上 下
25 / 113
第一章 始まり

25話目 スライム祭り2

しおりを挟む


「どこもかしこもスライムニュースだ」

生中継中のリポーターの目の前にはスライムが沢山いる。
警察もすでに現場に到着しているようで道路の交通整理をしている。

「交通整理……いるのかな?」

足で踏んで消えるスライムだ。 車に弾かれたら間違いなく消えるよね。

「スリップ事故防止……なのかな」

もそもそと若干冷えつつあるチャーシュー丼を食べながら鑑賞する。

「他のチャンネルはどうなんだろう」

リモコンを操作し、各局の報道の仕方を見る。
ある番組ではスタジオにコメンテーターを呼んで討論してるし、ある番組は生中継で小さい枠にキャスターの姿がある。 他の番組は首相を出待ちしているみたい。

行儀が悪いがスマホを操作しネットの感想を見る。

「【絶賛】☆☆スライム祭り☆☆ part32【開催中】 ? 
嘘でしょ、発生してからまだ数時間なのに……もうこんなにスレ伸びてるの?!」

他にも、【皆も一緒に】スライム【狩ろうぜ】 とか【スタンピード】ダンジョンスレ【発生中】 とかできてる。

出てきた魔物がスライムだからなのか? 危機感なんてかけらもない。

ネットの情報を漁るとどうやらこの付近だけではなく、全世界規模らしい。 まとめサイトによると最初に目撃情報が寄せられたのが17時頃。 そこからどんどん目撃情報が増えていったみたい。

モニュメントはどうなったって見に行った人が居たみたいで、コンクリートで固められていたはずのモニュメントは、コンクリートが溶けたように崩れており、そこからスライムが出て来ていたと情報が寄せられていた。

画像も載っている。

「大量の水まんじゅうみたい、美味しそう」

折り重なるスライムがそう見えてしまった。

『今自衛隊が到着した模様です。 今からモニュメントの中に入るようです』

『あ、速報です。 今政府から緊急事態宣言が発令されました。 報道を見ている視聴者の皆さん、政府の指示に従って……』


緊急事態宣言!? なんだかどんどん大変なことになって行ってるよ!?

スレもSNSもトレンドに入った。

一瞬映ったモニュメントの数字が100になっていた。

……もしかして魔物の量的な奴?
一杯になったから溢れましたよー……って感じ?

いつの間にかチャーシュー丼を食べきってしまい、なんか物足りなくなった私は戸棚に仕舞ってたポテチと冷蔵庫からジュースを取り出して膝の上にシロを乗っけて観戦しだした。


その日母は夜遅くにタクシーで帰って来た。
無事でよかったと抱きしめられた。 映画鑑賞気分でいた私はちょっと申し訳なく思った。




この突如発生したスライム祭りは、その日だけでは終わらずに次の日まで続いた。

ただ、発生日の夜にモニュメントへ自衛隊が突入し、スライムの数を減らしたおかげでモニュメントからスライムが出なくなった。

学校からは休校の連絡が届いた。 どうやら解体予定の校舎にモニュメントがあったみたいでえらいことになってるらしい。 灯台下暗しとはこのことだね!! 私も遭遇したかった。 ちくしょう!!

外にあふれたスライムは、警察官と有志のボランティアと自称勇者達が掃討しているみたい。

そしてこのスライム祭りは、ボランティアの凄まじい熱量によって数日で収まることになった。

その後日談として、内緒でスライムを保護し匿っていた人が多数居たらしく問題になった。

スライムを飼ってみた動画が溢れるだけならまだ可愛い。
中にはスライムが虫籠を溶かして脱走、またスタンピード発生か?! と大騒ぎになった。

匿いたくなる気持ちはわかる。
スライムはペットになりえるのか? 餌は何なのか? とか私も非常に気になるところだ。

配信していた人達の元には警察が行き、取り上げの上配信停止処分になったみたいだ。 他の人からの通報され発覚した人は、厳重注意されたみたい。 ……まぁ、そうだよね。



ちなみに倒したスライムからアイテムは落ちなかったみたい。
どっかのスレで『スライム1000体倒したぜ』 と名乗る人がそう報告してた。 皆その無償の頑張りを称えてた。 

……ダンジョンの外だとアイテム落とさないのかな?

