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第三章

204話目

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廃村

陛下達と〝日本〟 旅行に行ってから数日後。

「今日は来てくれてありがとうございます」

「いや、私もそろそろ話を進めなければと思っていたので丁度良かった」

「商品の相談だったわね」

幌馬車の中、オーフェンさんと春子さんに来てもらった。
本当なら私が商業ギルドに赴けば良いのだが、長谷川さんにオーフェンさんのアポ取って来てやると言われ最初は断ったのだがいいからいいからと押し切られた。
そして帰って来たなと思ったらオーフェンさんと春子さんがついてきていた。

アポとはいったい。

そう思ったが言葉に出さずに飲み込んだ。

「そうです、商品の相談です。 倉敷さんに頼んでた自販機がそろそろ完成しそうだと教えてもらったのでそれに入れる商品を一緒に考えて頂きたいんです」

「自販機?」

「作ったの?!」

私の言葉に驚いた様子の春子さんとピンときていないオーフェンさん。
春子さんが、あちらの世界にあったお金を入れると飲み物が出てくる機械のことよとオーフェンさんに教えると、あぁ、と納得したような様相になった後、作った事実に驚愕していた。

「作ってもらっちゃいました。 商品は自販機一つに付き20個の登録が可能だそうです。 商業ギルドにいくつか置きたいのですが、どれくらい場所お借りできますか?」

「あ……あぁ、どれくらいの大きさか見せてもらえないだろうか」

「分かりました」

そう言って二人をマッヘンさんと倉敷さんの下に案内した。

小屋に向かいドアをノックする。

「開いとるぞー」

マッヘンさんから返答がありドアを開け小屋の中に入る。

そこには背丈が160cmくらいの大きさの自販機があった。
現在最終調整中のようで机の上には部品や道具、タブレットやお試し用の商品、お金等が散らばっている。

「あー桜か。 なんだ?」

「オーフェンさんが大きさを確認したいというので連れてきました。 見ても良いですか?」

「触らなければいいぞ」

「ありがとうございます」

倉敷さんから許可を貰ったので二人と共に近づき確認する。
倉敷さんはタブレットを手に持ち商品の登録、補充作業をしているようだ。
目の前でアイテムボックスに入れるようにして商品が消えていく。

「まんま自販機ね」

「結構大きいですね」

春子さんはぐるりと自販機の周りを一周周った。

「これ……電源はどこから取るの? 商品の補充も……鍵が無いわね」

「あぁ、これは魔石から電源取ってる。 こっちが本体だ、ここに魔石をはめ込めば遠隔でサブ器の自販機も動く」

そう言って倉敷さんは春子さんに商品を補充し終えたタブレットを見せた。
タブレットの裏側に確かに魔石がある。
タブレットを渡した倉敷さんは自販機にお金を入れちゃんと作動するかの確認作業に入った。

「カード……じゃなくて魔石なの? これ」

「随分薄い……こんな加工見たことが無いぞ」

「鋼オリジナルの魔石じゃぞ。 鋼以外はおそらく作れん」

春子さんとオーフェンさんが驚いている。
そんな二人に対し鋼さんの自慢を始めるマッヘンさん。

薄いカード型の魔石。 確かにふつうも魔石だとタブレット自体が薄いから邪魔になっちゃう。
だからと言ってカード型にしちゃうなんて。
マッヘンさんの自慢したい気持ちが分かる。

「取り外してみてもいいかしら?」

「駄目だ。 ……桜に登録してもらってるからそっちから貰え。 それは今使用中だ」

自販機から目をそらさずにそう言う倉敷さん。

「分かったわ。 桜さん出してもらえるかしら?」

「良いですよ」

そう言って魔法で取り寄せて二人にそれぞれ手渡した。

「……凄いわね」

「こちらの職人では無理ですね」

それぞれから感想が述べられる。
硬いから作るならおおよその形を作ってやすりで削るとかかな?
ん? でも魔道具のインクには使用されてるんだよね? 溶かしてなかったっけ?

「よし……桜、これ登録してくれ」

そんなことを考えようとしたら倉敷さんから声が掛かり思考を切り替えた。

「調整終わったんですか?」

無事に登録された商品が出てくることを確認出来たみたい。

「あぁ」

「分かりました」

そう言ってお金を渡し登録し、新しく取り寄せる。
調整に使ってた自販機の横に置いた。

「……使ってみてもいいですか?」

「いいぞ、……あ、待て。 登録情報の削除をしてからだ。 消すの忘れてた」

「本当だ。 さっき登録してた商品が残ってる」

「その場合……ちょっと貸してみろ」

そう言って私がいじっていたタブレットを倉敷さんが持って行く。
手早く初期化され戻って来た。

「これで良し。 使ってみろ」

「ありがとうございます」

さて、何を登録しようかな? お試しに食べ物にしちゃおう。 ファストフードの自販機。
そう思いついてハンバーガーやテリヤキバーガー、季節限定のハンバーガー、ポテトと言ったサイドメニューや飲み物、デザートなんかを登録してみた。 金額は一律100円、値段設定はお試しの今は適当だ。
魔法で取り寄せて自販機に詰め込んでいく。
各10個ほど入れてふと疑問に思う。

「……倉敷さん、これって何個まで補充できるんですか?」

「あー……限界は調べてなかったな、よし。 桜限界まで入れてみろ」

「はーい」

魔力はたっぷりある。
次々に取り寄せては補充していく。

「これって時間停止の魔法付きですよね」

「そうだ」

「ラジャー」

そうして次々に放り込んでいった。

「……桜さん、今ハンバーガー何個目?」

「……えーっと……352個目です」

「……そう」

黙々と投入していく。
倉敷さんを始め皆最初は興味津々に見ていた。
だけど延々と終わらない作業に飽きが見受けられるようになった。

「……桜」

そんな中倉敷さんに声をかけられた。

「なんですか?」

「後で報告を待ってる」

そう言って倉敷さんは外に行ってしまった。

「そうね、私達も後で結果を聞くわね。 焦らせたら申し訳ないもの」

「そうですね、私たちは一度商業ギルドに戻りますか、難題も設置するとなったら配置を考えねばなりませんね」

「そうね。 桜さんまた夕方に来るわね」

それを皮切りに次々と離脱者が増えた。

「えっ?! 私一人残していくんですか?!」

「桜……」

「……マッヘンさんは残ってくれるんですよね」

ついに最後の一人のマッヘンさんにまで声をかけられた。

「すまん」

そして一人取り残されてしまった。
調べた結果一つに付き999個まで補充が可能だった。

夕方戻って来たオーフェンさん達からは3台までなら配置可能と教えてもらった。
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