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第二章
98話目 スタンピード5
しおりを挟む西門にある仮設のテントにて
「状況は?」
「西門は森から溢れた魔獣の2割討伐。 戦場に出てるのは第三班です。 ポーションの消費は3割、今のところ死者は居ません。 重傷者は数十名出ましたが完治済みです」
「北門は森から溢れた魔獣の1割討伐です。 戦場に出ているのは第四班、ポーションの消費は5割です。 同じく死者は辛うじて居ませんが重傷者は百名近く出ました。 灯里さんの配置をこちらにして頂けませんか? このままだとすぐポーションが無くなってしまいます」
「北の方が手間取ってるな……。 魔獣のランクはどうだ?」
「西門はAランクが少し出るものの冒険者が倒せる範囲です」
「北門はAランクのレッドオーガの出現が多いです。 サイクロプスや厄介なことにサラマンダーも出現しておりキラーアントや地味にシルクスパイダーの糸に手間取られ対応できる冒険者が少ない為被害が拡がっているかと……」
「失礼します!!」
「何だ!」
「北門にてキラーアントの巣を発見した模様です。 その数から恐らくクイーンが誕生しているかと……」
この状況でクイーンの登場か……!!
「涼と灯里を北門に配置する。 放って置いたら増えるが……巣に割く余裕は今は無い。 最小限対応し深追いするな」
「「はい」」
涼君と言葉を交わし森に入ってから十時間程ひたすらに魔獣を刈って行った。
時刻は深夜を回った。
最初に遭遇したダークウルフは全員窒息させた。
光沢ある糸が美しいシルクスパイダーの上位種キラースパイダー種が出始め糸を切りながら進む。
キラースパイダーの色によって耐火性の他に一つ耐性を有する。
糸はその丈夫さや耐性から冒険者の服を縫うのに重宝されたりする。
だが確保するには中々難しい。
糸が燃えにくく丈夫ゆえに中々切れず対処しているうちに巻かれてしまうからだ。
今回は風と土……光もある!
これだけで何十人分作れるかしら。
このまま行ったらさらに上位種が出そうね。
首を刎ねたキラースパイダー達をアイテムボックスに仕舞う。
ああ……もう……数が多い。
小型の動物くらいの大きさのキラースパイダーの多さに辟易しながら小休憩を取る。
アイテムボックスから飲み物を取り出し喉を潤す。
魔力はまだ十分残ってる。
魔獣も充分狩れてる。
なのに減らない。
飲み物をアイテムボックスに仕舞い一息ついたら、太い木々を薙ぎ倒しながら猛スピードでこちらに向かってくる塊が目に飛び込んだ。
塊と倒木を回避すると別の角度から違う塊が……それも回避するとまた塊が。
それらを次々と回避する。
埒があかないと風魔法を使い空中へ回避すると襲撃して来た塊の全貌が見えた。
「アーマーボアじゃない……凄い数」
レッドボアを少しだけ小さくし表面の皮がミスリル鎧のように硬い上位種が群れを成して居た。
「あっ!! まずい!!」
その場をウロウロしていたアーマーボアは空中に回避した私に手が出せないと悟って街の方へ行ってしまった。
風魔法を使用し追いかけるがアーマーボアの転がるスピードが速すぎて並走するのがせいぜいだ。
「……っ!! 土壁!!」
群れの前に壁を作っても精度が甘く壊される。
「風刃!!」
風の刃を当てても傷が付かない。
……っどうすれば!!
ヒュッ
後ろから来た火の玉がアーマーボアに当たる。
だがアーマーボアは気にせずに進み続ける。
何?
振り返って見ると無数の火の玉が浮いていた。
オレンジ……黄色……レモン色……白……水色……青?
オレンジ色の火の玉がこちらに飛んできた。
光魔法で防御をしたが当たることはなかった。
次は黄色……その次はレモン色と火の玉が横をすり抜けていく。
「何?」
今度は背後で魔獣の叫び声が聞こえた。
そちらを見るとアーマーボアの鎧が溶けていた。
「レモン色で溶けると言うことは5000℃くらいが融解温度ですか!」
「っ相良!! と……桜さん? ……大丈夫?」
えらく楽しそうな相良と背中におぶさり目を回している桜さんが居た。
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