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第二章 変わりゆく日常

36話目 鑑定士

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岩清水いわしみす、今日はあとどれくらいあるの?」

「本日は後20件ほどです」

「……はぁ」

政治家の父親から仕事を命じられ、父の秘書の岩清水と共に日本各地を飛び回る。

それもすべてあの日から始まった。

私は中学2年生の足立円あだちまどか

毎日昼は学校、放課後は家庭教師や習い事と言った日々を過ごしていた。
それもある日突然変わった。

「ステータスオープン」


〝職業【鑑定士】 になりました〟

その声が聞こえた時は意味が分からなかった。
その後ステータスが見えるようになり、スキルを使えば他人の職業も見れることが分かった。
始めは鑑定出来る物が無く、人を鑑定できると知ったのは、もはや意地になってやみくもに鑑定を飛ばした結果だ。

父親にそれを報告すると最初は信用されなかった。
ただ、不可解な出来事が続き、ダンジョンなる物が発見されてからは徐々に信頼されるようになっていった。

父は政治家で現総理の側近という立ち位置だ。
父からしたら唯一無二の武器が出来たという感じだろう。
そしてそれから私はずっと鑑定漬けの生活を送ることになる。

手始めに政府関係者の鑑定。
食事の席に連れていかれ、娘という立場も相まって何ら不審に思われず鑑定出来た。
それはMPの限界もあったので数日に渡って行った。
驚くべきことに数百人居る与党の中で職持ちは2人しかいなかった。
その2人のうち若手の方がのちにダンジョン攻略室に回されることになる。


私のスキルは鑑定、異常鑑定、完璧鑑定の3つ。
必要な魔力は通常の鑑定が2、異常鑑定が5、完璧鑑定が10だ。
通常の鑑定は名前とレベルのみ、触れれば職業も見れる。
異常鑑定は早く言えば病気の鑑定だ。 身体の悪いところが見える、ただ見えるだけで解決方法は分からない。
完璧鑑定は対象の名前、職業、ステータス、スキルが見える。 とても便利な能力だけれども、対象を直接見て、触れなければいけない。

ダンジョンからスライムが溢れてからの私の日常は息つく暇もないくらいに忙しい。
平日は朝から鑑定、昼は学校、夕方は習い事をこなし、MPを回復してからまた鑑定。

特にダンジョン攻略室が立ち上がってからは忙しさに拍車がかかった。
何故か私が面接官の補助に回ったからだ。

数百万もいる希望者を秘密裏に鑑定しなければいけない。
もう一度言う、数百万を一人で鑑定だ。 聞いたときは頭がおかしいのかと思った。
私が一度に鑑定できる人数はせいぜい百数十人程度。

物理的に無理なので、他でピックアップされた優秀者を鑑定するということで折り合いがついた。
その結果数十人の職持ちを確保できた。
ただ、取りこぼしも結構多いんじゃないかなと思う、空振りも多かったし。

それで今、その取りこぼしを拾うべくSNSで有名になった人たちの下に足を運ぶ羽目になったのだ。
なんでか知らないが私が、他の人のフォローをしている。 中学生の私が大の大人のフォローをだ。

……もう、理由は何でもいいから私の下に連れて来てよ、これじゃあ折角の夏休みが潰れちゃうよ。

いらんこと言うんじゃ無かったと、流れる景色を見ながらはぁ……とため息をついた。



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