型ゆえに精神的にくるかと思いきや意外と平気だった。
葵と五十嵐もそう感じたようで3人で互いに顔を見合わせててしまった。
職持ちはそう言ったことに対して何か耐性が付いているのだろうか。
そう思ったが答えは出ないので、出来るだけ早く追いつくべく動いた。
そしてお昼前には8階直前の広場で追いつくことが出来た。
ここを仮の拠点にしているようで広場にはテントが張ってあった。
休憩中見たいで何人かは中で仮眠を取って魔力を回復しているようだ。
「お、来たか」
「お待たせしました」
「来たばかりで申し訳ないが皇さん、水魔法お願いしてもいいかな」
「……どれ」
目の前にブルーシートが敷かれ、その上にウォータータンクがいくつか置かれている。
それに葵が補充を行った。
「ありがとう」
「どう致しまして」
現在ここに居るのは12名。
この間別れていた女性組も今回は一緒だ。
「遥、葵!! ようやく一緒の行動だね」
「そうだね!! 嬉しいー!!」
休憩していた坂田茜がテントから顔を出す。
どうやらあのテントが茜たちのテントらしい。
坂田茜は体育大学に通う学生で同い年。
明るめのブラウンで髪は短い。 活発な性格で戦い方も豪快だ。
ハンマーを振り回して叩き潰す。 それが彼女の戦い方さ。
同じ組には柊美雪と秋田美緒が居る。
柊美雪は長い黒髪をポニーテールに結んだ子で性格は真面目だ。 真面目なんだけど茜の豪快さに影響を受けて非常に面白い仕上がりになっている。
専門学生だったけど職持ちを自覚し、ダンジョン探索者の募集を見て、日本を私が守るんだと、親の反対を押し切って辞めてきたらしい。
戦い方は主に紐を使って対象をからめとっている。 だから茜との相性がすこぶる良い。
もう一人の秋田美緒は穏やかな女性。
私より2歳年上で社会人からの転職組だ。
淑やかさなで優雅な物腰から繰り出される炎魔法に、私達ダンジョン探索者の女性たちは憧れを抱いている。
水魔法の葵と炎魔法の美緒さんはその魔法の性質から相性の悪さを想像させるが、実際の所そんなことはなく、熱したところを急速に冷やしたりして脆くさせ壊したりするなど相性は良い。
「今はどんなタイミングなの?」
「皇さんありがとう、橘さん今は昼休憩中だよ、午前中に8階を見て回ったから地図と照らし合わせている最中だ」
伊勢さんが水を片づけながらそう答えてくれる。
「そうなんですね」
「皇さんの水魔法も秋田さんの炎魔法も助かるね。 羨ましいな」
「伊勢さんのスキルは強化でしたっけ?」
「僕は身体強化と物質強化だね」
「物質強化……物もですか?」
「まだどこまでが範囲なのか分からないけど……手に触れてる物は強化出来るよ」
こんな具合にね、と髪の毛を一本抜きひらひらさせてからスキルを発動させた。
するとぐにゃりと曲がっていた髪の毛が重力に逆らい、ピンとまっすぐ伸びた。
「……触っても良いですか?」
「先に気をつけてね、刺さっちゃうから」
「分かりました」
そう言われ注意しながら髪の毛を触る。
針金のように硬くなっている。
柔軟性が失われて硬くする強化なのか。
しなやかで切れない強化とかではなさそうだ。
「十分武器になりそうですね」
「そうは上手くいかないんだよね。 これ武器にしちゃうと俺ハゲちゃう」
ブッ!!
そこかしこから噴き出す声が聞こえた。
武器に使えても毛根が追い付かないか。
「だから今のところナイフを強化して使ってるよ。 凄いよ、スパスパ切れちゃうから」
それは羨ましい。
「他の人の武器とかは強化できるんですか?」
「それが調整難しいんだよね。 触っているときだと大丈夫なんだけど、僕が離しちゃうと効果が切れちゃうんだ」
そう言って伊勢さんが髪の毛を離した。
針金のように真っ直ぐだった髪の毛は、伊勢さんの手を離れるとすぐにぐにゃりと曲がって落ちた。
「……他の人のは厳しいですね。 魔物相手はどうなんですか? 例えば可動域を強化して動きを鈍らせる……とか」
「軽く言うけどそれ死ねるよね? それ接触しなきゃいけないやつだよね? ちょっと試してみたいけどさ」
伊勢さんの研究魂に火を着けたみたいだ。
次に出てきた魔物で試すことになった。
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