243 / 274
第三章
243話目
しおりを挟むアルフォートの館
「ヘルバー商会か」
「はい。 お客様の要望を叶えるために来たとおっしゃってました」
ラルフという青年がギルドから立ち去った後すぐさま手紙を書き領主であるアルフォート様に連絡を入れた。
流石に今日の今日ではアポイントが取れなかったため数日後に面会の予約が取れた。
そして今日である。
屋敷へ到着すると執事に案内され応接室へ通された。
続いてメイドがお茶を運びすぐさま退室する。
それからしばらくして領主であるアルフォート様がやって来た。
ソファーの前に立ち頭を下げ挨拶の口上を述べる。
頭を上げてソファーへ座れと言われてソファーへと腰を下ろす。
「それで急用とは?」
ラルフという青年の発言を報告するとアルフォート様はふむと頷き考えるそぶりを見せた。
そして冒頭へつながる。
「……確かにミラーリア家ご用達の商会だな。 商会紋は正規の物だったのか?」
「そちらは確認いたしました。 ギルドに保管されている物と照らし合わせまして正規の物と判断いたしました」
「そうか」
「……いかがいたしましょう」
「私の名を出して構わない。 断りを入れてくれ」
「宜しいんでしょうか?」
「あぁ」
すぐさま判断を下すアルフォート様。
仮にも相手は侯爵家の後ろ盾をちらつかせている。
そんな相手に真っ向勝負をするのだろうか?
「ではギルドに来るよう伝えてそう申し述べます」
「それからオーフェン。 ミラーリア侯爵領を根城にしている商会のリストはあるか?」
「ギルドに保管しておりますが……」
「帰り次第控えを提出してくれ。 そしてそのリストにある商会がもし接触して来たらこちらに知らせてくれ」
「かしこまりました」
手短に会談を終えると商業ギルドへと舞い戻った。
オーフェンの帰宅後
「次はミラーリア侯爵家か」
「ミラーリア侯爵家からは渡り人の回復を頼まれなかったのか?」
盗聴防止の魔道具を設置。
現在この室内には私と長谷川のみだ。
「頼まれなかった。 ……というかミラーリア家には現在渡り人はいないはずだからな」
「そうなのか?」
「あぁ……だから頼まれなかったではなく、頼む必要が無かったというのが正確なところかな」
「珍しい家もあるんだな」
「おまけにあの家は治癒も教会に頼んでるくらいだ。 今回自販機を所望するとは思えないんだがな……」
「ヘルバー商会が勝手に名を使っていると?」
「そうかもしれないが、本当に欲しがっているのかもしれない。 勝手に名を使って渡り人の商品を手に入れようとしているのが侯爵家にバレたら危険なのも分かっているはずだ。 まずは私の名で断りを入れてその後の対応をみる」
「侯爵家が何も言ってこなかったらヘルバー商会が勝手にやっていると判断するのか?」
「他領でそんなことをしでかしていると報告はするさ。 だがそうなることもヘルバー商会には分かり切ったことだと思うんだがな」
かといってミラーリア侯爵が本当に渡り人の商品を欲しているかと聞かれれば首をかしげてしまう。
あの家と渡り人、正しくは先代と渡り人は根が深い確執がある。
魔力を回復すると言って掌返しするとも思えないんだがな。
となると令嬢の方が一枚かんでいるのか踊らされているのか。
「長谷川」
「ん?」
「ラルフとか言う青年の動向を探ってくれ」
「えー俺はビール三昧から離れたくない」
「少しは働け!! 知ってるんだぞ。 あの廃村で昼間から護衛と称して桜につまみ出させビール三昧しているのを!!」
「誰だ密告したのは!!」
「お前だお前。 この間も戻って来た時ビール臭かったの忘れたか」
「ん? ……あーポーション飲み忘れた時のか」
「ほら飲んでるんじゃないか。 いいからちゃんと調べておけ」
「はいはい、分かりました」
あっさりと口を割る長谷川に呆れてしまった。
33
お気に入りに追加
774
あなたにおすすめの小説
辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~
雪月 夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
他作品の詳細はこちら:
『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】
『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】
『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】
異世界で農業をやろうとしたら雪山に放り出されました。
マーチ・メイ
ファンタジー
異世界召喚に巻き込まれたサラリーマンが異世界でスローライフ。
女神からアイテム貰って意気揚々と行った先はまさかの雪山でした。
※当分主人公以外人は出てきません。3か月は確実に出てきません。
修行パートや縛りゲーが好きな方向けです。湿度や温度管理、土のphや連作、肥料までは加味しません。
雪山設定なので害虫も病気もありません。遺伝子組み換えなんかも出てきません。完璧にご都合主義です。魔法チート有りで本格的な農業ではありません。
更新も不定期になります。
※小説家になろうと同じ内容を公開してます。
週末にまとめて更新致します。
日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊
北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。
こちらの世界でも図太く生きていきます
柚子ライム
ファンタジー
銀座を歩いていたら異世界に!?
若返って異世界デビュー。
がんばって生きていこうと思います。
のんびり更新になる予定。
気長にお付き合いいただけると幸いです。
★加筆修正中★
なろう様にも掲載しています。
おもちゃで遊ぶだけでスキル習得~世界最強の商人目指します~
暇人太一
ファンタジー
大学生の星野陽一は高校生三人組に事故を起こされ重傷を負うも、その事故直後に異世界転移する。気づけばそこはテンプレ通りの白い空間で、説明された内容もありきたりな魔王軍討伐のための勇者召喚だった。
白い空間に一人残された陽一に別の女神様が近づき、モフモフを捜して完全復活させることを使命とし、勇者たちより十年早く転生させると言う。
勇者たちとは違い魔王軍は無視して好きにして良いという好待遇に、陽一は了承して異世界に転生することを決める。
転生後に授けられた職業は【トイストア】という万能チート職業だった。しかし世界の常識では『欠陥職業』と蔑まされて呼ばれる職業だったのだ。
それでも陽一が生み出すおもちゃは魔王の心をも鷲掴みにし、多くのモフモフに囲まれながら最強の商人になっていく。
魔術とスキルで無双し、モフモフと一緒におもちゃで遊んだり売ったりする話である。
小説家になろう様でも投稿始めました。
【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~
みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】
事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。
神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。
作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。
「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。
※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。
クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される
こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる
初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。
なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています
こちらの作品も宜しければお願いします
[イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]
転生したアラサーオタク女子はチートなPCと通販で異世界でもオタ活します!
ねこ専
ファンタジー
【序盤は説明が多いので進みがゆっくりです】
※プロローグを読むのがめんどくさい人は飛ばしてもらっても大丈夫です。
テンプレ展開でチートをもらって異世界に転生したアラサーオタクOLのリリー。
現代日本と全然違う環境の異世界だからオタ活なんて出来ないと思いきや、神様にもらったチートな「異世界PC」のおかげでオタ活し放題!
日本の商品は通販で買えるし、インターネットでアニメも漫画も見られる…!
彼女は異世界で金髪青目の美少女に生まれ変わり、最高なオタ活を満喫するのであった。
そんなリリーの布教?のかいあって、異世界には日本の商品とオタク文化が広まっていくとかいかないとか…。
※初投稿なので優しい目で見て下さい。
※序盤は説明多めなのでオタ活は後からです。
※誤字脱字の報告大歓迎です。
まったり更新していけたらと思います!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる