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第三章
114話目
しおりを挟む料理が運ばれ飲み物が来たので盗聴防止の魔道具を発動させ乾杯をした。
イリスさんとハンスさんは早速料理に舌鼓をうっている。
クイナさんとユリウスさんが皆のお皿に取り分けしている中マーカスさんに話しかけてみた。
「マーカスさんってスタンピートの調査専門なんですか?」
「ん? スタンピート専門……と言うかそうじゃの……魔獣について研究しとる」
「研究ってどんな研究なんですか?」
そこに高梨さんが参戦してきた。
「う……うむ。 そうか渡り人だったな。 君たちから見て魔獣とはどう見える?」
「悪いやつ?」
「人類の敵?」
「あ、でもオーガツリーの実は好きですよ」
「俺も俺も!」
「ってことは食材でもあるの?」
「あれ? そういや魔獣って人食べないよな?」
「食べないの? 襲ってくるのに?」
「襲われるけど食われてるとこ見たことないな」
「高梨さんが見てないだけじゃなく?」
マーカスさんの問いに私と高梨さんが話をする。
「俺も見たことない」
「私も……そういえばないわね」
「じゃあなんで襲ってくるの?」
「縄張り意識とか?」
「魔獣に縄張りってあるの?」
そしてハンスさん達も会話に加わっていった。
「ちなみに魔獣が生まれるところを見たことがある者はおるか?」
マーカスさんの問いかけに皆顔を見合わせ首を横に振った。
「わしは偶然居合わせたことがある」
「どうやって生まれるんですか?」
「普通に繁殖するんじゃないのか?」
「そうなの?」
「それだと渡り人が来た時に増えるのはおかしくないか?」
マーカスさんは言葉を発したあと皆の話を楽しそうに聞いている。
「で、どうやって増えるんですか?」
「魔獣はな……無から出てきた」
その言葉を聞いて皆の思考が止まった。
「無から……」
「出てくる?」
出てくるってなに?
皆の表情が可笑しかったようでマーカスさんはクックッと笑っている。
「わしが若い頃森を彷徨っていたときに偶然居合わせたんじゃ。 ちょうど渡り人が来たばかりで森の中に魔獣が少ない時期じゃった……」
突然丸い球体が宙に現れたそうだ。
不思議な現象にしばらく見入っているとそこからゴブリンが数匹ぬるっと出てきた。
逃げようと構えたが襲ってこない。
様子を伺うと眠っているようだったということだ。
ゴブリンといえど戦う力もなかったのでその場を離れたそうだ。
後々聞いたらそのぼんやりした様子の魔獣はスタンピート前によく見かける動きらしい。
そこから興味が惹かれ森に赴いた際に今度は攻撃を受けたわけでもないのに突然溶けた魔獣を見た。
魔獣が少なくなってしばらくして渡り人が来たと言う話を聞いた。
それ以降スタンピートについて研究しているとのことだ。
「そもそも魔獣はなんなのか。 ゴブリンだけがあのように増えるのか、ならば何故死んでも体は残るのか、他の魔獣もそうなのか、なぜ人を襲うのか、食べるわけでもないのに……攻撃を受けると逃げる……では何故スタンピートの時は己が死ぬまで集団で襲ってくるのか……不思議じゃろ?」
「それだったら今日見たクイーンアントは何故産卵部屋があったの?」
それはそうだ。 マーカスさんの言うように宙から魔獣が出てくるならば卵は必要ない。
「だから見たかったんじゃ。 興味深いじゃろ?」
ふーむ。
「一応予測はしてたんじゃが……今回ので自信がなくなってしまってのう……」
「予測とは?」
ユリウスさんが尋ねる。
「魔力じゃよ」
「「魔力?」」
クイナさんとイリスさんがハモった。
「うむ。 渡り人が来る際魔力を持ってこちらに来るじゃろ? 一時的にあちらとこちらが繋がる。 その際あちらの魔力がこちらに流れ込みなんらかの影響を受け魔獣が増える。 ……そう思っとったんじゃ」
「今回は現れてしないみたいだな」
マーカスさんはシュンと落ち込んだ。
それを聞いて私は冷や汗をかいた。
高梨さんは無言でこちらを見ている。
その説が本当なら心当たりありまくってる。
「そうなんじゃ。 この規模なら……それこそ少なくとも数十人は来ていてもおかしくない筈なんじゃが……やはり魔獣とは奥が深いのう」
しみじみと語るマーカスさんの話は続いたが後の話は頭に入ってこなかった。
というか高梨さんはこっち見ないで!! そんな目で見ないで!!
待って……このあいだのオーフェンさんの最後の問いってもしかしてこれのことを言ってた?
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