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第三章

232話目

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灯里が冒険者ギルドで自販機で販売されている事務用品や、こちらの世界で購入した事務用品を使用するって話はしていた。

どうやら冒険者ギルドに来た人たちの目に、特に材料を取って来てもらう依頼をしに来た職人さん達の目に留まったらしい。

灯里はその話を商人ギルドに持って行ってくださいと話を流して、春子さんへ情報を流したみたい。

「あぁ、その話ね」

春子さんも話を受けて商品の見本をいくつか貸し出ししたらしい。
職人さん達も商業ギルドへ小まめに通い制作過程やアドバイスをしているそうだ。

だが、どうやらその職人さん達が増えて行ったようだ。

元々自販機で販売している物は割高だ。
元々の世界の100円が1万円の価値になっている。
クリップなんて箱で400円で売られている物が自販機価格だと4万円だ。

それが冒険者ギルドで便利に使われているとあって、作製したら儲けられるんじゃないかと思う職人が増えたらしい。

日に日にアドバイスを求める人が増えて行き、相談に乗ってもらおうにも順番待ちが大変らしい。
それで同じ渡り人で実際に使っている灯里にもアドバイス乗ってくれないかと声が掛かったみたい。

「ただ事務用品を使用している、冒険者ギルド所属の私が相談に乗っても良い物なのか、ちょっと話を聞きたくて……」

「商業ギルドは職人ギルドと提携してるからね。 灯里さんが入るなら職人さん達からアドバイス料が必要になるかもしれないわ。 冒険者ギルドと職人ギルドでアドバイス料に関して商品開発の分は入ってないだろうから」

「アドバイス料?! そんなこと聞きたかったわけじゃ……」

アドバイス料と聞いて灯里が分かりやすく狼狽えた。

「必要なお金よ? だって開発出来たら職人さん達かなり儲かるわよ?」

「だって元々の商品は桜が用意したもの……」

「私だって他の人の商品を売ってるだけだよ?」

私と春子さんは畳みかけた。

「……灯里さん。 別にお金をもらうだけがアドバイス料じゃないわよ? 品物を完成してもらって完成品で貰ったらいいんじゃないかしら? 事務用品使うでしょ」

「使うけど、そうじゃなくて……!!」

灯里が慌ててる。
その様子がなんだかおもしろくてついついからかってしまう。

「そうじゃなくて? なら私が払おうか? アドバイス料」

「それは止めておいた方が良いわよ。 色々手続きが面倒になるわ。 まずどこからどこまでアドバイスするのか、どうやってそれを決めるのか、職人さんから不満が出たらどうするのか、今のところ桜さんが表立って出るわけにいかないでしょ。 曖昧になって不和のもとになりかねないわよ」

「「ぐっ」」

調子に乗ったら春子さんにくぎを刺された。

「こうしましょう。 職人と灯里さんの間に商業ギルドが入るわ。 商業ギルドから手間賃を払うので何か職人が相談を持ち掛けたら灯里さんの出来る範囲で応じてあげて」

「わ、分かりました」

「春子さん、私も何かお支払いした方が良いんじゃないですか?」

「桜さんはノータッチで。 これは商人ギルドと職人ギルドで完結させた方が良いわ。 そこに桜さんが入ると桜さんにもお金の流れが発生してしまうわ。 それはいらないでしょ?」

「逆に私にお金の流れが出来るんですか?」

「元々商品を売ってるのは桜さんですもの。 特許は登録してあるし講座も作ってあるわ。 だから完成して売り上げに応じて手数料が入るわよ」

「え? 口座?」

「当たり前でしょう。 元々こちらにはない技術なんですもの。 特許登録はしてあります」

「……ならそこから試作品用に金銭で貸し出ししてもらえませんか? 商品開発するにも材料は必要でしょうし……もちろん手数料として商業ギルドにはいくらか納めさせてください」

「……うーん、そこら辺はオーフェン交えての方が良いかもしれないわね」

そうしてお風呂から上がるとオーフェンさんを交えて日本の商品開発に関する案を出し合うことになった。


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