上 下
97 / 274
第二章

97話目 スタンピード4

しおりを挟む






「うわぁああああああ!!!!」

「桜さん……休みますか?」

「お願いしますうううう!!」

この調子でかれこれ数回休みを挟んでいる。

うぷ……。

スピードが速くて三半規管がやられっぱなしだ。

「おうおう威勢よく出て行った割にバテるの早いな」

イヤーカーフから倉敷さんの声が聞こえる。

「こんな移動方法聞いてないです……」

アイテムボックスから水を出して喉を潤した。

「大丈夫。 透はもっと早くバテてたからね」

「相良!!」

倉敷さんの大声で耳が痛くなった。

「それで現地の情報は上書きされたかい?」

「爺さんが聞いて来た情報だとネーアの街で今朝戦闘が開始されていたらしい。 あ……街はまだ大丈夫だ。 街の外でだ。 それと王都含め周辺のギルドに対し増援要請の依頼が出てたな……間に合うかどうかはともかく……王都周辺の森の調査依頼もあったな。 冒険者ギルドはそれくらいか?」

「冒険者ギルドは?」

「他のギルドも結構慌ただしくなってきたみたいだ」

今回のスタンピートがネーアの街だけなのか他の所でも同様のことが起こりうるのか起こった場合を想定した行動必要な物資目まぐるしく情報が巡ってるのかな?

「なんか……大変だね」

「大元に今から行くやつが何を言う」

「ごもっともです」

ぐうの音も出ない。

「桜さん。 落ち着いたらそろそろ行きますか」

気合を入れていかなきゃ。

「はい!」

相良さんの背におぶさりまた空へと旅立った。

ぴぎゃああああああああ!!!!






西門前




時刻は夕刻。

血生臭い地面を駆け回り魔獣の攻撃をすり抜け、魔獣の死骸をアイテムボックスに回収し、冒険者の足回りを整え負傷した冒険者へポーションを補充する。

所々へし折れた倒木もアイテムボックスに入れ戦闘しやすいように一箇所にまとめ死角を作る。

危なっ!!

倒木を拾うため森の方に深入りしてしまった所森の奥の方から矢のような魔法が飛んで来た。

一つは避けて体に当たりそうな物は防御魔法で防ぐ。

防いだら今度は地面から蔓が伸びて来た。

足に絡みつく蔓を魔法で燃やす。 凌いだと思ったら次は木の実が豪速球で飛んできた。

避けた木の実は人の胴体ほどの太さが有る木に当たった。 当たった箇所は穴が空き木はそのままゆっくりと傾きズシンと倒れた。

ダークウルフの群にトレントの群にオーガツリーの群……森の外にいる奴とはまた違った奴が出て来た。

どれも臨戦態勢。 一人じゃきついって!!

ジリっと後ずさると魔獣との間に暴風が吹き荒れた。

「涼!! 一人で森の中に行くな!!」

声をかけて来たのはAランクのテルシュとBランクの双子の魔術師マリアとルリアだ。

「悪い助かった!!」

「一旦森から出るよ」

マリアは魔力ポーションを飲むともう一度暴風を魔獣に向けて放った。

「シルクスパイダーの布は好きだけど魔獣は嫌い」

森から出てすぐ遭遇したシルクスパイダーの群に向かってルリアはそう言うと水魔法を使ってを窒息させて行った。

「涼、魔力ポーション無くなった」

「今出す!」

マリアとルリアにアイテムボックスから魔力ポーションを渡した。

「「ありがとう」」

「涼…… 今でもかなり助かっている……だから無茶して勝手にあっちに帰るなよ!! 分かったな!!」

「ああ!! テルシュも気を付けて!! 終わったら飲もうな」

そう言ってテルシュ達と別れた。

仕留められたシルクスパイダーをアイテムボックスに収納する。

これで踏んで足止めを喰らうことはないだろう。

ふぅ……と息を整えてまた冒険者のサポートに繰り出した。

と森に向けて背を向けたら森から爆発音が響いた。

何事かと振り返ると……

「春子さん?」

「あら? 涼君はここに居たの」

土煙が上がる中で涼しい顔をした春子さんが立っていた。

「後ろ!! 危なっ……」

倒れた大木の後ろからオーガツリーが春子さんに向けてその実を発射した。

「大丈夫」

言葉が聞こえた後にこっちにまで熱が伝わって来た。

その実は春子さんに当たる前に燃え尽きてしまった。

炎は実だけで無くオーガツリーまで伸び果ては近くにいたトレントをも巻き込み次々に燃やしていく。

間近で見ていたダークウルフ達は奥へと逃げて行った。

「私は森の中で間引きに行くわ。 涼君も無理しないでね」

「あ……はい?」

春子さんの背中を呆然としながら見送った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界に召喚されたんですけど、スキルが「資源ごみ」だったので隠れて生きたいです

新田 安音(あらた あのん)
ファンタジー
平凡なおひとりさまアラフォー会社員だった鈴木マリは異世界に召喚された。あこがれの剣と魔法の世界……! だというのに、マリに与えられたスキルはなんと「資源ごみ」。 おひとりさま上等だったので、できれば一人でひっそり暮らしたいんですが、なんか、やたらサバイバルが難しいこの世界……。目立たず、ひっそり、でも死なないで生きていきたい雑草系ヒロインの将来は……?

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

雪月 夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

異世界のんびりワークライフ ~生産チートを貰ったので好き勝手生きることにします~

樋川カイト
ファンタジー
友人の借金を押し付けられて馬車馬のように働いていた青年、三上彰。 無理がたたって過労死してしまった彼は、神を自称する男から自分の不幸の理由を知らされる。 そのお詫びにとチートスキルとともに異世界へと転生させられた彰は、そこで出会った人々と交流しながら日々を過ごすこととなる。 そんな彼に訪れるのは平和な未来か、はたまた更なる困難か。 色々と吹っ切れてしまった彼にとってその全てはただ人生の彩りになる、のかも知れない……。 ※この作品はカクヨム様でも掲載しています。

25歳のオタク女子は、異世界でスローライフを送りたい

こばやん2号
ファンタジー
とある会社に勤める25歳のOL重御寺姫(じゅうおんじひめ)は、漫画やアニメが大好きなオタク女子である。 社員旅行の最中謎の光を発見した姫は、気付けば異世界に来てしまっていた。 頭の中で妄想していたことが現実に起こってしまったことに最初は戸惑う姫だったが、自身の知識と持ち前の性格でなんとか異世界を生きていこうと奮闘する。 オタク女子による異世界生活が今ここに始まる。 ※この小説は【アルファポリス】及び【小説家になろう】の同時配信で投稿しています。

こちらの世界でも図太く生きていきます

柚子ライム
ファンタジー
銀座を歩いていたら異世界に!? 若返って異世界デビュー。 がんばって生きていこうと思います。 のんびり更新になる予定。 気長にお付き合いいただけると幸いです。 ★加筆修正中★ なろう様にも掲載しています。

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

女子力の高い僕は異世界でお菓子屋さんになりました

初昔 茶ノ介
ファンタジー
昔から低身長、童顔、お料理上手、家がお菓子屋さん、etc.と女子力満載の高校2年の冬樹 幸(ふゆき ゆき)は男子なのに周りからのヒロインのような扱いに日々悩んでいた。 ある日、学校の帰りに道に悩んでいるおばあさんを助けると、そのおばあさんはただのおばあさんではなく女神様だった。 冗談半分で言ったことを叶えると言い出し、目が覚めた先は見覚えのない森の中で…。 のんびり書いていきたいと思います。 よければ感想等お願いします。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...