そして、これを機に政府からダンジョン攻略室なる物が設立されることになった。

数日色んなところの機能がマヒしただけでも経済損失だけでもすごい事になったらしい。
スライムを出さない為の策としてそうなったみたい。 
物理的にコンクリートで固めても溶かされちゃったからね。

ちなみにスライムからの攻撃でけがを負った人は居なかった。 
踏んで転んで怪我した人は全国で居たみたいだけど。
酸性の液体を掛けられたりとかは無かったみたい。 
流石ダンジョン最弱の魔物だ、怪我無しで済ませるとは……分かっているやつだ。

民間からも探索者募集するみたいでそれ専用のスレッドが立っていた。

ダンジョンは全国各地に散らばっているからそれを抑えるだけでも大変だもんね。

だが募集年齢20歳以上らしい。 
当然と言えば当然なんだけれど……悔しい。

姉からは応募したと事後報告された。 


高校は休校したまま夏休みに突入した。
どうやら政府と高校との話し合いの折り合いがつかないみたい、予測だけど。 夏休み明けに期末テストを延期すると連絡が来てた。 秋の修学旅行までには再開されるよね? 再開されなかったら私も影なるスライムハンターなってやるとひそかに思った。


ネットだけで盛り上がっていたダンジョンについて、人的被害ゼロというこの不思議なスライムスタンピードを持ってして、日本だけに留まらず、全世界に披露されることになり、誰もがその存在を知るところとなった。


こうしてダンジョン時代という新たな幕が上がった。







しおりを挟む
感想 84

あなたにおすすめの小説

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

最強のコミュ障探索者、Sランクモンスターから美少女配信者を助けてバズりたおす~でも人前で喋るとか無理なのでコラボ配信は断固お断りします!~

尾藤みそぎ
ファンタジー
陰キャのコミュ障女子高生、灰戸亜紀は人見知りが過ぎるあまりソロでのダンジョン探索をライフワークにしている変わり者。そんな彼女は、ダンジョンの出現に呼応して「プライムアビリティ」に覚醒した希少な特級探索者の1人でもあった。 ある日、亜紀はダンジョンの中層に突如現れたSランクモンスターのサラマンドラに襲われている探索者と遭遇する。 亜紀は人助けと思って、サラマンドラを一撃で撃破し探索者を救出。 ところが、襲われていたのは探索者兼インフルエンサーとして知られる水無瀬しずくで。しかも、救出の様子はすべて生配信されてしまっていた!? そして配信された動画がバズりまくる中、偶然にも同じ学校の生徒だった水無瀬しずくがお礼に現れたことで、亜紀は瞬く間に身バレしてしまう。 さらには、ダンジョン管理局に目をつけられて依頼が舞い込んだり、水無瀬しずくからコラボ配信を持ちかけられたり。 コミュ障を極めてひっそりと生活していた亜紀の日常はガラリと様相を変えて行く! はたして表舞台に立たされてしまった亜紀は安らぎのぼっちライフを守り抜くことができるのか!?

女の子に振られたら余命が見えるようになった~気づけばハーレムが完成していました~

砂糖琉
恋愛
俺は今日、三大美人の一人『石原愛理』に告白する。 俺と彼女は仲がいい。おそらく愛理も俺のことが好きだろう。それは確信している。 いつも見せてくれる表情、仕草、それらが完全に恋してる乙女のそれだ。 遂に俺に初彼女ができる。 「なあ、愛理」 「どうしたの?」 「俺と付き合ってくれない?」 「……ごめん」 「えっ……?」 だが告白は失敗に終わる。 俺の計算が狂っていたのか? どうして…… そんなある日、学校で気まずくて俺の居場所がなくなった時だった。いきなり頭の上に数字が見えるようになった。 この数字はなんだ?

異世界から帰ってきた勇者は既に擦り切れている。

暁月ライト
ファンタジー
魔王を倒し、邪神を滅ぼし、五年の冒険の果てに役割を終えた勇者は地球へと帰還する。 しかし、遂に帰還した地球では何故か三十年が過ぎており……しかも、何故か普通に魔術が使われており……とはいえ最強な勇者がちょっとおかしな現代日本で無双するお話です。

異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!

枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕 タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】 3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!

リアルフェイスマスク

廣瀬純一
ファンタジー
リアルなフェイスマスクで女性に変身する男の話

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

家の庭にレアドロップダンジョンが生えた~神話級のアイテムを使って普通のダンジョンで無双します~

芦屋貴緒
ファンタジー
売れないイラストレーターである里見司(さとみつかさ)の家にダンジョンが生えた。 駆除業者も呼ぶことができない金欠ぶりに「ダンジョンで手に入れたものを売ればいいのでは?」と考え潜り始める。 だがそのダンジョンで手に入るアイテムは全て他人に譲渡できないものだったのだ。 彼が財宝を鑑定すると驚愕の事実が判明する。 経験値も金にもならないこのダンジョン。 しかし手に入るものは全て高ランクのダンジョンでも入手困難なレアアイテムばかり。 ――じゃあ、アイテムの力で強くなって普通のダンジョンで稼げばよくない?

処理中です...