異世界でお取り寄せ生活

マーチ・メイ

文字の大きさ
上 下
89 / 274
第二章

89話目 慌てる人達

しおりを挟む
     

とある子爵邸にて

「どう言うことだ?」

「どうやら他の依頼も全て終わらせたようです」

「なっ………!! 全部だと?!」

執事が持ってきた報告書に目を通し確認する。

本当に納品されている……。

どうなってるんだ? 確か依頼数だけでもそれなりにあった筈だが……。

数百だぞ?! たかが二人で数日でできるはずがないだろう!!





別の貴族邸にて


「見ろ。 あの無茶な量終わらせたみたいだぞ」

執事から渡された紙を客人として来ていたノルベールに渡す。

「ははっさすが渡り人だな。 あのモーリス子爵が悔しがってる顔が目に浮かぶな」

栗色の髪に緑色の瞳、歳の頃は20代半ば頃客人として来ていたノルベールは楽しそうに笑う。

「子爵はあの魔法を欲しがってたからな」

ダークグレーの髪と瞳、歳の頃は30代半ばの屋敷の主人は口元に笑みを浮かべてそう述べた。

「レシピ産の魔道具は強力だからね。 そう言う君は良いのかい?」

「無理に連れて来て逃げられたら困るからね……そう言うノルこそ良いのか?」

渡り人は魔力を使いきればあっちの世界に逃げられてしまう。

逃げるために無理矢理魔力を使い切った為、焦土と化した屋敷も少なくない。

渡り人はそれ自体が魔道具と一緒だ。

取扱に注意せねばならない。

「僕かい? 魔道具は欲しいけど……そんな冒険したくないね」

危険を冒すくらいなら普通に依頼するよと笑った。

爵位が上がれば上がるほど渡り人に対する扱いは慎重になる。

「せめて残りの魔力量が分かればな……」





桜達が街を出て数日後の冒険者ギルド


コンコンッ

「なんだ」
                                   
「森に向かった冒険者からの報告です」

渡り人が現れる森の様子がおかしい。

桜が来てその分のスタンピートは終えた筈だった。

事実魔獣の数は減った。

問題はその後だ。

渡り人が来る前兆と同じく消えたのだ。

通常通り冒険者の選定を終え捜索を開始した。 今日で三日目。

この頃いつもなら魔獣はほとんど出ない筈だ。 なのに……

「コボルトの群れだと……?」

「はい。 昨日はフォレストウルフの群れでした」

次々に魔獣が湧いている。

幸いスタンピート前の様に動きが鈍く遭遇した冒険者で対応出来た。

ドンドンッ!!

乱暴に扉を叩く音がした。

「次はなんだ!?」

「ギルマス! 報告します。 渡り人捜索に向かったBランクのライル達がゴブリンの集落を発見したそうです」

「ゴブリンの集落?! 場所と規模は!」

「場所は湖を超えるから……ここから南東方面に5km程、えーっと規模は…………数百」

「はっ?!前回のスタンピートからまだ日は経ってないだろ!!」

「まだ動きは鈍いそうです……いかが致しますか?」

と言うことはまだ増えるって事だな……。

数百……上位種が生まれる可能性高いな……。

「地図を持って来い! 今現在の捜索隊の位置と魔獣の位置を把握、整理するのが先だ」

ドンドンッ!!

