143 / 274
第三章
143話目
しおりを挟む「あぁ……あの村ね」
春子さんには心当たりのある村だったようだ。
「知ってるんですか?」
「えぇ……随分昔に冒険者ギルドの依頼で魔獣退治に赴いた事があったわ。 ……そう、廃村になったのね……」
確かにあの頻度じゃそうよね、と寂しそうに話す。
「廃村と言っても住民は別の所に移ったみたいですよ」
余計なことを言ったかなとフォローしてみたが微笑まれて会話が終わってしまった。
「場所も開けてるし人もおらず丁度良いのでカタログギフトを使うのにはぴったりですよね」
相良さんは春子さんの機微もなんのそので明るく話を進めた。 そんな相良さんに対し春子さんは呆れたような呆気にとられたような顔をし、確かにぴったりねと苦笑した。
相良さんのお店にて
「それで作ったのがこれだ」
そう言って倉敷さんとマッヘンさんに見せられたのが何の変哲も無い幌馬車の荷台部分だ。
荷台の裏っ側に回り込んで中を見る。
「何の変哲も無い幌馬車の荷台……ですか?」
通常の幌馬車と違うところは車輪が無く、乗り込み口と御者部分に扉が付いており窓があるところだ。
中はガランとしており荷物はおろか椅子すらない。
「まあ慌てるな」
「そうじゃぞ、中は桜がどうとでも出来るじゃろ? まあ見てておれ」
さらっと家具は任せたと言われたな。 だが今から何が起こるのか気になったため流しておいた。
「乗るぞ」
「また乗るの?」
菅井さんがちょっと難色を示したが倉敷さんに無視された。
そう促され私、倉敷さん、マッヘンさん、渋々と菅井さんが乗り込む。
相良さんは乗らないの? 何が起こるのさ?
菅井さんの態度を見て今から起こることに対し少し怖くなった。
「スイッチオン!」
扉を閉めると閂をかけ開かないようにし御者の扉の近くにあった魔石にマッヘンさんが触れた。
「うひゃ?!」
その瞬間ガクンと荷台が揺れ尻餅をついた。
「何?!」
周りを見ると倉敷さんとマッヘンさんは頷き確認作業をし、菅井さんは三角座りをして目を瞑りなにかをぶつぶつ呟いて居た。
外を見ようとグラグラ揺れる幌馬車の中を恐る恐る歩き窓に近づく。
「窓は開けるなよ!!」
倉敷さんからはそんな注意が強い口調できた。
そっと窓の外を見る。
……浮いてる。
浮いてる?!
幌馬車は地上から3-4mくらいの高さに浮いていた。
何で何で何で?!
グラグラ揺れる原因が分かってその場にへたり込む。
どこにも吊られず、少し動いただけでグラグラと揺れる不安定な幌馬車は、ひょっとしたことで落ちそうだ。
アスレチックにあるチェーンで繋がれ一歩進むとグラグラ揺れる不安定な丸太の橋、アレに更に上下が加わった感じで一言で言うならとっても怖い。
「降ろしてください!!」
「まだだ。 これは序の口だ、しっかり座ってろ」
しっかりってなに?! せめて安定出来そうなものを用意しておいてよ!!
そう思っても、これからまだ何か起こるのかと不安が募りなにも言えなくなった。
24
お気に入りに追加
748
あなたにおすすめの小説
異世界に召喚されたんですけど、スキルが「資源ごみ」だったので隠れて生きたいです
新田 安音(あらた あのん)
ファンタジー
平凡なおひとりさまアラフォー会社員だった鈴木マリは異世界に召喚された。あこがれの剣と魔法の世界……! だというのに、マリに与えられたスキルはなんと「資源ごみ」。
おひとりさま上等だったので、できれば一人でひっそり暮らしたいんですが、なんか、やたらサバイバルが難しいこの世界……。目立たず、ひっそり、でも死なないで生きていきたい雑草系ヒロインの将来は……?
異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~
樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。
無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。
そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。
そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。
色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。
※この作品はカクヨム様でも掲載しています。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から「破壊神」と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~
日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!
斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。
偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。
「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」
選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。
異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。
そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。
【カクヨムにも投稿してます】
家族もチート!?な貴族に転生しました。
夢見
ファンタジー
月神 詩は神の手違いで死んでしまった…
そのお詫びにチート付きで異世界に転生することになった。
詩は異世界何を思い、何をするのかそれは誰にも分からない。
※※※※※※※※※
チート過ぎる転生貴族の改訂版です。
内容がものすごく変わっている部分と変わっていない部分が入り交じっております
※※※※※※※※※
辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~
雪月 夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
他作品の詳細はこちら:
『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】
『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】
『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】
25歳のオタク女子は、異世界でスローライフを送りたい
こばやん2号
ファンタジー
とある会社に勤める25歳のOL重御寺姫(じゅうおんじひめ)は、漫画やアニメが大好きなオタク女子である。
社員旅行の最中謎の光を発見した姫は、気付けば異世界に来てしまっていた。
頭の中で妄想していたことが現実に起こってしまったことに最初は戸惑う姫だったが、自身の知識と持ち前の性格でなんとか異世界を生きていこうと奮闘する。
オタク女子による異世界生活が今ここに始まる。
※この小説は【アルファポリス】及び【小説家になろう】の同時配信で投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる