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第三章
231話目
しおりを挟む廃村
「桜ちょっと話があるんだけどいいかな?」
「どうしたの灯里?」
この日は夕方に仕事終わりの灯里が訪ねてきた。
明日は休みだというのでせっかくだから温泉にでも行くことに。
ついでに春子さんを誘えば二つ返事で行くと返事が返って来た。
春子さんが来る間に灯里と二人で宿を決めることにした。
「どこに行こうかな?」
「今回は温泉メインの純和風な旅館とかにしない?」
「いいね」
最近は大人数や接待が多かった。
たまには隠れ家的な温泉につかってのんびりするのも良さそう。
そう思い、今回はノスタルジックな温泉に決めた。
転移門を利用し春子さんとオーフェンさんがやって来た。
「遅くなってごめんなさいね」
「いえいえー。 じゃあさっそく行きますか」
そう言ってみんなで今日の宿へと移動した。
「ちと狭いのう」
開口一番マッヘンさんがそう言う。
それを菅井さんと相良さんが肘で小突く。
確かに今日の宿はフロント……帳場が狭い。
私と灯里、春子さんとオーフェンさん、マッヘンさん、倉敷さん、菅井さん、相良さん、長谷川さん、高梨さん。
10人もいればぎゅうぎゅう詰めになってしまった。
帳場の下の壁や旅館の壁のところどころが土壁で出来ており、歴史を感じる。
土壁のしたは汚れやすいのに綺麗に保たれており、清潔感がある。
記帳を済ませると部屋に案内された。
私たちは2人部屋。
マッヘンさん達は5人で泊まれる部屋だ。
ゲームを所望されたから寝ないでゲームするのだろう。
部屋の扉を開け灯里と早速探検する。
部屋に入って左の棚には動物の人形が飾ってある。
可愛い。
靴を脱いで揃える。
靴箱に仕舞うと代わりにスリッパを出しておいた。
「洋風のおしゃれな部屋も素敵だけど、こういう趣のある和室も私好きだな」
「本当だね」
板張りの床を進み、襖を開ける。
そこは4帖ほどのスペースとなっており、脚の低いテーブルと座布団が置かれている。
その向こうにも襖がある。
灯里と一緒に歩みを進め私が左側、灯里が右側の襖に手をかけ、せーので開けた。
開け放った部屋は6帖の寝室となっており、すでに布団が敷かれていた。
ここには布団の他にテレビが置かれている。
さらに奥には障子があった。
障子の奥には外の山々を眺めるための椅子が対でおかれている。
冷蔵庫やケトルはここに置いてあった。
「素敵だね」
「そうだね」
まだ夕食までには時間がある。
二人で椅子に座って景色を眺めた。
夕食を取り終えると春子さんを誘って温泉へ。
露天風呂は石で出来ており湯の色は白濁し漬かると湯の花が舞っていた。
初夏の緑と白がコントラストで映える。
硫黄の香りがたまに吹く風で消され森の木々の匂いが香る。
「気持ちいいね」
「本当ね」
「露天風呂付きの部屋も良いけど、やっぱり広い露天風呂も良いね」
「うんうん!!」
3人並んで風景を見ながら腰を下ろした。
「ねぇねぇ、桜」
「ん? どうしたの灯里」
「話なんだけどさ……」
「あぁ、そう言えば話があるって言ってたね」
風景を楽しんでいたら灯里から話が切り出された。
「私はお邪魔かしら?」
「春子さんも居てください!!」
お湯から上がろうとする春子さんを灯里が引き止める。
「そう?」
「それで話って?」
「えーっとね……」
そこで灯里が切り出したのは事務用品のことだった。
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