110 / 274
第三章
110話目
しおりを挟む「いらっしゃい。 用事とは何ですか?」
「オーフェンさんお時間頂きありがとうございます」
扉を潜りまずはお礼を言う。
相良さんはそのまま冒険者ギルドに残って解体を見学するらしい。
商業ギルドには私と春子さんで向かった。
席に着くと職員の人がお茶とお菓子を運んできて私たちの目の前に置いて去っていった。
「ちょっとお伺いしたいことがありまして……」
「何でも聞いてください。 ネーアの街の守護者さん」
「うっ……」
ネーアの街の守護者とはあのブレスを防いだのと魔法を防いだことから目撃した冒険者からそう言われるようになってしまったのだ……。
恥ずかしい……穴があったら入りたい。
「だから私隠れて退治してたのよ。 ここの人達二つ名付けるの好きなんだもの」
私の場合消えるまで20年かかったわ……と春子さんに言われた。
それ早く知りたかったんだけど春子さん。
恨めしそうに春子さんを見た。
ちなみに相良さんは直接目撃されなかったことから二つ名は付かなかった。 解せぬ。
テーブルに置かれたお茶を飲み喉を潤し本題に入ることにした。
「えっと……私こっちでやりたい方向性が見えてきたんです。 その相談をしたくてですね……」
「ほうほう」
「まずは私あっちの世界の物を広めたいんです。 つきましてはどうやって広めればいいか考えたいので、ここで売った物の販売先や最終売買先を教えて貰いたいんです」
「つきましては? まあ……良いですよ。 ここで渡り人から買い取ったあちらの世界の物はまず王都にある商業ギルドに買い取られます。 そこから先は大手の商会か貴族になりますね。 ……広めると有りますがどの程度です?」
「出来れば貴族だけでなく一般市民まで。 ……私あっちの世界とこっちの世界が混ざったらどんなものが出来るのか見たいんです。 それには幅広い人達に知って貰う必要があるじゃないですか」
「方法はどうするんです? 何か考えがあるんですか?」
「円を使おうかと思ってます。 あちらの世界の通貨です。 まだ漠然としてるんですが円と交換で品物を売れるようになれば買い占めは出来ないんじゃないかと思いまして……」
「こちらの通貨と交換比率は?」
「ひ……比率? えっと……金貨1枚に対し100円です」
ハンスさんに言われたことをそのまま使っちゃえ。
ふむ……と顎に手を当て考えるそぶりを見せるオーフェンさん。
「そんなにお金あるの? とんでもない金額が必要になるわよ?」
「それは大丈夫です。 用意してあります」
「金貨と円の交換所は何処を使用するつもりですか?」
「そこは考えて無かったです……」
ふむ…とまた考え込むオーフェンさん。
「ならば商業ギルドで請け負いましょう。 この件領主様へ連絡しますね」
「先に王都の商業ギルドへ連絡したら握りつぶされそうなので」
「握り潰す?」
「渡り人の持ち込んだ商品は高価な上人気が高いですからね。それが取り扱えなくなる危機にあの強欲な奴らが黙って見てるわけないじゃないですか。 だから上から圧力掛けます」
「恨まれそうですね」
「こう言うものは何にせよ多少どこかからか恨まれる物ですよ。 敵に回したままにするか味方に付けるかは桜さん次第ですね」
「出来れば味方について欲しいですね……」
人の恨みほど怖いものはないからね。
「弱みを見せたら漬け込まれるだけですよ?」
「恨まれるよりましです」
「ならば落とし所を決めて下さい」
34
お気に入りに追加
774
あなたにおすすめの小説
辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~
雪月 夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
他作品の詳細はこちら:
『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】
『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】
『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】
異世界で農業をやろうとしたら雪山に放り出されました。
マーチ・メイ
ファンタジー
異世界召喚に巻き込まれたサラリーマンが異世界でスローライフ。
女神からアイテム貰って意気揚々と行った先はまさかの雪山でした。
※当分主人公以外人は出てきません。3か月は確実に出てきません。
修行パートや縛りゲーが好きな方向けです。湿度や温度管理、土のphや連作、肥料までは加味しません。
雪山設定なので害虫も病気もありません。遺伝子組み換えなんかも出てきません。完璧にご都合主義です。魔法チート有りで本格的な農業ではありません。
更新も不定期になります。
※小説家になろうと同じ内容を公開してます。
週末にまとめて更新致します。
日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊
北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。
こちらの世界でも図太く生きていきます
柚子ライム
ファンタジー
銀座を歩いていたら異世界に!?
