異世界でお取り寄せ生活

マーチ・メイ

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第三章

122話目

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しばらく頭を下げ続けた。

数分経っても何も言われない。

このまま頭を下げ続けたほうがいいのか、顔を上げてもいいのか迷っていたら相良さんに顔あげてと言われた。

そろりと顔を上げたら領主はあんぐり口を開けて放心していた。

「……本当か? これを使うとあちらの世界に行けるのか? 誰でも? 人数は?」

戸惑っていると領主からではなく護衛の人から質問が来た。

「あ……はい、本当です。 誰でもいけますこちらの世界の人で試してもらいました。 人数はそこに書かれている人数です」

護衛の人は放心状態の領主からカタログギフトを取った。

雇い主にそんなことしていいのかとギョッとしつつも指摘できないので見守った。

「……」

「……」

あれ?

もしかして読めてる?

護衛の人の様子を伺ってたら目で読んでいるように見えた。

「ユーリ……」

護衛の人がポンポンと領主の肩を叩く。

「すまない、ありがとう」

それで領主は我に返ったみたいだ。

「失礼ですが……渡り人ですか?」

「……ああ」

こちらのことを忘れてたみたいだ。

それなら注意事項を言っておかなくては。

「すみません、もしその護衛の方が使用するなら、こちらに残る期間が長くなることを了承してください」

私の言葉に二人は顔を見合わせた。

「すまない。 どう言うことだ?」

領主の問いに答える。

「はい、渡り人がカタログギフトを使用してあちらの世界に行くと魔力を回復します。 なので……あの? どうしました?」

「俺が使う。 危険が無いか護衛である俺が行こう」

「バカ言え。 これは俺が貰ったんだ! 護衛? お前らの世界そんなに危険なのか!! 常々自慢してただろ!!」

なんか領主と護衛で小競り合いが始まった。

あ、護衛の人が勝った。

「くっ」

隣を見たら相良さんが肩を震わせて笑っていた。

「10冊」

「はい?」

「今回のスタンピートはこれ10冊で手を打とう」

「え? あ、はい?」

許された? どういうこと? というか10冊でいいの? 少なくない?

「橋沼さん、まず今後街での使用は控えてくれ」

魔法を使いカタログギフトを出すと言われるがままに領主へ渡した。

「はい、そのつもりです」

「あとは……そうだな、褒美は何がいい? 相良さんもだ」

「へ?」

褒美? なんで?

「スタンピートの原因だが食い止めたのも君たちだ。 幸い死者は出ていない、日数も大幅に短縮、街中に被害はない、討伐された魔獣の数も多い。 かかった費用を差し引いても益が大きい。 何か欲しいものはあるか?」

まさか褒美が出るとは思わなかった。

何がいいか考えてなかったよ。 というかワインの作り方書いた紙持ってきたけど余計だったみたいだな。

「えー…っと…あ、円の使用認めてもらえませんか?」

「円の……使用? ……円?」

「あっちの世界のお金だ」

ピンと来てなかった領主に護衛の人が耳打ちする。

「理由を聞いても?」

「はい、私あっちの世界の物を広めたくて……金貨だと貴族に買い占められそうだしならばこっちの人が持ってない円を使おうかなと思ったんです」

「まあ……国内となると私では無理だが……この領だけならまあ……いいか」

「あ、ありがとうございます」

オーフェンさんの代わりにお願いしてしまった。

あれ? この領だけ?

オーフェンさん圧力かけてもらうとか言ってなかったっけ?

私余計なこと言った……?

内心冷や汗をかいた。

「相良さんは何かありますか?」

「私はこの間のスタンピートの魔獣、冒険者ギルドで仕留めた魔獣以外の種類があればそれを橋沼さんに売ってください」

「いいですよ」

即決された。

領主が紙に何かを書きメイドに渡した。

「アイテムボックスはお持ちですよね。 帰る時までに用意させます」

「ありがとうございます」

「あとは何かありますか?」

「私の方は特にありません」

私もなかったかな?

「私も……あ、」

あった。 街でカタログギフト使えないなら別の場所を探さないと。

「すみません、このネーアの街から西に森が広がってるじゃないですか」

「あぁ……ラルジュの森か」

ラルジュの森?

「君たちが現れた森の名前さ」

そうなんだ。 って話がそれた。

「そこの奥の方って人は住んでますか?」

「そこは……例の森と接しているから住んでいる人は居なかったはず……何かあるんですか?」

「はい。 カタログギフトを使用する場所を考えてまして、人が居ない場所を探してるんです」

「ああ……なるほど。 それなら……」

領主の提案に相良さんと頷き、倉敷さん達にも提案することにした。

あとは魔獣の素材を受け取り代わりにお金を支払い面会を終えた。



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