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第二章
89話目 慌てる人達
しおりを挟むとある子爵邸にて
「どう言うことだ?」
「どうやら他の依頼も全て終わらせたようです」
「なっ………!! 全部だと?!」
執事が持ってきた報告書に目を通し確認する。
本当に納品されている……。
どうなってるんだ? 確か依頼数だけでもそれなりにあった筈だが……。
数百だぞ?! たかが二人で数日でできるはずがないだろう!!
別の貴族邸にて
「見ろ。 あの無茶な量終わらせたみたいだぞ」
執事から渡された紙を客人として来ていたノルベールに渡す。
「ははっさすが渡り人だな。 あのモーリス子爵が悔しがってる顔が目に浮かぶな」
栗色の髪に緑色の瞳、歳の頃は20代半ば頃客人として来ていたノルベールは楽しそうに笑う。
「子爵はあの魔法を欲しがってたからな」
ダークグレーの髪と瞳、歳の頃は30代半ばの屋敷の主人は口元に笑みを浮かべてそう述べた。
「レシピ産の魔道具は強力だからね。 そう言う君は良いのかい?」
「無理に連れて来て逃げられたら困るからね……そう言うノルこそ良いのか?」
渡り人は魔力を使いきればあっちの世界に逃げられてしまう。
逃げるために無理矢理魔力を使い切った為、焦土と化した屋敷も少なくない。
渡り人はそれ自体が魔道具と一緒だ。
取扱に注意せねばならない。
「僕かい? 魔道具は欲しいけど……そんな冒険したくないね」
危険を冒すくらいなら普通に依頼するよと笑った。
爵位が上がれば上がるほど渡り人に対する扱いは慎重になる。
「せめて残りの魔力量が分かればな……」
桜達が街を出て数日後の冒険者ギルド
コンコンッ
「なんだ」
「森に向かった冒険者からの報告です」
渡り人が現れる森の様子がおかしい。
桜が来てその分のスタンピートは終えた筈だった。
事実魔獣の数は減った。
問題はその後だ。
渡り人が来る前兆と同じく消えたのだ。
通常通り冒険者の選定を終え捜索を開始した。 今日で三日目。
この頃いつもなら魔獣はほとんど出ない筈だ。 なのに……
「コボルトの群れだと……?」
「はい。 昨日はフォレストウルフの群れでした」
次々に魔獣が湧いている。
幸いスタンピート前の様に動きが鈍く遭遇した冒険者で対応出来た。
ドンドンッ!!
乱暴に扉を叩く音がした。
「次はなんだ!?」
「ギルマス! 報告します。 渡り人捜索に向かったBランクのライル達がゴブリンの集落を発見したそうです」
「ゴブリンの集落?! 場所と規模は!」
「場所は湖を超えるから……ここから南東方面に5km程、えーっと規模は…………数百」
「はっ?!前回のスタンピートからまだ日は経ってないだろ!!」
「まだ動きは鈍いそうです……いかが致しますか?」
と言うことはまだ増えるって事だな……。
数百……上位種が生まれる可能性高いな……。
「地図を持って来い! 今現在の捜索隊の位置と魔獣の位置を把握、整理するのが先だ」
ドンドンッ!!
「ギルマス失礼します!」
報告に来た二人の職員を押し除け息を切らしながら机の前に来る職員。
「今度はなんだ!」
「フォレストウルフの群れがまた出ました! 昨日より増えてます!!」
「それぐらい対処できるだろ」
「それが上位種が混じってます……」
「上位種……っウィンドウルフか……?」
「いえ……」
「ダークウルフかっ!! 」
「そうです」
よりによってダークウルフか。
「位置は何処だ!! 誰が見つけた!!」
「見つけたのはB級冒険者のヴァル達です。 一戦交えて撤退してきました……今灯里さんが手当てしてます」
撤退……ってことは残党が残ったって事か。 まあ命が無事なことを喜ぼう。
これが仮にスタンピートの序盤だとするとまだまだ増えるぞ……。
「領主様、他のギルドにも連絡だ。 冒険者には緊急依頼を出せ! 森には立ち入り制限をかけろ!!」
「分かりました!!」
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