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第二章

95話目 間引き

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商業ギルドにて

「行ってくるわ」

「気を付けてくださいね」

「オーフェンもちゃんと魔道具付けててね」

「分かりました」

時刻は夜。

いつもなら仕事帰りの人たちでにぎわう時間帯だが今は人っ子一人歩いていない。

それもそのはず。 街の人たちは明るいうちに教会等に避難している。

目立たないように暗い色の服を着て闇に紛れる。

各門の周りには魔道具で照らされている。

気づかれないように風魔法を使い城壁へと上がる。

「凄い数ね……」

暗いせいで正確な数は分からない。 というかどこからが魔獣でどこからが森なのか判断がつかない。

西門だけでこれだ。 他の門にもどれだけ押し寄せてるのか……。

幸い設置されている魔道具のお陰で街へ入ってきた魔獣は居ない。 

だけどいつまで持つか……。

「まぁ……目立たないように出来るところまで頑張るしかないわね」

そうつぶやき城壁から外へと飛び降りた。



冒険者ギルド

地下の練習場にて

「灯里魔力は大丈夫か?」

「はい。 大丈夫です。 次は誰ですか?!」

「すまない! こっちだ!!」

「こっち手が空きました」

空気が停滞しやすい地下は今血の匂いが充満している。

軽傷から重傷者までかなりの人数だ。

顔なじみの神官と共に治療に当たり何とかなっている。

今までの治療日の練習が生きてきている。

幸い死者は居ない。

そして少しづつ怪我人は減ってきている。

それは戦闘の終わりではなく籠城による戦闘の減少の為。

今ここに居る怪我人を治したら少しでも休憩しなくちゃ……魔力は残ってても体力切れで動けなくなっちゃう。

本番はまだなのに……。

最後の軽症者の怪我の手当てを終え手で汗をぬぐいその場に腰を下ろした。




王都

時刻は夕暮れ

閉門間際に門をくぐり外に出てそのまま街道を歩き人目がつかないところで森の中へ歩みを進めた。

そしておもむろにしゃがむ相良さん。

その背に乗った。

「本当にこのまま行くんですか……?」

相良さんにおぶさりながら話をする。      

「このまま行きますよ。 防御魔法をお願いしますね」

「はい……」

二人の周りを覆うようにして防御魔法を張る。

それを確認して相良さんは風魔法を使用した。

「わわっ!!」

「暴れないで下さいね」

足が地面から遠ざかる。

木々の上に出ると止まるのかと思いきやさらに上昇した。

「何処まで行くのですか!?」

「木よりギリギリ上だと大きい木にぶつかるかもしれないからね。 もう少し上まで行くよ」

怖い怖い怖い!!

5階建のビルの屋上から下を見た感じだ。

中途半端に地上の形が分かるから怖い。

「これくらいでいいですかね。 透聞こえますか?」

相良さんの耳には倉敷さんが作ったイヤーカーフ型の通信機が着けられている。

この通信機は対の物じゃないと通信出来ないらしい。

もう二組出して一つは私と倉敷さん、残る一つは私と相良さんで着けた。

これで三人で通信が出来る。

出来るが意外と不便。

「おう」

「今から行ってきますね」

「素材まるこげにするんじゃねーぞ」

「…………」

「……おい」

「行ってきます!」

「おい!」

相良さん楽しそうだからね。 言っても聞かないよこれ。

「行ってきます!」

「おい! 桜お前もか!! ちゃんと止めろよ!!」

「しっかり掴まってて下さいね。 何かあったら手で合図して下さい。 口はしっかり閉じて下さい。 舌噛んでもしりませんよ」

「えっ……ひゃ……びゃああああああああ」

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