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第一章 始まり

15話目 ダンジョン

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「勇者イガラシ?」

「うん、爆誕だよ」

「爆誕はいいから」

帰ってきた母と姉と夕飯を済ませ、私の部屋で姉と今日の勇者爆誕について話をしていた。

「これこれ、……うわぁもう再生回数100万回超えてる」

「再生数えぐ……今日でしょ? これアップされたの」

「うん、生配信だったよ。 多分その後でアップされたんじゃないかな?」

「あ、優奈その後についてコメント出てるよ」

「え? あ、本当だ!!」

そこには生配信の途中で配信が終了したことについての謝罪と、中での撮影した動画の予告なんかが記載されていた。

「配信まで少々お待ちください……だって」

「もーなんなのこの生殺し感!! 気になるよー」

そんな話を姉としながらモヤモヤした気持ちを抱えこの日は眠りについた。


翌朝、モニュメントのことを考えながらいつも通りに草むしりをして家に帰る。

帰宅しても姉はまだ寝ていた。
姉が起きるまで結界までの下準備をすることに。

むしって来た草を適応してディトルク国の雑草に、雑草を分解して種に、上位交換してまだ交換したことのない草の種に変えた。

「ふんふふーん」

指でくぼみを作り種を蒔いていく。
柔らかい土をふんわりかけ、軽く押す。

「準備完了-!!」

作業が終わったので片づけをし、シャワーを浴びに行った。
母も今日から連休だ。 連休の朝ごはんは各自で適当に済ませる。
パンを焼き、牛乳で流し込んだ。

食器を片づけ、テレビを見ていると姉が起きてきた。

「おはようー優奈今日も早いね」

「おはようお姉ちゃん」

時間は9時過ぎ。 姉にとってはこの時間でも早いらしい。
冷蔵庫からペットボトルのお茶を取り出してコップに注ぐ。
それを持ちながらリビングにやって来た。

「もう準備万端だよ!!」

「分かった分かった、ちょっとこれ飲んでからねー」

「はーい」

その間に私は昨日の動画を見る。
最新動画がアップされてないか確認だ。

「……アクセスできない」

「ん?」

「お姉ちゃんアクセスできない」

あの人たちの動画を見ようと配信サイトにアクセスしようとしたら『現在サーバーが込み合ってます。 時間をおいてください』 と表示された。 私こんなの初めて見た。

「どういうこと?」

「分かんない」

何があったんだろうとまとめサイトを覗く。
そこにサーバー付加の原因について仔細が書かれていた。

どうやら昨日の夜23時ごろにあのダンジョンの内部映像をアップしたらしい。


ダンジョン内に足を踏み入れた4人。
その内部は土がむき出しになっており、ところどころ濡れていた。

『……薄暗いな』

『うぉお?! なんだ、水か』

『大声出すな、うっさいわ!!』

画面は薄暗く、視界が悪かった。
しばらく4人は3人が前を歩き、イガラシさんが後ろから撮影する形で、分かれ道のない道を歩いた。
3人が話ながら歩く動画が10分ほど続いた。

『……なんか、拍子抜けだな』

『魔物でも出るのかと思った』

『魔物? モンスター? 魔獣? エイリアン? この場合呼び名って何になるんだろうな』

『魔物かな?』

『魔物じゃね?』

『最初に出てくるのってどんなのだろうな』

その言葉で3人の動きが止まる。
自分達が不味いことをしている自覚が出てきたようだ。

『止めろよ武器なんてねえぞ』

『……いったん武器取りに戻るか?』

『だけど……これじゃただ洞窟に入っただけの映像になるぞ?』

茶髪の人が撮れ高と焦りとの狭間で揺れる。

『別にいいだろ? 武器取ってまたすぐくりゃいいじゃん。 丸腰は流石にヤバいって。 どうするゴブリン出たら』

ボケ担当のアキラさんがまともなことを言う。

『……そうだな。 ついでに懐中電灯取ってくるか。 こう暗くちゃよく見えないし』

『だな。 となれば引き返すか』

『おう』

そう言って3人は入り口の方に踵を返した。

『うわっ』

『どうした?!』

『なんか柔らかいの踏んだ!!』

『柔らかいの?』

リーダーのハヤシさんがスマホで叫んだ茶髪の人の足元を照らす。
そこには丸く透明なスライム状態の物があった。

『……なんだこれ』

『ぐにぐにしてる』

物怖じしないアキラさんが足でつつく。

『ウォーターベッドを柔らかくしたみたいだな……気持ちいい』

『マジか』

かわるがわる足でつつく。 するとスライム上のなにかは光をまとって消えてしまった。

『え?』

『は?』

『な……なんだ?』

呆気にとられる3人組。
しばしその場で呆然と佇んだ。

『もしかして……スライム?』

『俺ら倒したの? 俺も勇者になれた?』

『勇者枠は埋まりました。 あれって魔物? 何あれ……弱くね? 踏んで倒せたぞ』

『ちょっと探してみるか。 もしかしたら今まで素通りしてたかもしれないぞ』

しばらく大の大人がしゃがみ込んでスライム探しに熱中した。
岩の影や隅に隠れるようにしてスライム状の何かがいた。

『うぉお?!』

『どうした?! 撮影勇者イガラシ!!』

『それは呼ぶな!! なんか柔らかいの踏ん……だ』

勇者イガラシが自身の足元にスマホを向ける。
足元には先ほどのスライム状のなにかが居た。

先ほどと同じく光を纏うと消えてしまった。

『やっぱり魔物じゃね?』

『あれ……元祖勇者の足元になんか落ちてるぞ?』

『ドロップアイテムか?! ダンジョンでおなじみの!!』

『マジか!! 流石勇者!! すげえ!! 持ってるな!!』

興奮する3人。 枠外から手が伸び足元に落ちている何かを拾い上げた。

『液体? なんだこれ』

手で持っているのは青色の液体が入った試験管のような物だった。

『もっと集めようぜ!! これなら素手で倒せんじゃん』

そう言って4人でしばらくスライム状のなにかを倒す映像が流れた。

15分ほどしてしゃがむのに疲れたのか全員立ち上がった。
門のところまで戻ってくると3人が門の所に横一列に並んだ。

『今回はこれくらいにするか』

『だな、次回の動画で今回獲得したアイテムについて検証するぞ』

『拾ったアイテム数は次回発表』

『検証するから楽しみに待っててな』

『またなー』

そう言って動画は終了した。

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