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第三章
200話目
しおりを挟む「とても楽しかったわ」
「それは良かったですね」
何とか予定をこなして長谷川さん達と合流しレストランの時間に間に合った。
レストランはイタリアン。
奥から順に陛下、サフィリア様、瑠璃さん、長谷川さん。
その対面はローレンツ様、アルフォート様、オリヴィア様、私の順。
夜景を見ながらのコース料理、フリードリンクだ。
前菜の前にアミューズと乾杯用のシャンパンが運ばれてきた。
アルフォート様が私の代わりに乾杯の挨拶をしてくれてコース料理がスタートした。
私から皆さんに飲み物の説明をし、飲み物を注文したい場合は言ってもらえることになった。
あっちだったらあり得ないよね。
給仕の人が察して動くよねきっと。
気を取り直してシャンパンに口を付けた。
……飲みやすい。
食前酒なだけあって口当たりが軽い、このフルーティーな感じ良い。
歩き回って走り回ってペコペコのお腹にはちょっと沁みすぎるけど、それもまたよし。
シャンパンに満足してアミューズに取り掛かる。
アミューズってなんぞって思ったが、どうやら日本食でいうお通しのようなものみたい。
出されたアミューズはパンっぽい。
フォークで押さえ、ナイフで切れ目を入れる。
サクッと小気味良い音が聞こえた。
見た目は違うが触感はクロワッサンっぽい。
フォークで刺し口に運ぶ。
――美味しい。
魚の包み焼きかな? 茗荷が良いアクセントになってて美味しい。
サクサクとした触感も良い。 料理に夢中になってたが他の人の様子を伺う。
同じ並びになっている公爵やサフィリア様の様子は分からないけど……あれ?
もしかしてサフィリア様まだシャンパンに夢中になってる?
オリヴィア様越しにグラスを持つサフィリア様の手が見えた。
グラスを傾けて中の気泡を確認しているようだ。
私の視線をオリヴィア様が気付いたようだ。
「サフィリア様、いかがいたしましたか」
「いえ……この飲み物が美しいと思いまして」
「そうですね、この透き通った琥珀色、底から昇る気泡、光を反射し輝いてますね」
「えぇ、飲み口も爽やかで苦みも少ない、このようなお酒があるのだと感心しておりました」
「全くですね、ですが折角のお料理が冷めてしまいます、暖かいうちにお召し上がりませんか」
「そうね、異世界の食べ物ですものね、頂きましょう」
このシャンパンはサフィリア様の口にあったんだ。
確かにシャンパンのこの気泡は綺麗だよね。
さて、他の人はどうかな?
流石にローレンツ様の表情は分からないし、初めてでないのでいいか。
陛下はどうかな?
そう思い斜め右奥に座る陛下の方を見やる。
既にグラスは空になっており、お皿も綺麗になっている。
味はお気に召したのか隣に座るアルフォート様に飲み物メニューについて質問しているようだ。
そろそろオーダーが入りそうかな?
続いて瑠璃さんを見ると、顔が蕩けるような幸せそうな顔してアミューズを食べていた。
その隣の長谷川さんを見るとこちらもグラスとお皿が空いておりドリンクメニューを眺めていた。
前菜が来る前にドリンクの取りまとめをし、前菜が行きわたると同時に注文をした。
陛下とローレンツ様が本日の白ワイン、アルフォート様はスコッチウィスキー、サフィリア様はスパークリングワイン、オリヴィア様と瑠璃さんはオリジナルノンアルコールカクテル、長谷川さんは数種類あるビールの上から順に、私はオリジナルサワーカクテルにした。
陛下とローレンツ様は定番通り、アルフォート様は料理よりも自分が飲みたいものを頼んだ感じか? 食べ合わせだと白ワインとかのが良さそうだけど。
サフィリア様はシャンパンが気に入ったのかな? 同じのではなく違うのも気になる感じか?
瑠璃さんはお酒あまり強くない感じかな? まだシャンパンが半分くらい残ってる。
オリヴィア様は接待だからお酒控えめにしたのかな?
そして長谷川さん、ブレないね。
そこまで考えて目の前に置かれた前菜へと視線を移す。
凄く色鮮やかだ。
ピンクだよピンク。 生ハムにビーツに……載ってるのは無花果……かな。
添えてあるソースは鮮やかなグリーン、これは何味なんだろう、味の想像がつかないな。
フォークで生ハムの上にビーツと無花果を乗せソースをかける。
こぼさないようにゆっくりとフォークで持ち上げ口に入れる。
……意外と濃厚だ。
何味って言われると表現が難しいけど、生ハムの塩気に無花果の甘み、ソースが濃くてねっとりした味わい、なんだろう何かに似ているけど分からないな。
前菜を味わっていると飲み物が届いた。
それぞれに行きわたり、私も注文したカクテルを一口飲んだ。
今回注文したカクテルは塩レモンと生姜のサワーカクテル。
意外と濃い味付けだった前菜に塩レモンのスッキリとした甘さが丁度良い。
食事中の会話は主にアルフォート様やオリヴィア様が主導してくれたので、私は飲み物の注文やウェイターさんとのやり取りに集中できた。
陛下と公爵の接待なんて無理、って思ったけどアルフォート様やオリヴィア様が矢面に立ってくれて何とかなった。 本当に助かった。
それに陛下やローレンツ様、サフィリア様も気さくな方で良かった。
安心して食べる食事は美味しく、ついつい油断しお酒も進んだ。
特に問題もなく食事を終え、アルフォート様が先導し、私は集団の最後尾に付き、部屋へ戻ろうとすると瑠璃さんに袖を引かれた。
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