若返って異世界デビュー。
がんばって生きていこうと思います。
のんびり更新になる予定。
気長にお付き合いいただけると幸いです。
★加筆修正中★
なろう様にも掲載しています。
おもちゃで遊ぶだけでスキル習得~世界最強の商人目指します~
暇人太一
ファンタジー
大学生の星野陽一は高校生三人組に事故を起こされ重傷を負うも、その事故直後に異世界転移する。気づけばそこはテンプレ通りの白い空間で、説明された内容もありきたりな魔王軍討伐のための勇者召喚だった。
白い空間に一人残された陽一に別の女神様が近づき、モフモフを捜して完全復活させることを使命とし、勇者たちより十年早く転生させると言う。
勇者たちとは違い魔王軍は無視して好きにして良いという好待遇に、陽一は了承して異世界に転生することを決める。
転生後に授けられた職業は【トイストア】という万能チート職業だった。しかし世界の常識では『欠陥職業』と蔑まされて呼ばれる職業だったのだ。
それでも陽一が生み出すおもちゃは魔王の心をも鷲掴みにし、多くのモフモフに囲まれながら最強の商人になっていく。
魔術とスキルで無双し、モフモフと一緒におもちゃで遊んだり売ったりする話である。
小説家になろう様でも投稿始めました。
クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される
こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる
初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。
なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています
こちらの作品も宜しければお願いします
[イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]
転生したアラサーオタク女子はチートなPCと通販で異世界でもオタ活します!
ねこ専
ファンタジー
【序盤は説明が多いので進みがゆっくりです】
※プロローグを読むのがめんどくさい人は飛ばしてもらっても大丈夫です。
テンプレ展開でチートをもらって異世界に転生したアラサーオタクOLのリリー。
現代日本と全然違う環境の異世界だからオタ活なんて出来ないと思いきや、神様にもらったチートな「異世界PC」のおかげでオタ活し放題!
日本の商品は通販で買えるし、インターネットでアニメも漫画も見られる…!
彼女は異世界で金髪青目の美少女に生まれ変わり、最高なオタ活を満喫するのであった。
そんなリリーの布教?のかいあって、異世界には日本の商品とオタク文化が広まっていくとかいかないとか…。
※初投稿なので優しい目で見て下さい。
※序盤は説明多めなのでオタ活は後からです。
※誤字脱字の報告大歓迎です。
まったり更新していけたらと思います!
神の手違い転生。悪と理不尽と運命を無双します!
yoshikazu
ファンタジー
橘 涼太。高校1年生。突然の交通事故で命を落としてしまう。
しかしそれは神のミスによるものだった。
神は橘 涼太の魂を神界に呼び謝罪する。その時、神は橘 涼太を気に入ってしまう。
そして橘 涼太に提案をする。
『魔法と剣の世界に転生してみないか?』と。
橘 涼太は快く承諾して記憶を消されて転生先へと旅立ちミハエルとなる。
しかし神は転生先のステータスの平均設定を勘違いして気付いた時には100倍の設定になっていた。
さらにミハエルは〈光の加護〉を受けておりステータスが合わせて1000倍になりスキルも数と質がパワーアップしていたのだ。
これは神の手違いでミハエルがとてつもないステータスとスキルを提げて世の中の悪と理不尽と運命に立ち向かう物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる