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第三章
218話目
しおりを挟む「陛下から手紙だと?」
全貴族に対し手紙が届いた同日、ブリウスト領のアルフォートには別の手紙も届いた。
「こちらです」
手渡された手紙。
封蝋も王家の紋だ。
ペーパーナイフを手に取り封を開ける。
中に入っていたのは1枚の便箋。
そこには陛下からの依頼が書き記されていた。
廃村
「依頼ですか?」
廃村でひっそりのんびりと、あちらとこちらを行き来きして楽しんでいたらアルフォート様がやって来た。
「あぁ、陛下から桜へ依頼があった。 これがその手紙だ。 読んでくれ」
そう言ってテーブルの上に封が開けられた手紙が置かれた。
ちらりとアルフォート様を伺い見つつ、その手紙に手を伸ばした。
手紙の中から便箋を一枚取り出す。
その便せんには、ある渡り人の魔力の回復依頼が書かれていた。
「……あの……これは?」
「見ての通り、回復依頼だ。 まずはそうだな……そうなったいきさつを話そう」
そう言って今私が置かれてる現状について話がなされた。
上級貴族についての説明、国内貴族への手紙、自販機の噂の広まり等。
聞いていて廃村に引きこもってて良かったと、心底思った。
「えっと……それで上級貴族でしたっけ? そこで保護されている渡り人なんですか? この2人」
「そうなる。 日付はこちらの都合に合わせるとあった。 無理強いはしないが……今後の為できれば受けてほしい」
そう真剣な表情でアルフォート様に言われる。
アルフォート様には間に入ってもらって助かっているので受けるのはやぶさかではない。
「良いですけど……回復方法まで伝えたんですか?」
「そこはぼかしてある。 陛下からの説明も『桜が渡り人の魔力を回復した』 としか言っていない。 私も『桜が魔法で回復した』 としか伝えてない」
「そうなんですね。 ならあちらに行けることは隠した方が良いんですか? 私としては久しぶりの日本を楽しんでほしいと思うんですが」
「……こちらの希望として、まだそれは避けてほしい。 回復するだけでも反響が大きい。 落ち着くまで公表は差し控えたい思惑がある」
「それは陛下も同じお気持ちで?」
「憶測だがな」
「……なら分かりました。 渡り人と会う場所はここですか? それともアルフォート様の館ですか? ……まさか王都?」
「会うとしたら私の館だ。 ここはまだ秘密にしておきたいのと、桜の顔をあまり広めたくない。 桜が騒がれたいなら別だがな」
にやりと笑うアルフォート様。 私は騒がれたくない派ですと首をぶんぶん横に振った。
「遠慮しておきます。 アルフォート様の館でお願いします。 ……話は戻りますが、どうやって連れて行きますか? ばれない様にするなら最低目隠しと耳栓が必要ですよ?」
「耳栓もか?」
「はい。 あのロビーざわめき、フロントでの対応はこちらと違いますので音声で何か気づかれるかもしれません」
「それは……そうだな。 用意してもらってもいいか?」
「分かりました。 それと当日誘導するのは私と長谷川さんの他にもう2名くらい欲しいんですが……」
「誘導?」
「はい、流石に目隠し耳栓した人を誘導しながら受付するのは大変なので……」
「それはそうか……。 となるとここに通い詰めている者の中からの方がありがたいな……」
「ちょっとアルバイトしてもらえないか頼んでみます。 と、その前にこの渡り人って女性ですか男性ですか?」
「どちらも男性だ」
「なら補助も男性の方が良いですね。 聞いてみます」
菅井さんや相良さん、高梨さん辺りに聞いてみようかな。
頭の中に思い浮かべ頷いた。
「助かる」
「こちらもいつもありがとうございます。 日時決まったら教えてください」
「分かった」
アルフォート様は話が済むとすぐに領主の館へと帰っていった。
私は早速菅井さん達にアルバイトの話を持って行った。
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