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第二章
101話目 春子さんと
しおりを挟む春子さんの背に乗りネーアの街の上空までやって来た。
スピードは相良さんに比べたらゆっくりだ。
春子さんの配慮が身に染みる。
その代わりに私は光魔法で二人の周りに結界の様な防御魔法を張った。
移動している最中に暗かった空は白みを帯び地平線から朝日が昇り始めた。
何これ……。
真っ暗で見えなかった森とは違いネーアの門の周りには魔獣の骸が転がっている。
ネーアの街は広い。
空から見える街の風景はかなり広く謎単位の東京ドームで言うと数十個は余裕で入りそうな広さだ。
そんなネーアの街をぐるっと覆うようにして魔獣が押し寄せている。
アレが魔獣……。
レッドボア以外見たことなかった。
さっきも声は聞こえたけど暗くて炎しか見えなかったし……。
雰囲気も私がここを通った時と全然違う。
大きな蟻に狼、鬼のような物に得体の知れない物体。 でっかい蜘蛛も居る?! いやー!!!!
森も動いて……あれも魔獣?!
動物のような見た目のものもいれば空想上の生き物のような物も居て怖いけど夢を見ているみたいで自分が襲われていないせいか、何だか不思議な気分だった。
各門には早朝にも関わらず人の姿も大勢見られた。 もしかして夜通し戦ってた?!
私が悠長に街を眺めている間に何かが防御魔法にぶつかる音がした。
「なに?!」
ベチンベチンバチンと音がする。
音の方を見ると……
「グリフォン?」
凄い形相のグリフォンの群れが防御魔法に向かってベチンベチン羽を飛ばしてきている音だった。
「春子さん……これってやばいですか?」
「大丈夫よ」
冷や汗を流す私をよそにさも何でもないかのように言う春子さん。
「風刃」
春子さんが何かを呟くと一羽? の一羽のグリフォンの右の羽が切断され悲鳴をあげ落下した。
それを皮切りに次々に切断されていくグリフォンの群れ。
あっという間に全てが落ちていった。
下からは突然降ってきたグリフォンに驚いた人達の悲鳴が聞こえた。
「凄い!!」
「刃が通ればこんなもんよ」
「私も出来るようになりますか?」
「練習すれば出来るわよ。 ただ残りの魔力には気を付けてね」
「はい!!」
「それより一度冒険者ギルドのギルマスのところへ行きましょう。 西と北の門の外に居る冒険者を撤退させなきゃ攻撃に巻き込まれるわ」
春子さんがそう言うと高度が徐々に下がり地面が近付いた。
北門の前に降りると周りの冒険者が戦いながらも何事かと視線を寄越してきた。
そして魔獣から攻撃を受け傷を負う。
肩をざっくりいかれた! 痛そう……。
思わず目を背けてしまいそうになるのを耐えてその人の前に行き防御魔法を張ろうとしたが、
「傷が消えた……?」
別の冒険者が鞄から取り出した液体入りの瓶。
その蓋を取り傷に掛けると傷がみるみるうちに癒えていった。
「……領主様から支給された上級ポーションよ」
春子さんの話では怪我を治すポーションには下級、中級、上級といった種類があるらしい。
「さっきの傷は命の危険もあったから賢明な判断ね。 さあ行くわよ」
「は……はいっ」
慌てて春子さんの後を追った。
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