「ギルマス失礼します!」

報告に来た二人の職員を押し除け息を切らしながら机の前に来る職員。

「今度はなんだ!」

「フォレストウルフの群れがまた出ました! 昨日より増えてます!!」

「それぐらい対処できるだろ」

「それが上位種が混じってます……」

「上位種……っウィンドウルフか……?」

「いえ……」

「ダークウルフかっ!! 」

「そうです」

よりによってダークウルフか。

「位置は何処だ!! 誰が見つけた!!」

「見つけたのはB級冒険者のヴァル達です。 一戦交えて撤退してきました……今灯里さんが手当てしてます」

撤退……ってことは残党が残ったって事か。 まあ命が無事なことを喜ぼう。

これが仮にスタンピートの序盤だとするとまだまだ増えるぞ……。

「領主様、他のギルドにも連絡だ。 冒険者には緊急依頼を出せ! 森には立ち入り制限をかけろ!!」

「分かりました!!」 
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

雪月夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

異世界でフローライフを 〜誤って召喚されたんだけど!〜

はくまい
ファンタジー
ひょんなことから異世界へと転生した少女、江西奏は、全く知らない場所で目が覚めた。 目の前には小さなお家と、周囲には森が広がっている。 家の中には一通の手紙。そこにはこの世界を救ってほしいということが書かれていた。 この世界は十人の魔女によって支配されていて、奏は最後に召喚されたのだが、宛先に奏の名前ではなく、別の人の名前が書かれていて……。 「人違いじゃないかー!」 ……奏の叫びももう神には届かない。 家の外、柵の向こう側では聞いたこともないような獣の叫ぶ声も響く世界。 戻る手だてもないまま、奏はこの家の中で使えそうなものを探していく。 植物に愛された奏の異世界新生活が、始まろうとしていた。

外れスキル『収納』がSSS級スキル『亜空間』に成長しました~剣撃も魔法もモンスターも収納できます~

春小麦
ファンタジー
——『収納』という、ただバッグに物をたくさん入れられるだけの外れスキル。 冒険者になることを夢見ていたカイル・ファルグレッドは落胆し、冒険者になることを諦めた。 しかし、ある日ゴブリンに襲われたカイルは、無意識に自身の『収納』スキルを覚醒させる。 パンチや蹴りの衝撃、剣撃や魔法、はたまたドラゴンなど、この世のありとあらゆるものを【アイテムボックス】へ『収納』することができるようになる。 そこから郵便屋を辞めて冒険者へと転向し、もはや外れスキルどころかブッ壊れスキルとなった『収納(亜空間)』を駆使して、仲間と共に最強冒険者を目指していく。

異世界で農業をやろうとしたら雪山に放り出されました。

マーチ・メイ
ファンタジー
異世界召喚に巻き込まれたサラリーマンが異世界でスローライフ。 女神からアイテム貰って意気揚々と行った先はまさかの雪山でした。 ※当分主人公以外人は出てきません。3か月は確実に出てきません。 修行パートや縛りゲーが好きな方向けです。湿度や温度管理、土のphや連作、肥料までは加味しません。 雪山設定なので害虫も病気もありません。遺伝子組み換えなんかも出てきません。完璧にご都合主義です。魔法チート有りで本格的な農業ではありません。 更新も不定期になります。 ※小説家になろうと同じ内容を公開してます。 週末にまとめて更新致します。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

聖女の紋章 転生?少女は女神の加護と前世の知識で無双する わたしは聖女ではありません。公爵令嬢です!

幸之丞
ファンタジー
2023/11/22~11/23  女性向けホットランキング1位 2023/11/24 10:00 ファンタジーランキング1位  ありがとうございます。 「うわ~ 私を捨てないでー!」 声を出して私を捨てようとする父さんに叫ぼうとしました・・・ でも私は意識がはっきりしているけれど、体はまだ、生れて1週間くらいしか経っていないので 「ばぶ ばぶうう ばぶ だああ」 くらいにしか聞こえていないのね? と思っていたけど ササッと 捨てられてしまいました~ 誰か拾って~ 私は、陽菜。数ヶ月前まで、日本で女子高生をしていました。 将来の為に良い大学に入学しようと塾にいっています。 塾の帰り道、車の事故に巻き込まれて、気づいてみたら何故か新しいお母さんのお腹の中。隣には姉妹もいる。そう双子なの。 私達が生まれたその後、私は魔力が少ないから、伯爵の娘として恥ずかしいとかで、捨てられた・・・  ↑ここ冒頭 けれども、公爵家に拾われた。ああ 良かった・・・ そしてこれから私は捨てられないように、前世の記憶を使って知識チートで家族のため、公爵領にする人のために領地を豊かにします。 「この子ちょっとおかしいこと言ってるぞ」 と言われても、必殺 「女神様のお告げです。昨夜夢にでてきました」で大丈夫。 だって私には、愛と豊穣の女神様に愛されている証、聖女の紋章があるのです。 この物語は、魔法と剣の世界で主人公のエルーシアは魔法チートと知識チートで領地を豊かにするためにスライムや古竜と仲良くなって、お力をちょっと借りたりもします。 果たして、エルーシアは捨てられた本当の理由を知ることが出来るのか? さあ! 物語が始まります。

処理中です...