244 / 274
第三章
244話目
しおりを挟む王宮
「橋沼桜には参った」
「正しくは渡り人だな」
時はフォルラーニ侯爵達がブリストウ領へ行った後の話である。
王宮の私の私室にて父であるベルゲマン公爵と話のすり合わせをする。
アルフォートから急な報告があり、予定を空けて人払いし盗聴防止の魔道具を起動させ話をすれば耳を疑うような報告だった。
「この度は急ぎ拝謁の機会を賜りまして誠に感謝致します」
部屋へ入室したアルフォートは片膝をつきそう申し述べた。
「よいよい、して急ぎの用とは?」
ソファーへと座れと指示を出すと表情を硬くしソファーへ腰を下ろす。
「……ご報告遅くなりましたこと誠に申し訳ございません」
「報告?」
そう言うや否や所持したアイテムボックスから何やら魔道具を取り出すアルフォート。
本来であれば登城の際に剣や武器が隠し持てるアイテムボックスは預けられる。
下城する際持ち主に返されるのがしきたりだ。
なのにアルフォートはここまで持ち込んできた。
というのも今回はアルフォートから事前に予定を調整する段階で打診があった為許可をした。
何を持ち込んだのか問う前に、出された魔道具を見て言葉を失った。
それは一見すると単なる門の様であるが門を通して見える景色がこの部屋の景色ではない。
前にも見覚えがある景色……どこで見たのか記憶を遡る。
そしてその記憶を見つけた。
理解しまさかと思いが言葉となり口から零れ落ちた。
「……門? 魔道具……まさか転移門か?」
「はい。 転移門です……本来であればアイテムボックスを預けねばならないのですが、物が物だけに検品するのもはばかれましてこうしてここまで隠し持ってまいりました」
その言葉に肯定の言葉が返って来る。
「……報告はこれだけか? ならばこれは本当に使用に耐える出来なのか?」
動揺を隠すべく表情を取り繕い冷静に勤めようと疑問を口にした。
「片方はすでにブリストウの私の私室に設置されております。 今あちらも人払いが済んでおります。 ご確認致しますか?」
「……参ろう」
先にアルフォートが歩みを進め門をくぐる。
すると門が発光しアルフォートの姿が消えた。
ごくりと喉が鳴る。
深呼吸をし歩みを進めた。
門をくぐる瞬間、何か違和感を感じるかと思いきや何もなかった。
身体が門をくぐり抜けると、部屋の様相は一変していた。
「ようこそ、ブリストウ領へ」
「うむ……」
そのまま窓の方へ歩みを進める。
窓の外には見慣れぬブリストウ領の景色が広がっていた。
「転移門はこれだけか?」
「設置済みの物は現在廃村と領主の館、廃村と渡り人相良の店、廃村と橋沼桜の家、そして領主の館と王宮になります」
「これを知る者は?」
「現在転移門を知る者は私とオリヴィア、長谷川、橋沼桜、開発者の倉敷、菅井、マッヘン、相良、渡り人では冒険者の高梨、冒険者ギルドに勤めている本宮、商業ギルド長のオーフェン、妻の春子になります。 貴族ではつい先日ドルイット侯爵とフォルラーニ侯爵に知られました」
「ドルイット侯爵とフォルラーニ侯爵か。 まず現状それ以上広めることはならん」
「かしこまりました」
「……開発者? これはダンジョンから出土した物ではないのか?」
「いえ、魔道具を作る魔法を持っている倉敷主導で作成された魔道具です」
「レシピ産か!! なるほど……なるほどな」
魔道具を作製する魔法は過去にも存在した。
魔法によって作られる魔道具は、過去の魔道具を研究して作る魔道具職人では作り出せない物も作り出せてしまう。
魔法を使用する者の願いが具現化されるからだ。
過去のレシピを解読し組み合わせを変えて進化させる魔道具ではなく、魔法の力が必要な回路を作るからだ。
ただそれにも欠点がある。
必要な素材を集めなければならない。
途方もない願いを叶えるためにはそれ相応の素材が必要になる。
現物を集められなければ術者の魔力が消費される。
その為、魔道具を作製する魔法を持つ者は異世界の物を取り寄せする者よりも早くにあちらの世界に帰っていった。
それが……出会ってしまったのか……。
64
お気に入りに追加
880
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした
高鉢 健太
ファンタジー
ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。
ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。
もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。
とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~
雪月夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
他作品の詳細はこちら:
『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】
『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】
『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
外れスキル『収納』がSSS級スキル『亜空間』に成長しました~剣撃も魔法もモンスターも収納できます~
春小麦
ファンタジー
——『収納』という、ただバッグに物をたくさん入れられるだけの外れスキル。
冒険者になることを夢見ていたカイル・ファルグレッドは落胆し、冒険者になることを諦めた。
しかし、ある日ゴブリンに襲われたカイルは、無意識に自身の『収納』スキルを覚醒させる。
パンチや蹴りの衝撃、剣撃や魔法、はたまたドラゴンなど、この世のありとあらゆるものを【アイテムボックス】へ『収納』することができるようになる。
そこから郵便屋を辞めて冒険者へと転向し、もはや外れスキルどころかブッ壊れスキルとなった『収納(亜空間)』を駆使して、仲間と共に最強冒険者を目指していく。
あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~
深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公
じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい
…この世界でも生きていける術は用意している
責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう
という訳で異世界暮らし始めちゃいます?
※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです
※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています
勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。
八木愛里
ファンタジー
聖女のロザリーは戦闘中でも回復魔法が使用できるが、勇者が見目麗しいソニアを新しい聖女として迎え入れた。ソニアからの入れ知恵で、勇者パーティから『役立たず』と侮辱されて、ついに追放されてしまう。
パーティの人間関係に疲れたロザリーは、ソロ冒険者になることを決意。
攻撃魔法の魔道具を求めて魔道具屋に行ったら、店主から才能を認められる。
ロザリーの実力を知らず愚かにも追放した勇者一行は、これまで攻略できたはずの中級のダンジョンでさえ失敗を繰り返し、仲間割れし破滅へ向かっていく。
一方ロザリーは上級の魔物討伐に成功したり、大魔法使いさまと協力して王女を襲ってきた魔獣を倒したり、国の英雄と呼ばれる存在になっていく。
これは真の実力者であるロザリーが、ソロ冒険者としての地位を確立していきながら、残念ながら追いかけてきた魔法使いや女剣士を「虫が良すぎるわ!」と追っ払い、入り浸っている魔道具屋の店主が実は憧れの大魔法使いさまだが、どうしても本人が気づかない話。
※11話以降から勇者パーティの没落シーンがあります。
※40話に鬱展開あり。苦手な方は読み飛ばし推奨します。
※表紙はAIイラストを使用。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる