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第三章
162話目
しおりを挟む夕方、時間になり春子さんがオーフェンさんを連れて戻ってきた。
「本日は私までお招き頂きありがとうございます」
転移門で来て早々、少しラフな格好をしたオーフェンさんにお礼を言われた。
「来ていただきありがとうございます。 オーフェンさんも楽しんで行ってくださいね」
和やかに挨拶を終えた後、外を少しみても良いですか? と言い出たオーフェンさんは幌馬車の外にある魔道具の類と素材の山とを見てギョッとしてた。
そろそろ片付けてって言わなくちゃな。
そんな事を思っていたら長谷川さんも戻って来た。
「……長谷川さん? その……背後のかたは……?」
長谷川さんの後ろに続いて転移門から出て来たのは穏やかそうな面持ちの春子さんと同年代くらいの女性だった。
「初めまして」
手で口元を隠しおっとりと笑う女性。
「初めまして」
挨拶されたので挨拶を返しながら、ちらちら長谷川さんに目配せをした。
「……こちらは領主の奥方様です」
…………。
はい?!
「オリヴィア=ブリストウです。 貴女が橋沼桜さんね、夫より聞いております。 宜しく頼みます」
……何を?!
取り敢えず長谷川さんは唐突に爆弾放り込まないでほしいんだけど!!
頭の処理が追いつかないまま時間になったのでここに居る人達で行くことになった。
部屋割りは2階にオーフェンさんと春子さんが露天風呂付きの個室、同じくオリヴィア様も露天風呂付きの個室、私と灯里が露天風呂無しの個室、1階に相良さん、長谷川さん、マッヘンさん、倉敷さん、菅井さんで和洋室という割り振りになった。
着いた先の宿はタブレットで見るよりも広く開放的だった。
家具は白を基調とした十人は座れそうなソファーが真ん中に置かれ、窓の外はウッドデッキになっている。
このウッドデッキが広くてバーベキュー台やテーブルの他にも焚き火台やそれを囲うようにソファーが置かれたりしている。 灯里と探検したいのをグッと堪えてオリヴィア様の案内をする。
……と言うか私何すれば良いの? 貴族対応の作法なんて知らないんだけど!!
取り敢えずお客様を案内する感じで接することにした。
「桜さん」
「はい、如何致しましたか?」
「オリヴィアで良いわ。 無礼などと言うつもりもないので気楽に接してください、こちらでは貴女方が先生ですものね」
パチンとウインクを寄越したオリヴィア様、それを見て幾分か緊張がほぐれた。
「ありがとうございます」
「桜さんだけではなく私達も補助につきますね」
「宜しくお願いします、オリヴィア様」
スッと私の隣にきてくれたのは春子さんと灯里だ。
二人ともあっちの世界では接客に長けてるもんね、日本だけの経験しかない私に比べたらとても頼もしい。 心の中で二人に感謝した。
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