204 / 274
第三章
204話目
しおりを挟む廃村
陛下達と〝日本〟 旅行に行ってから数日後。
「今日は来てくれてありがとうございます」
「いや、私もそろそろ話を進めなければと思っていたので丁度良かった」
「商品の相談だったわね」
幌馬車の中、オーフェンさんと春子さんに来てもらった。
本当なら私が商業ギルドに赴けば良いのだが、長谷川さんにオーフェンさんのアポ取って来てやると言われ最初は断ったのだがいいからいいからと押し切られた。
そして帰って来たなと思ったらオーフェンさんと春子さんがついてきていた。
アポとはいったい。
そう思ったが言葉に出さずに飲み込んだ。
「そうです、商品の相談です。 倉敷さんに頼んでた自販機がそろそろ完成しそうだと教えてもらったのでそれに入れる商品を一緒に考えて頂きたいんです」
「自販機?」
「作ったの?!」
私の言葉に驚いた様子の春子さんとピンときていないオーフェンさん。
春子さんが、あちらの世界にあったお金を入れると飲み物が出てくる機械のことよとオーフェンさんに教えると、あぁ、と納得したような様相になった後、作った事実に驚愕していた。
「作ってもらっちゃいました。 商品は自販機一つに付き20個の登録が可能だそうです。 商業ギルドにいくつか置きたいのですが、どれくらい場所お借りできますか?」
「あ……あぁ、どれくらいの大きさか見せてもらえないだろうか」
「分かりました」
そう言って二人をマッヘンさんと倉敷さんの下に案内した。
小屋に向かいドアをノックする。
「開いとるぞー」
マッヘンさんから返答がありドアを開け小屋の中に入る。
そこには背丈が160cmくらいの大きさの自販機があった。
現在最終調整中のようで机の上には部品や道具、タブレットやお試し用の商品、お金等が散らばっている。
「あー桜か。 なんだ?」
「オーフェンさんが大きさを確認したいというので連れてきました。 見ても良いですか?」
「触らなければいいぞ」
「ありがとうございます」
倉敷さんから許可を貰ったので二人と共に近づき確認する。
倉敷さんはタブレットを手に持ち商品の登録、補充作業をしているようだ。
目の前でアイテムボックスに入れるようにして商品が消えていく。
「まんま自販機ね」
「結構大きいですね」
春子さんはぐるりと自販機の周りを一周周った。
「これ……電源はどこから取るの? 商品の補充も……鍵が無いわね」
「あぁ、これは魔石から電源取ってる。 こっちが本体だ、ここに魔石をはめ込めば遠隔でサブ器の自販機も動く」
そう言って倉敷さんは春子さんに商品を補充し終えたタブレットを見せた。
タブレットの裏側に確かに魔石がある。
タブレットを渡した倉敷さんは自販機にお金を入れちゃんと作動するかの確認作業に入った。
「カード……じゃなくて魔石なの? これ」
「随分薄い……こんな加工見たことが無いぞ」
「鋼オリジナルの魔石じゃぞ。 鋼以外はおそらく作れん」
春子さんとオーフェンさんが驚いている。
そんな二人に対し鋼さんの自慢を始めるマッヘンさん。
薄いカード型の魔石。 確かにふつうも魔石だとタブレット自体が薄いから邪魔になっちゃう。
だからと言ってカード型にしちゃうなんて。
マッヘンさんの自慢したい気持ちが分かる。
「取り外してみてもいいかしら?」
「駄目だ。 ……桜に登録してもらってるからそっちから貰え。 それは今使用中だ」
自販機から目をそらさずにそう言う倉敷さん。
「分かったわ。 桜さん出してもらえるかしら?」
「良いですよ」
そう言って魔法で取り寄せて二人にそれぞれ手渡した。
「……凄いわね」
「こちらの職人では無理ですね」
それぞれから感想が述べられる。
硬いから作るならおおよその形を作ってやすりで削るとかかな?
ん? でも魔道具のインクには使用されてるんだよね? 溶かしてなかったっけ?
