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第三章
152話目
しおりを挟むコンコンッ。
時間になったので倉敷さんたちの部屋を訪ねた。
「はーい、桜さん待ってたよ」
またしても菅井さんが扉を開けてくれた。
時間よりも早めに来たはずなのに待ってたとは……?
「お邪魔します?」
そう言って靴を脱ぎ上がると襖を開けた。
「部屋の作り違うんですね」
そう言って部屋の中を散策する。
こちらの部屋は私の部屋にあったサロンスペースがなく、代わりにバルコニーが広く、室内にはバーカウンターが置いてあった。
風景を見ながらお酒をお嗜む。 いいね。
「バーカウンター!! 素敵!! ってあれ? 日本酒の瓶?」
「旨かったわい」
浴衣姿のマッヘンさんがニコニコしながらやって来た。
「この箱の中にあったんじゃ。 二人とも飲まんと言っておったから飲んで見たんじゃ。 酒精が強くてほんのり甘く体に染みて旨かった。 他にもびーるという奴も旨かったのう? 無くなってしもうて残念じゃ……」
「そんなの入ってたんだ」
冷蔵庫の中見てなかったや。 アイテムボックスは使えるからそっちばっかり使ってたし。
部屋に戻ったら見てみよう。
ってマッヘンさん350mlの日本酒2本にビール2本も飲んだの? 早くない? 酔わないの? 食事前だよ?
「これもほんに不思議じゃの。 魔石使っとらんのにこんなに冷えるとは……。 解析してもよう分からんし、 分解は止められるし」
分解しようとしたの!? だから倉敷さんたちグッタリしてるの?
「テレビ、冷蔵庫、ドライヤー、ポット、リモコン、エアコン、空気清浄機、コーヒーメーカーここに備え付けのもの全部解体しようとしてた」
倉敷さんが呟く。 それ全部?! 恐るべしマッヘンさんの好奇心、……そう言えばさっきもエレベーター分解しようとしてたね。
「マッヘンさん、そんなに気になるなら戻ってからで良いなら分解用に出しますか?」
「本当か!?」
「……え、えぇ」
マッヘンさんに勢いよく両手を掴まれた。
「絶対じゃぞ!! 絶対!!」
「わ……分かりました」
手を離したマッヘンさんは小躍りを始めた。 少し不安になったが旅館の備品を分解されるよりはマシだ。 あわよくば魔道具作成に活かしてもらえそうだなという打算もあったのだけれども、素直に喜ぶマッヘンさんを見て良心が痛んだ。
「……助かった」
分解騒動から解放された倉敷さんがそう言う。
「桜さんならそう言ってくれると思ってたよ」
菅井さんがそう言う。
……だから「待ってた」だったのか。
それから相良さんと長谷川さんも部屋にやって来たので皆で旅館の料亭へ向かった。
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