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第三章

176話目

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数日後廃村にて

イーノス様が初めてあちらの世界に行ってから一週間ほど経過した。
イーノス様はあれからインターネットとテレビに夢中になり滞在中は予備のタブレットを貸した。 通信回線は私のタブレットから飛ばして決済関連は出来ないようにしておいた。 そのおかげで滞在中は寝室に籠りきり、出てくるのは食事とお風呂とトイレのみ。
テレビでニュースをかけつつ耳で聞き、なんだかネット中毒みたくなってたっけ……。 
私は楽だったけどちょっと怖かった。
連続してあちらの世界に宿泊し、最終日にはベルゲマン公爵夫妻向けの宿泊施設を一緒に選んでもらった。
アルフォート様とオリヴィア様も一緒に行ったのだが、二人は二人でテレビに夢中になっていた。
オリヴィア様お薦めのドラマを二人で見つつのんびりと過ごされてた。
恋愛向けのが多かったので最終日にはアルフォート様ちょっと疲れ気味だったけどね。

長谷川さんはやる事なくて読書やゲームに夢中になってた。 入れ知恵されて漫画部屋が備え付けられた宿泊施設を混ぜ込む姿を見て、従者とは何ぞと思ったり思わなかったりした。

宿泊先選びという懸念事項から解放されて、今日からベルゲマン公爵夫妻が街に来られるまで、つかの間の休みを味わう。


私があちらの世界に入り浸っている間に廃村の景観が変わった。

相良さんや菅井さんが草刈りに精を出した結果、村がこざっぱりとした。
畑と道の境は分からないままだけど、だだっ広い原っぱみたいになった。
今は二人で空き家の解体に勤しんでいる。 私も空いた時間で手伝う。

次に野生のスライムを何匹か飼い始めた。
と言うのも倉敷さんやマッヘンさんが魔道具を作る際失敗したものや、相良さんが刈った草なんかが大量に出たんだとか。 アイテムボックスにそのまましまい込んで封印するでもよかったんだが、菅井さんが草を食べるスライムを村外れて目撃して、自分が刈った草を食べさせるうちに愛着がわいたんだと。

村の一部に柵が設置され、柵の内側に穴が掘られてその中でスライムが数匹飼われるようになった。
餌は今のところは草。 ついでに言うと今は草に埋もれてる。 相良さんが貯め込んだ草を一気に放出した結果みたい。 ……スライム生きているよね? 大丈夫だよね? 

穴の中を覗くと草がかすかに動いた。 草の中で動いているようだ。 良かった。

……にしても広いな。

こざっぱりした廃村を見渡す。

こんなに広いなら何か出来ないかな?

……! そうだ。 フルーツビール作ろう、と言うか工房みたいな作業場みたいなものが欲しいな。
以前作った果実酒に思いをはせる。
あの時もフルーツを切ったり置いたりする場所が必要だった。
家で作ってもいいけど、ここで作業できるならそれに越したことはないよね。
でも幌馬車の中だと狭い……。 解体中の空き家はボロボロで使えそうにないし……。
作る? どうやって? 家なんて作ったことないもんな……。

うーんと悩み、マッヘンさんに相談することにした。

今マッヘンさんは……と、探すと幌馬車の近くで素材を広げて加工をしている。
その作業にも興味を惹かれマッヘンさんの傍に近寄った。

「マッヘンさん今いいですか?」

「ん? 桜か、なんじゃ?」

素材を見ると色々な長さや形の骨? のようなものが並べられていた。

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