「よし……桜、これ登録してくれ」
そんなことを考えようとしたら倉敷さんから声が掛かり思考を切り替えた。
「調整終わったんですか?」
無事に登録された商品が出てくることを確認出来たみたい。
「あぁ」
「分かりました」
そう言ってお金を渡し登録し、新しく取り寄せる。
調整に使ってた自販機の横に置いた。
「……使ってみてもいいですか?」
「いいぞ、……あ、待て。 登録情報の削除をしてからだ。 消すの忘れてた」
「本当だ。 さっき登録してた商品が残ってる」
「その場合……ちょっと貸してみろ」
そう言って私がいじっていたタブレットを倉敷さんが持って行く。
手早く初期化され戻って来た。
「これで良し。 使ってみろ」
「ありがとうございます」
さて、何を登録しようかな? お試しに食べ物にしちゃおう。 ファストフードの自販機。
そう思いついてハンバーガーやテリヤキバーガー、季節限定のハンバーガー、ポテトと言ったサイドメニューや飲み物、デザートなんかを登録してみた。 金額は一律100円、値段設定はお試しの今は適当だ。
魔法で取り寄せて自販機に詰め込んでいく。
各10個ほど入れてふと疑問に思う。
「……倉敷さん、これって何個まで補充できるんですか?」
「あー……限界は調べてなかったな、よし。 桜限界まで入れてみろ」
「はーい」
魔力はたっぷりある。
次々に取り寄せては補充していく。
「これって時間停止の魔法付きですよね」
「そうだ」
「ラジャー」
そうして次々に放り込んでいった。
「……桜さん、今ハンバーガー何個目?」
「……えーっと……352個目です」
「……そう」
黙々と投入していく。
倉敷さんを始め皆最初は興味津々に見ていた。
だけど延々と終わらない作業に飽きが見受けられるようになった。
「……桜」
そんな中倉敷さんに声をかけられた。
「なんですか?」
「後で報告を待ってる」
そう言って倉敷さんは外に行ってしまった。
「そうね、私達も後で結果を聞くわね。 焦らせたら申し訳ないもの」
「そうですね、私たちは一度商業ギルドに戻りますか、難題も設置するとなったら配置を考えねばなりませんね」
「そうね。 桜さんまた夕方に来るわね」
それを皮切りに次々と離脱者が増えた。
「えっ?! 私一人残していくんですか?!」
「桜……」
「……マッヘンさんは残ってくれるんですよね」
ついに最後の一人のマッヘンさんにまで声をかけられた。
「すまん」
そして一人取り残されてしまった。
調べた結果一つに付き999個まで補充が可能だった。
夕方戻って来たオーフェンさん達からは3台までなら配置可能と教えてもらった。
34
お気に入りに追加
774
あなたにおすすめの小説
辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~
雪月 夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
他作品の詳細はこちら:
『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】
『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】
『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】
異世界で農業をやろうとしたら雪山に放り出されました。
マーチ・メイ
ファンタジー
異世界召喚に巻き込まれたサラリーマンが異世界でスローライフ。
女神からアイテム貰って意気揚々と行った先はまさかの雪山でした。
※当分主人公以外人は出てきません。3か月は確実に出てきません。
修行パートや縛りゲーが好きな方向けです。湿度や温度管理、土のphや連作、肥料までは加味しません。
雪山設定なので害虫も病気もありません。遺伝子組み換えなんかも出てきません。完璧にご都合主義です。魔法チート有りで本格的な農業ではありません。
更新も不定期になります。
※小説家になろうと同じ内容を公開してます。
週末にまとめて更新致します。
おもちゃで遊ぶだけでスキル習得~世界最強の商人目指します~
暇人太一
ファンタジー
大学生の星野陽一は高校生三人組に事故を起こされ重傷を負うも、その事故直後に異世界転移する。気づけばそこはテンプレ通りの白い空間で、説明された内容もありきたりな魔王軍討伐のための勇者召喚だった。
白い空間に一人残された陽一に別の女神様が近づき、モフモフを捜して完全復活させることを使命とし、勇者たちより十年早く転生させると言う。
勇者たちとは違い魔王軍は無視して好きにして良いという好待遇に、陽一は了承して異世界に転生することを決める。
転生後に授けられた職業は【トイストア】という万能チート職業だった。しかし世界の常識では『欠陥職業』と蔑まされて呼ばれる職業だったのだ。
それでも陽一が生み出すおもちゃは魔王の心をも鷲掴みにし、多くのモフモフに囲まれながら最強の商人になっていく。
魔術とスキルで無双し、モフモフと一緒におもちゃで遊んだり売ったりする話である。
小説家になろう様でも投稿始めました。
D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが
米俵猫太朗
ファンタジー
ただのサッカーマニアである青年ショーキチはひょんな事から異世界へ転移してしまう。
その世界では女性だけが行うサッカーに似た球技「サッカードウ」が普及しており、折りしもエルフ女子がミノタウロス女子に蹂躙されようとしているところであった。
更衣室に乱入してしまった縁からエルフ女子代表を率いる事になった青年は、秘策「Tバック」と「トップレス」戦術を授け戦いに挑む。
果たしてエルフチームはミノタウロスチームに打ち勝ち、敗者に課される謎の儀式「センシャ」を回避できるのか!?
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~
みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】
事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。
神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。
作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。
「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。
※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。
転生したアラサーオタク女子はチートなPCと通販で異世界でもオタ活します!
ねこ専
ファンタジー
【序盤は説明が多いので進みがゆっくりです】
※プロローグを読むのがめんどくさい人は飛ばしてもらっても大丈夫です。
テンプレ展開でチートをもらって異世界に転生したアラサーオタクOLのリリー。
現代日本と全然違う環境の異世界だからオタ活なんて出来ないと思いきや、神様にもらったチートな「異世界PC」のおかげでオタ活し放題!
日本の商品は通販で買えるし、インターネットでアニメも漫画も見られる…!
彼女は異世界で金髪青目の美少女に生まれ変わり、最高なオタ活を満喫するのであった。
そんなリリーの布教?のかいあって、異世界には日本の商品とオタク文化が広まっていくとかいかないとか…。
※初投稿なので優しい目で見て下さい。
※序盤は説明多めなのでオタ活は後からです。
※誤字脱字の報告大歓迎です。
まったり更新していけたらと思います!
クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される
こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる
初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。
なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています
こちらの作品も宜しければお願いします
[イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる