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第二章
97話目 スタンピード4
しおりを挟む「うわぁああああああ!!!!」
「桜さん……休みますか?」
「お願いしますうううう!!」
この調子でかれこれ数回休みを挟んでいる。
うぷ……。
スピードが速くて三半規管がやられっぱなしだ。
「おうおう威勢よく出て行った割にバテるの早いな」
イヤーカーフから倉敷さんの声が聞こえる。
「こんな移動方法聞いてないです……」
アイテムボックスから水を出して喉を潤した。
「大丈夫。 透はもっと早くバテてたからね」
「相良!!」
倉敷さんの大声で耳が痛くなった。
「それで現地の情報は上書きされたかい?」
「爺さんが聞いて来た情報だとネーアの街で今朝戦闘が開始されていたらしい。 あ……街はまだ大丈夫だ。 街の外でだ。 それと王都含め周辺のギルドに対し増援要請の依頼が出てたな……間に合うかどうかはともかく……王都周辺の森の調査依頼もあったな。 冒険者ギルドはそれくらいか?」
「冒険者ギルドは?」
「他のギルドも結構慌ただしくなってきたみたいだ」
今回のスタンピートがネーアの街だけなのか他の所でも同様のことが起こりうるのか起こった場合を想定した行動必要な物資目まぐるしく情報が巡ってるのかな?
「なんか……大変だね」
「大元に今から行くやつが何を言う」
「ごもっともです」
ぐうの音も出ない。
「桜さん。 落ち着いたらそろそろ行きますか」
気合を入れていかなきゃ。
「はい!」
相良さんの背におぶさりまた空へと旅立った。
ぴぎゃああああああああ!!!!
西門前
時刻は夕刻。
血生臭い地面を駆け回り魔獣の攻撃をすり抜け、魔獣の死骸をアイテムボックスに回収し、冒険者の足回りを整え負傷した冒険者へポーションを補充する。
所々へし折れた倒木もアイテムボックスに入れ戦闘しやすいように一箇所にまとめ死角を作る。
危なっ!!
倒木を拾うため森の方に深入りしてしまった所森の奥の方から矢のような魔法が飛んで来た。
一つは避けて体に当たりそうな物は防御魔法で防ぐ。
防いだら今度は地面から蔓が伸びて来た。
足に絡みつく蔓を魔法で燃やす。 凌いだと思ったら次は木の実が豪速球で飛んできた。
避けた木の実は人の胴体ほどの太さが有る木に当たった。 当たった箇所は穴が空き木はそのままゆっくりと傾きズシンと倒れた。
ダークウルフの群にトレントの群にオーガツリーの群……森の外にいる奴とはまた違った奴が出て来た。
どれも臨戦態勢。 一人じゃきついって!!
ジリっと後ずさると魔獣との間に暴風が吹き荒れた。
「涼!! 一人で森の中に行くな!!」
声をかけて来たのはAランクのテルシュとBランクの双子の魔術師マリアとルリアだ。
「悪い助かった!!」
「一旦森から出るよ」
マリアは魔力ポーションを飲むともう一度暴風を魔獣に向けて放った。
「シルクスパイダーの布は好きだけど魔獣は嫌い」
森から出てすぐ遭遇したシルクスパイダーの群に向かってルリアはそう言うと水魔法を使ってを窒息させて行った。
「涼、魔力ポーション無くなった」
「今出す!」
マリアとルリアにアイテムボックスから魔力ポーションを渡した。
「「ありがとう」」
「涼…… 今でもかなり助かっている……だから無茶して勝手にあっちに帰るなよ!! 分かったな!!」
「ああ!! テルシュも気を付けて!! 終わったら飲もうな」
そう言ってテルシュ達と別れた。
仕留められたシルクスパイダーをアイテムボックスに収納する。
これで踏んで足止めを喰らうことはないだろう。
ふぅ……と息を整えてまた冒険者のサポートに繰り出した。
と森に向けて背を向けたら森から爆発音が響いた。
何事かと振り返ると……
「春子さん?」
「あら? 涼君はここに居たの」
土煙が上がる中で涼しい顔をした春子さんが立っていた。
「後ろ!! 危なっ……」
倒れた大木の後ろからオーガツリーが春子さんに向けてその実を発射した。
「大丈夫」
言葉が聞こえた後にこっちにまで熱が伝わって来た。
その実は春子さんに当たる前に燃え尽きてしまった。
炎は実だけで無くオーガツリーまで伸び果ては近くにいたトレントをも巻き込み次々に燃やしていく。
間近で見ていたダークウルフ達は奥へと逃げて行った。
「私は森の中で間引きに行くわ。 涼君も無理しないでね」
「あ……はい?」
春子さんの背中を呆然としながら見送った。
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