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第三章
243話目
しおりを挟むアルフォートの館
「ヘルバー商会か」
「はい。 お客様の要望を叶えるために来たとおっしゃってました」
ラルフという青年がギルドから立ち去った後すぐさま手紙を書き領主であるアルフォート様に連絡を入れた。
流石に今日の今日ではアポイントが取れなかったため数日後に面会の予約が取れた。
そして今日である。
屋敷へ到着すると執事に案内され応接室へ通された。
続いてメイドがお茶を運びすぐさま退室する。
それからしばらくして領主であるアルフォート様がやって来た。
ソファーの前に立ち頭を下げ挨拶の口上を述べる。
頭を上げてソファーへ座れと言われてソファーへと腰を下ろす。
「それで急用とは?」
ラルフという青年の発言を報告するとアルフォート様はふむと頷き考えるそぶりを見せた。
そして冒頭へつながる。
「……確かにミラーリア家ご用達の商会だな。 商会紋は正規の物だったのか?」
「そちらは確認いたしました。 ギルドに保管されている物と照らし合わせまして正規の物と判断いたしました」
「そうか」
「……いかがいたしましょう」
「私の名を出して構わない。 断りを入れてくれ」
「宜しいんでしょうか?」
「あぁ」
すぐさま判断を下すアルフォート様。
仮にも相手は侯爵家の後ろ盾をちらつかせている。
そんな相手に真っ向勝負をするのだろうか?
「ではギルドに来るよう伝えてそう申し述べます」
「それからオーフェン。 ミラーリア侯爵領を根城にしている商会のリストはあるか?」
「ギルドに保管しておりますが……」
「帰り次第控えを提出してくれ。 そしてそのリストにある商会がもし接触して来たらこちらに知らせてくれ」
「かしこまりました」
手短に会談を終えると商業ギルドへと舞い戻った。
オーフェンの帰宅後
「次はミラーリア侯爵家か」
「ミラーリア侯爵家からは渡り人の回復を頼まれなかったのか?」
盗聴防止の魔道具を設置。
現在この室内には私と長谷川のみだ。
「頼まれなかった。 ……というかミラーリア家には現在渡り人はいないはずだからな」
「そうなのか?」
「あぁ……だから頼まれなかったではなく、頼む必要が無かったというのが正確なところかな」
「珍しい家もあるんだな」
「おまけにあの家は治癒も教会に頼んでるくらいだ。 今回自販機を所望するとは思えないんだがな……」
「ヘルバー商会が勝手に名を使っていると?」
「そうかもしれないが、本当に欲しがっているのかもしれない。 勝手に名を使って渡り人の商品を手に入れようとしているのが侯爵家にバレたら危険なのも分かっているはずだ。 まずは私の名で断りを入れてその後の対応をみる」
「侯爵家が何も言ってこなかったらヘルバー商会が勝手にやっていると判断するのか?」
「他領でそんなことをしでかしていると報告はするさ。 だがそうなることもヘルバー商会には分かり切ったことだと思うんだがな」
かといってミラーリア侯爵が本当に渡り人の商品を欲しているかと聞かれれば首をかしげてしまう。
あの家と渡り人、正しくは先代と渡り人は根が深い確執がある。
魔力を回復すると言って掌返しするとも思えないんだがな。
となると令嬢の方が一枚かんでいるのか踊らされているのか。
「長谷川」
「ん?」
「ラルフとか言う青年の動向を探ってくれ」
「えー俺はビール三昧から離れたくない」
「少しは働け!! 知ってるんだぞ。 あの廃村で昼間から護衛と称して桜につまみ出させビール三昧しているのを!!」
「誰だ密告したのは!!」
「お前だお前。 この間も戻って来た時ビール臭かったの忘れたか」
「ん? ……あーポーション飲み忘れた時のか」
「ほら飲んでるんじゃないか。 いいからちゃんと調べておけ」
「はいはい、分かりました」
あっさりと口を割る長谷川に呆れてしまった。
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