異世界で農業をやろうとしたら雪山に放り出されました。

マーチ・メイ

文字の大きさ
2 / 73

プロローグ

しおりを挟む
就職と同時に地元を離れ早10年。

仕事にもだいぶ慣れ、今では後輩を指導する立場だ。ただこの後輩がかなりの問題児だった。

真面目で素直なんだがやる気が空回りし上手く噛み合わない。今回もそうだった。

まず手始めに、先方が困っているようだったので納期を変更したは良いものの、現場へ変更の連絡が漏れてたりだとか、これもまた良かれと思って先方へ提案したは良いものの現場への仕様変更の連絡が漏れてたりだとか、おまけにバックアップミスをしたり、仕舞いには書類の紛失、フォローは出来る方だと自負していたが、流石に血の気が引いた。

修羅場は人を育てるのか俺の指導が間違ってたのか、問題を起こした後輩が二徹目位から覚醒でもしたかのような怒涛の働きぶりで、トライアンドエラーを行いながらも結局納期には間に合った。ビックリした。

朝一でアポを取り頭を下げつつ無事に先方への納品を終えるとそのまま直帰する事を許された。


4日前まではピシッとしていたYシャツはもう見る影もなくヨレヨレだ。
3日間の徹夜となってしまった為、目を閉じたらすぐにでも夢の世界に旅立てるほどの眠気が襲ってくる。
正直立っているのもやっとだが、会社で仮眠を取ってから家に帰るのも億劫だった。
なんとかかんとか耐えて家へ帰ることにした。


ああ……春の爽やかな朝日が身にしみる。
ずっとPCと睨めっこしていた目には眩しすぎた。


眠気を紛らわす為に楽しいことでも考えよう。
家へ帰って一寝入りしてから何をしようか。せっかく明日も休みを貰ったし、どうせなら溜まってたゲームでもやろうか? 農業ゲームで延々と小麦の採取とか。でもこの間もやったしなぁ、今度はジャガイモにしようかな。このストックを延々と貯め続ける作業が楽しいんだよなぁと久々の休日に思いをはせた。




そして、それは起きた。




ソレは今の俺とは対称的な女学生達とすれ違った時だった。




「……ん?ぉおおお?!」


―っきゃ……!!!!――


足元に奇妙な模様が浮かび、眩い光に包まれた。
あまりの眩しさに目を瞑る。


次に来る衝撃に備えて腕で顔を覆った。





……何も……ない?
無音の世界がしばらく続き体に痛みが走る気配もない。
恐る恐る目を開けることにした。



「やほ―」



なんとも気の抜けたトーンと裏腹に聞くものを聞き惚れさせる済んだ声、そこにはプラチナの美しい髪を漂わせた妙齢の美女がにへらと笑って佇んでいた。


これはもしやいわゆる転生か?と寝ぼけた頭で小首を傾げながら美女を見る。あちらの美女も小首を傾げた。


しばし無言で見つめ合うと耐えきれなかったのか美女が口を開いた。


「や―や―そんなにリアクション薄いとこっちも戸惑うよ―」


「あ―……すみません」


「いやいいってことさ―。うんうん。分かるよ―その戸惑う気持ち。今元の世界に戻すからまってて「ちょっと待った!!!」


ビックリしすぎて思わず声が大きくなってしまった。


「うわぁ―びっくり―」


「えっああ、すみません!」


「え?戻して欲しいんじゃないの―?」


「いや…いやいやいや!この状態で戻してくれるんですか!?ってこの流れは異世界に言ってくれって流れでしょう!!」


「ううん。呼ばれた子は一緒にいた学生さんだよ―。君は所謂巻き込まれってやつさ―。え?何?期待しちゃった―?ごめんごめん。でも大丈夫。戻ったら忘れるようにしとくからさ―」


「無駄に親切だな。」

「えへへ」

美女は腰に手を当てて得意げな表情を浮かべていた。次の瞬間にいは真顔になって、そして何かを察したような表情を浮かべ最後はにやにやと笑った。
それを見てこれが世にいう百面相かとのんきに考えていた。


「え?何々?行きたかったの?それなら早く言ってよ―。人数指定なんてないし。はい。じゃ、いってら「ちょっと待った!!!!!」」


「ん?行きたくなかったの―?じゃあ戻「人の話を聞いて頂けないでしょうか?!」」


「ぶ―ぶ―」

漫画のように頬を膨らませブーイングしてくる美女。そういやあなたの名前すら聞いてないんだがと思ったがこの人?相手だと話がまた逸れそうだ。なのでほっておく事にした。そして改めて考えてみる。

