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第三章
233話目
しおりを挟む王都商業ギルド
「ええい、どういうことだというのだ!?」
ブリウスト領の商業ギルドへ連日連絡を入れ、オーフェンへ圧力をかけているにも拘らず、当のオーフェンと言えばのらりくらりと話をはぐらかし一向に渡り人をこちらに寄越すそぶりを見せない。
そればかりか貴族連中が儂のところへブリウスト領の様子を探る問い合わせが殺到している。
その内容が自販機とかいう魔道具ではなく、取り寄せを行っている渡り人について、に変わってきておる。
それと同時に聞かれるのが橋沼桜という渡り人についてだ。
橋沼桜? 聞いたことのない渡り人だが……それが一体なんだというのだ?
今までだったら渡り人の名前などどうでもよく、『取り寄せできる渡り人』 の情報を寄越せと言ってきていたというのに。
逆に貴族たちから情報を得ようと、問い合わせしてきた貴族に対し、平身低頭機嫌を伺いつつ橋沼桜について逆に質問をしてみても言葉を濁して逃げられてしまう。
まるで言質を取られぬようにしているようだ。
これが1人2人なら気に入った魔法を持った渡り人なのだなと流せる。
だが、かれこれ十数人にも同じような内容を問われると胃の腑に何とも言えぬ不快感が押し寄せてくる。
……儂の知らぬところで何かが起こっている。
そう感じせずにはいられなかった。
「……誰かおるか」
「お呼びでしょうか」
「ブリウスト領の首尾はどうだ」
「潜入させてるものが数名おります。 間もなく定刻連絡の時間です」
「連絡が入り次第すぐに報告を寄越せ。 後、橋沼桜について探りを入れさせろ」
「かしこまりました」
使用人を下がらせると通信の魔道具を手に取った。
「オーフェンめ……もう良い。 別の者に変えてやる」
この儂に反意を反旗を抱くならそれ相応の報いを受けさせねばならぬな。
息の掛かった他方の商業ギルドへ連絡を入れ根回しを始める。
ブリストウ領近郊のギルドで渡り人が素通りしお金が落ちない場所へと。
「内容はそうよのう……ブリウスト領に来る渡り人に嘘を吹聴し悪意を持って寄らせないようにしている。 証拠が見つかった……とでも言っておくかのう」
周りから締め上げ、責任を取らせその椅子から蹴落としてくれるわ。
数時間後……。
橋沼桜が自販機の持ち主……?
取り寄せ魔法を使える渡り人が橋沼桜?
だから貴族たちは自販機よりも大元の橋沼桜に関して情報を得ようとしていたというのか?
……これだけでは何とも言えぬの。
それならばなぜ貴族ははぐらかしてきたのだ?
いつもならば名指しで確保しろと言ってくるのに。
うーむ……。
わからん。
どうせオーフェンの奴を蹴落とすついでだ。
献上しないのならば奪うまで。
貴族どもの関心の高い渡り人を捕らえたとなれば、儂の評価もあがるはず。
子飼いの者共に連れてこさせるとするか。
これからの事に思いをはせ顔をにやけさせた。
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