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第三章

143話目

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「あぁ……あの村ね」

春子さんには心当たりのある村だったようだ。

「知ってるんですか?」

「えぇ……随分昔に冒険者ギルドの依頼で魔獣退治に赴いた事があったわ。  ……そう、廃村になったのね……」

確かにあの頻度じゃそうよね、と寂しそうに話す。

「廃村と言っても住民は別の所に移ったみたいですよ」

余計なことを言ったかなとフォローしてみたが微笑まれて会話が終わってしまった。

「場所も開けてるし人もおらず丁度良いのでカタログギフトを使うのにはぴったりですよね」

相良さんは春子さんの機微もなんのそので明るく話を進めた。 そんな相良さんに対し春子さんは呆れたような呆気にとられたような顔をし、確かにぴったりねと苦笑した。




相良さんのお店にて

「それで作ったのがこれだ」

そう言って倉敷さんとマッヘンさんに見せられたのが何の変哲も無い幌馬車の荷台部分だ。

荷台の裏っ側に回り込んで中を見る。

「何の変哲も無い幌馬車の荷台……ですか?」

通常の幌馬車と違うところは車輪が無く、乗り込み口と御者部分に扉が付いており窓があるところだ。

中はガランとしており荷物はおろか椅子すらない。

「まあ慌てるな」

「そうじゃぞ、中は桜がどうとでも出来るじゃろ?  まあ見てておれ」

さらっと家具は任せたと言われたな。  だが今から何が起こるのか気になったため流しておいた。

「乗るぞ」

「また乗るの?」

菅井さんがちょっと難色を示したが倉敷さんに無視された。

そう促され私、倉敷さん、マッヘンさん、渋々と菅井さんが乗り込む。

相良さんは乗らないの?  何が起こるのさ?

菅井さんの態度を見て今から起こることに対し少し怖くなった。

「スイッチオン!」

扉を閉めると閂をかけ開かないようにし御者の扉の近くにあった魔石にマッヘンさんが触れた。

「うひゃ?!」

その瞬間ガクンと荷台が揺れ尻餅をついた。

「何?!」

周りを見ると倉敷さんとマッヘンさんは頷き確認作業をし、菅井さんは三角座りをして目を瞑りなにかをぶつぶつ呟いて居た。

外を見ようとグラグラ揺れる幌馬車の中を恐る恐る歩き窓に近づく。

「窓は開けるなよ!!」

倉敷さんからはそんな注意が強い口調できた。

そっと窓の外を見る。




……浮いてる。

浮いてる?!

幌馬車は地上から3-4mくらいの高さに浮いていた。


何で何で何で?!

グラグラ揺れる原因が分かってその場にへたり込む。

どこにも吊られず、少し動いただけでグラグラと揺れる不安定な幌馬車は、ひょっとしたことで落ちそうだ。

アスレチックにあるチェーンで繋がれ一歩進むとグラグラ揺れる不安定な丸太の橋、アレに更に上下が加わった感じで一言で言うならとっても怖い。

「降ろしてください!!」

「まだだ。  これは序の口だ、しっかり座ってろ」

しっかりってなに?! せめて安定出来そうなものを用意しておいてよ!! 

そう思っても、これからまだ何か起こるのかと不安が募りなにも言えなくなった。

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