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第三章

198話目

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……あれ? おかしくない? フロントでチェックインしたの15時頃だったはず。
1時間休憩とって、ホテルから移動するので1時間掛かって、服を選ぶので……。

その時間になってもおかしくないと理解した。
全然時間が足りない。 何ならラボにも行きたかった。 単なる私が行きたかっただけだけど。
時間が余ったら映画とか見せればいいかなとかも思った。 
そんなところに寄っている時間が無い。
ホテルのレストランの予約何時だっけ? 20時か? やばい!! 2時間弱しかない!!
一人で青ざめていると長谷川さんが寄って来た。

「……どうした」

「長谷川さん、時間がありません、現在18時05分、ホテルのレストランの予約が20時です。 商業施設はまだ全然見れてません、日付が変わったらホテルから出た瞬間あっちに強制送還です」

「……了解」

最優先はディナーだな……と呟き長谷川さんがアルフォート様の元に足を進めた。
長谷川さんから耳打ちをされたアルフォート様がこちらを見て頷いた。 それから陛下、ローレンツ様、サフィリア様、瑠璃さんの元に歩みを進めた。

「僭越ながら陛下、公爵、公爵夫人にご提案があります」

「話せ」

「これだけ広い場所ですので二手か三手に別れて行動いたしませんか?」

「ふむ……?」

「時間も限られておりますゆえ、……でしたら興味のある場所に赴いた方が宜しいかと」

陛下とローレンツ様がサフィリア様をじっと見る。
そして何か思案しているそぶりを見せる。
サフィリア様は意味深な綺麗な笑みを浮かべて二人を見返した。

陛「そうだな、女性を我々に付き合わせるのも申し訳ない」
ロ「サフィリアはゆっくりと女性向けの商品を選びたいだろう」


きっと私生活ではお二人ともサフィリア様に勝てないんだろう。
このままだと女性向け商品売り場……恐らく美容関連商品の所に連行されると予想して、陛下とローレンツ様はアルフォート様の提案を受け入れた。

「では、私はサフィリア様と参ります」

「オリヴィア、公爵夫人を頼む。 私は陛下と公爵と共に行動する。 長谷川はこちらへ、瑠璃と桜は二人の案内を頼む」

「かしこまりました」

あれよあれよと言う間に話がまとまってしまった。

「……待ち合わせの時間はここに19時30でいいか? ここからならレストランまで15分もかからないだろ?」

長谷川さんがアルフォート様のところに行く前に小声で確認にきた。

「は……はい、それで大丈夫です」

「じゃあそっちは頼んだぞ」

そう言ってアルフォート様と共に案内に行ってしまった。

「では私達も参りましょう、桜さん、美容関連の場所へ案内をお願いしますね」

「かしこまりました」

流れに付いて行かなくては。
両手で頬をはたき気合を入れなおす。

美容関連、コスメ関係は1階かな。
確か色々なショップがまとまってたはず。

頭の中で館内図を思い浮かべ現在の位置関係を把握する。
ここからなら、吹き抜けにあるエスカレーターを降りればお店があるな。

そう思いそちらへ案内をしようとした。
そしたら袖を掴まれてしまった。
驚いて振り向くと、

「桜さん、エスカレーターは使わない方向でお願いします」

瑠璃さんだ。
瑠璃さんとは、こっちに来てから当たり障りのない会話しかしたことが無い。
そんな彼女にそう言われ戸惑いを覚えた。

「オリヴィア様は使われたことがあるかもしれませんが、サフィリア様はまだ使用したことがありません、しかもここは3階です。 転倒の恐れもあるのでエレベーターでの移動でお願いします」

「分かりました」

すっかり失念してた。
上りのエスカレーターはともかく下りのエスカレーターが人生初めて、しかも吹き抜けで1階まで丸見え、それを3階から降りていくのは怖いよね。
しかも動く床だし。 バランス崩して倒れたりしたら大変だ。

「ありがとうございます」

私の回答にほっとした表情を浮かべる瑠璃さん、本当にサフィリア様が好きなんだね。

「私の方こそありがとうございます」

瑠璃さんの気遣いに笑みがこぼれた。
そしたら瑠璃さんも小さく笑ってくれた。

「ではこちらのエレベーターで向かいます」

そうオリヴィア様とサフィリア様に告げて案内をした。


1階のコスメ関連ショップはいくつかある。
一つ目は果物がモチーフの店。
セレクトショップみたいな感じでコスメからスキンケアまで幅広く取り扱っている、年齢層は比較的若め。
二つ目は海外のブランドの店。
どちらかと言うとスキンケア重視、オーガニックな製品が多い。
三つ目は多種多様なメーカーの化粧品を扱う店。
一つ目のお店と比べて有名どころのコスメからスキンケアまでがそろってる感じ。
四つ目はアンチエイジングの食品やテレビやネットで話題になっている商品を扱う店。
サプリメントや食品も多い。

どれがいいかな?
こういうコスメ関連ショップは、試供品が沢山ある。
色々と試しているうちにいつの間にか時間が過ぎてしまうんだよね、いや、それが私は楽しいんだけどね。

「サフィリア様」

「なにかしら?」

「美容関連で特に気になるのは次のうちどれでしょうか?」

「次のうち?」

「はい、一つ目は見た目や香り、二つ目はスキンケア、三つ目は化粧品、四つ目はアンチエイジングの食品この中からだとどれが気になりますか?」

「そうね……」

サフィリア様の眉間にしわが寄った。
真剣に考えている……どれも捨てがたいみたい。

「……全部は厳しいのかしら」

オリヴィア様が会話に加わった。

「一つのお店で使える時間が15分で宜しければ全て回れます」

「分かりました、サフィリア様最初に気になったのはどれでしょう?」

「アンチエイジングかしら」

「ではそちらから参りましょう」

オリヴィア様が穏やかに微笑まれ行き先があっという間に決まった。

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