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第三章
146話目
しおりを挟む「拙者、アカツキと申す。実は先日、こちらの近くに住む巫女の女性と、お見合いをしたのでござる」
聞けば、相手の機嫌を損ねてしまったとのことです。
どうやら、ソナエさんのお見合いの相手とは、アカツキさんのようですね。
隣のソナエさんを、確認します。
あー、怒っていますねぇ。
わたしたちは暗がりにいるのですが、ソナエさんの青筋がくっきりと見えますよ。
ソナエさんの腕を、ヒジで小突きます。
態度で示すと、相手にも伝わっちゃいますよ。
ダメですね、これは。話す気がない模様です。
ソナエさんがここまで立腹している姿は、初めて見ました。
よほど、腹にすえかねる物言いをされたのでしょう。
「何を話されたんですか?」
「他愛のない話です。どのような酒を好むか、あてはどれか。拙者は、トマトやチーズだけでも楽しめるというと、相手はたいそう喜んでくださいましたぞ。食事の好みも、ほぼ同じだったので、大丈夫だと思うていたのです」
よかったじゃないですか。なにが不満だったのでしょう?
「発言に失礼があったか、心当たりはありますか?」
「無礼だったのは、両親です」
初対面だというのに、お母様がやたらとソナエさんに小言を言ってきたとか。
相手方の両親ができた人で、そのままことなきを得たと言います。
お父様まで叱り飛ばしたくらいだとか。
「あなたご自身に、問題があったとのお考えは?」
「思い当たるフシが、何も。おそらく、それも怒らせた原因だったのでござろう。なんてことのない会話で、憤慨されたのでしょう」
反省は、しているようですが。
あー、もう。
ソナエさんブチギレじゃないですか。
これは、早く解決せねば。
「何を話したか、再現はできますか」
「毎朝、あなたの味噌汁が飲みたいと」
「……あー」
これは、罪深い。
ダメですね。ダメダメです。これはギルティというしかありません。
実に罪な発言ですよ、これは。
「おサムライさん。あなたは首をハネられても文句が言えません」
「そこまででござるか!?」
「あなたの中では、朝は眠いのにお味噌汁を作るのは、女性だけなのですね」
まだわかっていないのか、アカツキさんは黙り込みます。
「あなたは、炊事などの家事を奥様一人に押し付けるおつもりで?」
「……っ!」
アカツキさんが、ハッと息を呑みました。
わたしの言わんとしていることが、ようやく飲み込めたようで。
「失念していた。これでは、母と同じではないか!」
「では、その旨をお伝えください。きっと、わかり合えるはずですから」
シスター・エマと一緒に、お粥のお店で休憩をします。
「とにかく、指示に従えって注文が多いんだよ。武家だからかねえ」
わたしは、とかくその「武家」なるワードがひっかかりました。
どうもブケというのは、こちらでいう「騎士団」のような役職だそうで。
「ブケ、という家系は、そんなにめんどくさいの?」
エマからの質問に、ソナエさんは「うんうん」とブンブン首を振ります。
「しきたりには、うるさいかな? 考え方が古いから」
こちらも、騎士や貴族の中には柔軟な考えの人は少ないかも知れません。
「謎マナーが多いぜ。箸の持ちからや食べ方まで、指図してきやがる」
めんどうな方みたいですね。
「ですが、お料理が上手じゃないですか。結婚のご意思自体はあるのでは?」
「あたしが食べたいから、料理が勝手にうまくなったんだ。伴侶なんて、考えたこともないさ」
自分がおいしい晩酌を楽しみたいから、料理の腕を磨いたとのこと。
なるほど、自分のためならいくらでもおいしいものを作るけど、他人のためとなると話は別だと。
休憩を終えて、再度ザンゲ室へ。
今度の方は、お歳をめしたおばあさまのようで。
「実は先日、息子の見合い相手にきつくあたりすぎてしまって」
へ?
