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第一章 始まり

6話目 アンロック

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その日はまもなく大型連休という日だった。
いつも通り高校の教室で授業を受け、休み時間にあーちゃんたちと他愛もない話をしていた時だった。

「ねぇねぇ、外……」

「凄い霧だね」

「真っ白……」

その日は湿気もなく初夏を思わせるような爽やかな晴れの日だった。
そんな霧とは無縁の陽気なのに窓の外は真っ白に覆われた。

「湿気る前に窓閉めよう」

「そっちも閉めてもらっていい?」

窓際に居たクラスメイトが指示を出す。

「あれ? 晴れてきた……」

「なんだったんだろう?」

窓を閉めて次のチャイムが鳴る前に外を白く染め上げた霧は晴れていった。

【ステータスがアンロックされました】

私の耳にそんな言葉が届いた。

「えっ?」

「どうしたのゆうゆう?」

「あの霧なんだったんだろうね? 水蒸気? 何か事故でもあったのかな?」

「あ、チャイムなった。 席に戻るね」

「ほら優奈も戻らないと先生来るよ」

「う、うん」

次の時間は日本史。
前に錬金術師になった時のことが思い出される。
授業に集中できず、授業が終わると速攻でトイレへ走った。

トイレの個室に入り小声でステータスオープンと唱える。

「――!!」

思わず声が出そうになってしまい慌てて両手で口を押えた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【名前】  橘優奈 レベル12
【職業】 錬金術師

HP45/45
MP127/127
【攻撃力】9
【防御力】9
【素早さ】6
【魔力】 17
【器用】 8
【運】  15
ステータスポイント12

【スキル】 作製、分解、鑑定、適応、精錬、抽出、上位交換、下位交換

【称号】ラヴァルザードの孫

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「……なにこれ。 レベル? え? えっ?! ってラヴァルザードって誰?!」

ボーゼンとしていたら扉がノックされた。
いけない。

我に返って用を足した振りをしてトイレから出た。
そこからの授業は頭の中がごちゃごちゃしてて気が付いたら放課後だった。

「……あれ? 家についてる!!」

玄関の鍵を閉めてぼんやりと立ち尽くしてたら足元にシロがすり寄って来た。
その感触でハッとし頬をつねった。

「痛い……」

ステータスって何。 と言うかこのゲーム画面みたいなの何。 素早さ低い!! 魔力高い!!
いや基準て何?!

と言うかこのラヴァルザードの孫って称号もなに……。
私のおじいちゃんおばあちゃん父方も母方もどっちも日本人なんだけど……。
もしかして私養子? もしかしてクオーター? この日本人顔で?! 衝撃の事実なんだけど!!

一人やきもきしているとふと姉の顔が浮かんだ。

「あ……お姉ちゃん、称号の件お姉ちゃんにも何か出てるかも」

そして鞄からスマホを取り出し姉の番号に電話を掛けた。



何コールかして聞きなれた声が電話に出た。

「……はい? どうしたの?」

電話の向こうの声はなんだか疲れたようだった。
私の姉、橘遥香はこの春に大学の3年次に進学した。
その声を聞き電話してはまずかったかなと思ったが、頭を振って疑問を口にした。

「お姉ちゃん、今大丈夫?」

「んー大丈夫。 今家だから」

その声を聞き軽く深呼吸した。

「お姉ちゃん、ステータスって出た?」

「ステータス? なにそれ、新しいゲーム?」

お姉ちゃんは気づいてないみたい? それとも声が聞こえなかったのかな? それとも出なかった?

「お姉ちゃん、ステータスオープンって言ってみてくれない……かな」

「どうしたの急に? ステータスオープンってなに…‥なにこれ!?」

急に大声を出されびっくりした。

「大丈夫? お姉ちゃんもなんか出たの?!」

「……うん、なんかゲームみたいな画面が出た。 優奈何か知ってるの?」

「わ、私もよく分からなくて。 1ヶ月前くらいに名前と職業とMPが表示されるようになって、今日になったらステータスが出るようになったの」

「職業? 学生……じゃない。 なに職業"結界師"って私学生だけど?」

お姉ちゃんも出たんだ。
まずはステータスが出たことに一安心。 ってまって、結界師ってなに?!
気になるんだけど。

「その下の方に称号ってでてる? これについて聞きたくて」

「称号? あ、これか。 ……誰?」

「……お姉ちゃんの方にも出てる?」

「うん、ラヴァルザードの孫って出てる」

「私も出てる!! 良かった私だけじゃ無かった」

「待って、父方の祖父母は正道爺ちゃんと佳子婆ちゃん、母方の祖父母は悟爺ちゃんと雅代婆ちゃんだよ? 少なくともこんなハイカラな名前じゃないよ?!」

「だよねだよね!!」

私の思い違いじゃなくて良かった。

「ちょっと今から親の戸籍謄本取りに行ってくる」

「今から?! もう夕方だよ?」

「まだ市役所空いてる時間だし、このままモヤモヤしたのは性に合わないからね、分かったら電話するよ」

「う、うん。 了解」

そう言って電話が切れた。

「私はどうしようかな」

姉が市役所に行って確認してくれるなら私はステータスの確認しようかな?
……忘れてた。 今日はスーパー行かなきゃ! 夕飯の材料が無いや。

いつものところから食費用のお財布を持ち、買わなきゃいけない物が書いてあるホワイトボードの写真を撮り徒歩10分の場所にあるスーパーへ買い出しに行った。

スーパーから帰るともう17時を回っていた。
今日は手抜きデー。 スーパーでお惣菜買ってきちゃった。
常備菜は残ってるし、メインは豚カツ買ってきたし、サラダだけ用意しておこう。
買ってきたレタスとトマトとベビーリーフとツナでサラダを用意し、消耗品を片付けた。

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