この忙しい毎日の中で隙を見ては異世界物のラノベは読んでいた。俺だったらこうしたいとかこんな能力あったらなと空想に浸れる時間は幸せだった。
特にスロ―ライフ物だ。ゲームでコツコツストックを貯めるのも好きだ。異世界でのんびりまったり物を作ったりっていうのにも憧れてはいた。
これはチャンスなのか? はやる気持ちを抑えて聞いてみる。


「これは召喚ですか?転生ですか?」


「召喚だよ―。あちらの世界の住人があの学生さんを呼んだんだ―」


「私も望んだらあちらの世界に行けるって事ですか?」


「行けるよ―。ただ、学生さんたちと一緒だとめんどくさい事になるから、君が行く場合時間と場所を勝手にいじるけどね―。決意は固まったかな―?私はめんどくさくなってきたよ―。決めてくれないならぽいっと戻すよ―。あと、あっちで死んだらこの世界の時間軸の君がここに来た瞬間のあの場所に戻してあげるよ。」


「親切だけど心の声駄々漏れだ!!」


「当たり前じゃないか―。君は今回の召喚に無関係なんだからね。じゃあ今から飛ばすけどなにか要望はあるかな―?」


「ちなみにあちらの世界はどういった世界なんですか?」


「う―んとね―、あの子達が呼ばれたのは、君たちの世界で言う剣と魔法の世界ってやつさぁ。お馴染みだね。あの子達は聖女として呼ばれたんだよ―」


「聖女…」


「だから一緒に行くとめんどくさいでしょ―?」


「そうですね……、そういえば、あっちにはこのままの姿でとばされるんですか?」


「そのままだよ―。なに?なにか変えたいの―?」


「種族の変更とかは可能ですか? できれば長命種とか? あと持ち物に手心を加えて頂けるとありがたいです。」


せっかく異世界に良くならアバタ―感覚で外見を弄りたい。
このままの姿だとラノベ的展開では異世界人丸出しだからな。長命種を希望したのは、せっかくの異世界をゆっくり堪能したいからだ。


「はいはいは―い。そんじゃエルフにしとくね。はい。あと後かには?」


「あと、私はあちらの世界で農業やりたいんです。元の世界では時間に追われる毎日だったので。スローライフのような?のんびりした生活に憧れてるんですが…」


「ほうほう。農業ね―じゃあこんなのはどう?ぱんぱかぱ―ん!謎の袋―」


「謎ってなんですか…」


「これはね―魔力を込めると種が出てくるんだよ―」


「おお、俗に言うチ―トアイテム」


「でしょう―。今なら特別にマスター登録しちゃうよ―」


「あぁ……ありがとうございます。後は………」








――――――――――――――――――――



――――――――――――



――――――
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

「雑草係」と追放された俺、スキル『草むしり』でドラゴンも魔王も引っこ抜く~極めた園芸スキルは、世界樹すら苗木扱いする神の力でした~

eringi
ファンタジー
「たかが雑草を抜くだけのスキルなんて、勇者パーティには不要だ!」 王立アカデミーを首席で卒業したものの、発現したスキルが『草むしり』だった少年・ノエル。 彼は幼馴染の勇者に見下され、パーティから追放されてしまう。 失意のノエルは、人里離れた「魔の森」で静かに暮らすことを決意する。 しかし彼は知らなかった。彼のスキル『草むしり』は、対象を「不要な雑草」と認識すれば、たとえドラゴンであろうと古代兵器であろうと、根こそぎ引っこ抜いて消滅させる即死チートだったのだ。 「あれ? この森の雑草、ずいぶん頑丈だな(ドラゴンを引っこ抜きながら)」 ノエルが庭の手入れをするだけで、Sランク魔物が次々と「除草」され、やがて森は伝説の聖域へと生まれ変わっていく。 その実力に惹かれ、森の精霊(美女)や、亡国の女騎士、魔王の娘までもが彼の「庭」に集まり、いつしかハーレム状態に。 一方、ノエルを追放した勇者たちは、ダンジョンの茨や毒草の処理ができずに進行不能となり、さらにはノエルが密かに「除草」していた強力な魔物たちに囲まれ、絶望の淵に立たされていた。 「ノエル! 戻ってきてくれ!」 「いや、いま家庭菜園が忙しいんで」 これは、ただ庭いじりをしているだけの少年が、無自覚に世界最強に至る物語。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ

天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。 彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。 「お前はもういらない」 ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。 だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。 ――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。 一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。 生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!? 彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。 そして、レインはまだ知らない。 夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、 「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」 「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」 と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。 そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。 理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。 王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー! HOT男性49位(2025年9月3日0時47分) →37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)

異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~

ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。 しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。 やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。 そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。 そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。 これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。

処理中です...