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第三章

249話目

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知らせを聞いて間もなくしてミラーリア家の令嬢であるシャーロット嬢が屋敷にやって来た。


部屋の窓から出迎えに出た執事達を見守る。

護衛に侍女。

それに御令嬢2人。

荷物はどうしたんだ? どこかに宿を取っている?
にしても護衛も侍女も少ないな……。

オーフェンの所によってからこちらに来たにしては疲れが見えない。
この街で数日滞在していたのか?

少なくともここに到着してすぐに来たわけではなさそうだな。

馬車の家紋はミラーリア侯爵家の物だ。
と言う事は少なくともシャーロット嬢は家の者に伝えてから出てるのか?

ドルイット侯爵には通信の魔道具を使用して連絡したがミラーリア侯爵には連絡を行わなった。
ヘルバー商会のこともある。

ミラーリア侯爵の考えが分かるまではあまり情報を与えたくない。
少なくともシャーロット嬢の話を聞いてからでも遅くはあるまい。
そう判断した。


オリヴィアが出て対応し、中へと案内された。
間もなく呼びに来られるな。

その間にオーフェンと御令嬢たちの会話を反芻し、備えた。


応接室の扉を開けると会話が弾んでいるようだった。
私が到着したのを見てシャーロット嬢とエレノア嬢は挨拶を寄越した。

私がオリヴィアの隣に座り、アネットは退室させた。
アネットには渡り人のことをあまり伝えていない。
余計な話を耳に入れたくない。

「シャーロット様、エレノア様、父上が参りましたので失礼致します」

歳よりも小柄なアネットがそう言って退室した。
アネットはまだ9歳だ。
オリヴィアに似て優し気な目元に艶のある濃い茶色で緩やかにウェーブ掛かった髪は腰の長さまである。
のんびりとした性格だが近頃は何でも自分でしたがり、教育も熱心に取り組んでいるようだ。

そんな成果が発揮されたらしい。
小さな子が背伸びして大人のように懸命に振る舞う姿はとても愛らしいかった。

私がデレっとアネットを眺めていたらオリヴィアに太ももをつつかれた。

お嬢様方の前ですよ、と。

コホンと咳ばらいをし、2人へと向き直った。


「遠路はるばるお越しいただき光栄です。 ……して、ミラーリア侯爵家の御令嬢とドルイット侯爵家の御令嬢がどういったご用件でしょう?」

長距離移動の間に幾度となく機会があったにもかかわらず、こちらへ立ち寄る旨の連絡も入れず、ないがしろにする態度に軽く嫌味を入れつつ探りを入れる。

「本当に距離がありまして大変でしたわ。 ですが、こちらのネーアの街は距離がございましても栄えてらっしゃるのですね。 我が侯爵家と比べると可哀想ですが、我が領の街と比べても及第点のお店が多く驚きました。 素晴らしい手腕ですわ」

両手を合わせ、こちらを持ち上げようとしているのか煽ろうとしているのか分からない発言をするシャーロット嬢。

要約すると「辺境だから期待していなかったんですが、まずまずの発展具合ですね、驚きましたわ」 と解釈できる言葉なんだが。 自分の言葉が相手を馬鹿にしている発言だと理解しているのか?

「恐れ入ります。 侯爵家の御令嬢であらせられますシャーロット様にそう褒めて頂けて光栄です」

「私、素直に褒めるべきところは褒めるのですよ。 相手が誰であろうとも敬いなさいと教えられてきましたから」

……これは素なのか?

えへん、と自分の発言に酔うような、圧倒的な上から発言を繰り広げられるシャーロット嬢。
まずはその態度が可笑しいと、ミラーリア侯爵家の家庭教師達は誰も指摘してあげないのか?

私だったら少なくともこんな娘は社交界には出さない。

「光栄です」

当たり障りなくそう返事をした。




「ですが、伯爵家には手に余りましょう?」

「……失礼ですが何に対してでしょうか?」

「こちらに来る前に商業ギルドへ立ち寄らせていただきました。 あちらに設置されている魔道具です、あんな場所に設置するのは勿体ない物です、私がより良い場所へ置いて差し上げます。 もちろんお題はお支払いいたします。 当然のことですもの、宜しいですね」

さも当然と言った様子で話すシャーロット嬢。

「私きちんと商業ギルド長へも話を伺いました。 あちらに設置するよう渡り人へ指示をしたのはブリストウ伯爵だとお伺いいたしました、だから私こちらへ足を運んだんですの」

いたずらっ子のような目をして、私許可を貰いに来れるんですの、きちんと話も聞けるのですよと言わんばかりの自信満々の表情にこちらは困惑しかない。

オリヴィアも表面上は笑顔だが内心呆れて良そうだ。
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