今度は、お見合い相手のお母様がいらっしゃったと?
聞けば、相手の機嫌を損ねてしまったとのことです。
どうやら、ソナエさんのお見合いの相手とは、アカツキさんのようですね。
隣のソナエさんを、確認します。
あー、怒っていますねぇ。
わたしたちは暗がりにいるのですが、ソナエさんの青筋がくっきりと見えますよ。
ソナエさんの腕を、ヒジで小突きます。
態度で示すと、相手にも伝わっちゃいますよ。
ダメですね、これは。話す気がない模様です。
ソナエさんがここまで立腹している姿は、初めて見ました。
よほど、腹にすえかねる物言いをされたのでしょう。
「何を話されたんですか?」
「他愛のない話です。どのような酒を好むか、あてはどれか。拙者は、トマトやチーズだけでも楽しめるというと、相手はたいそう喜んでくださいましたぞ。食事の好みも、ほぼ同じだったので、大丈夫だと思うていたのです」
よかったじゃないですか。なにが不満だったのでしょう?
「発言に失礼があったか、心当たりはありますか?」
「無礼だったのは、両親です」
初対面だというのに、お母様がやたらとソナエさんに小言を言ってきたとか。
相手方の両親ができた人で、そのままことなきを得たと言います。
お父様まで叱り飛ばしたくらいだとか。
「あなたご自身に、問題があったとのお考えは?」
「思い当たるフシが、何も。おそらく、それも怒らせた原因だったのでござろう。なんてことのない会話で、憤慨されたのでしょう」
反省は、しているようですが。
あー、もう。
ソナエさんブチギレじゃないですか。
これは、早く解決せねば。
「何を話したか、再現はできますか」
「毎朝、あなたの味噌汁が飲みたいと」
「……あー」
これは、罪深い。
ダメですね。ダメダメです。これはギルティというしかありません。
実に罪な発言ですよ、これは。
「おサムライさん。あなたは首をハネられても文句が言えません」
「そこまででござるか!?」
「あなたの中では、朝は眠いのにお味噌汁を作るのは、女性だけなのですね」
まだわかっていないのか、アカツキさんは黙り込みます。
「あなたは、炊事などの家事を奥様一人に押し付けるおつもりで?」
「……っ!」
アカツキさんが、ハッと息を呑みました。
わたしの言わんとしていることが、ようやく飲み込めたようで。
「失念していた。これでは、母と同じではないか!」
「では、その旨をお伝えください。きっと、わかり合えるはずですから」
シスター・エマと一緒に、お粥のお店で休憩をします。
「とにかく、指示に従えって注文が多いんだよ。武家だからかねえ」
わたしは、とかくその「武家」なるワードがひっかかりました。
どうもブケというのは、こちらでいう「騎士団」のような役職だそうで。
「ブケ、という家系は、そんなにめんどくさいの?」
エマからの質問に、ソナエさんは「うんうん」とブンブン首を振ります。
「しきたりには、うるさいかな? 考え方が古いから」
こちらも、騎士や貴族の中には柔軟な考えの人は少ないかも知れません。
「謎マナーが多いぜ。箸の持ちからや食べ方まで、指図してきやがる」
めんどうな方みたいですね。
「ですが、お料理が上手じゃないですか。結婚のご意思自体はあるのでは?」
「あたしが食べたいから、料理が勝手にうまくなったんだ。伴侶なんて、考えたこともないさ」
自分がおいしい晩酌を楽しみたいから、料理の腕を磨いたとのこと。
なるほど、自分のためならいくらでもおいしいものを作るけど、他人のためとなると話は別だと。
休憩を終えて、再度ザンゲ室へ。
今度の方は、お歳をめしたおばあさまのようで。
「実は先日、息子の見合い相手にきつくあたりすぎてしまって」
へ?
今度は、お見合い相手のお母様がいらっしゃったと?
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