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第三章

144話目

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「四人乗ってもちゃんと浮くな、高さも変わりなさそうだ。  だっだら高さを上げるには量を増やせば良いのか?」

「だから言ったじゃろ?  魔力の消費が問題で高さはちゃんとでると。  高さを上げるには量ではなく質じゃ」

「質か……。  鋼に魔石を出してもらってあっちで試すか」

「そうじゃな。  浮く分にはこれで問題はないからのう」

「次は相良のチェックか、相良、頼んだぞ」

「分かりました」

耳に付けた通信の魔道具で相良さんとやり取りをする倉敷さん。

これよりも高くするの?!

倉敷さんとマッヘンさんの会話を聞いて身震いしたら、唐突に背もたれにしていた壁から衝撃が来た。

ぐわんと揺れる幌馬車に座る姿勢も保てず床に転がった。

なに?!  壁がミシミシ音が鳴ってるよ!?

転がった先には同じくころがった菅井さんがいて三角座りのまま青い顔して倒れている。

落ちない、落ちない、落ちない、落ちない、大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫……。

自己暗示かけてる!?  精神的に大丈夫じゃ無いよ!!

「魔法にも耐えてるな……。 高さも維持できてる。 良いぞ」

「耐えれておるが……これは壁の補強が必要じゃな」

倉敷さんは窓に這い寄り外を見て確認し、マッヘンさんは壁に手を当て耐久性を確認している。

この状況の中平然と確認作業を行う二人にビックリだ。

「よし、相良もう少しスピード上げろ」

「分かりました」

倉敷さんがそう言うとゴウッっと板一枚隔てた外で強く風が吹いた。

隙間からも風が入って来ている。

なにが起こってるのか確認しようと窓まで這い寄り外を見る。

動いてる……?!

さっきまで窓から見える景色は止まっていたのに今は景色が流れていた。

……!

相良さんの風魔法か!!

光盾ライトシールド!!」

幌馬車の周りに薄い膜を張るイメージで魔法を使う。

「おい!!」

「ほほう!」

倉敷さんからは実験の邪魔をした不満げな、マッヘンさんからは感嘆の声が上がった。

「まだ途中だろうが、なにしてんだ」

「続きは私達を降ろしてからにして下さい!!   これ以上こんな怖い物に乗って居たくないです!!  菅井さんなんてどこ見てるか分からない状態じゃないですか!!」

私の言葉に菅井さんをチラ見する倉敷さん。

こちらも引くもんかとしばらく無言で見つめ合う。

「そうじゃのう、面白いものが見れたしチョイと工夫をしたいのう。  透や一旦降りるか」

とマッヘンさんが助け舟を出してくれた。

三対一になり流石に分が悪いと思ったのか倉敷さんは相良さんに元の場所に戻すよう指示を出してくれた。

風の音がなくなり最初に触った魔道具に触れると重力を感じた。

ドアの閂を開けてドアを開ける。

「助かったぁ……」

へっぴり腰で幌馬車から降りるとそのまま地面に座り込む。

「桜さんありがとう……」

口元を押さえ青い顔をしている菅井さんに御礼を言われた。

「菅井さん分かって乗ったんですよね?  よく乗りましたね」

最初の様子を見ればなにが起こるか分かっていたような行動だった。

「出来れば乗りたくないんだけどね……一緒に行くには慣れないといけないし」

……行く……とは?

青い顔して力なく微笑む菅井さんにアイテムボックスからペットボトルのお茶を取り出して渡した。

「ありがとう」

倉敷さんとマッヘンさんはさっきの確認を踏まえて改良をしている。

商業ギルドからここに連れてこられ、そしてこの実験という事は……。

嫌な予感に聞くことを躊躇ってしまう。

「はぁー生きかえる。  だいたいあの廃村までどれくらい距離あるか分かってんのかな?  あれじゃ耐えられないよね」

…………。

「あれ?  もしかして……聞いてなかった?」

「……聞いてません」

聞かずにも答えが返って来た。

「……真面目に言ってるんですか?  アレで?  アレで行くんですか?  途中で落ちそうなアレで?  馬車の中でシャッフルされてぐちゃぐちゃになりそうなんですけど!!」

「……これでもマシになったんだよ」

「……マジですか」

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