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第二章
83話目 王都の魔道具店
しおりを挟む「ここです」
相良さんと共に訪れた場所は平民街と商人街の間にある場所だ。
平民街の街並みも少し見える。
集合住宅みたいな感じで、そこから見える空には二つの集合住宅の間に張られたロープにかけられた洗濯物がたなびいている。
護衛としてハンスさんとユリウスさんが着いてくれた。
扉を開けてもらいお店の中に入る。
ちょっと埃っぽい。
私が入ったところで、
「ハンスさんとユリウスさんはここまでで大丈夫です」
と相良さんが言った。
「いや、終わるまで待ってるよ」
「魔道具店ですよね。 見てますよ」
「なら……申し訳ないのですが店の中でなく向かいのカフェでお待ち頂けますか?」
ん? と思って三人を振り返ってみる。
魔道具作成って時間かかるのか? まあすぐには出来ないよね? 依頼して出来上がったら取りに来る形なんじゃないのかな? ハンスさん達返す意味ってなんぞ?
首を傾げて見ていたらハンスさん達は向かいのお店の方へ行ってしまった。 話がついたらしい?
「お待たせしました」
「魔道具依頼ってそんなに時間かかるんですか?」
相良さんはにっこり笑った。 相良さんのこの笑顔はなんか怖い。
薄暗い室内を先導するように歩き奥へ行く相良さん。
不思議に思いながら後をついて行った。
「失礼するよ」
少し明かりが漏れている部屋の扉を開けて中に入る相良さん。
「ん? あぁ……相良か。 なんだ? 魔道具ならまだだぞ」
中から聞こえたのは無愛想な男性の声だ。
「魔獣の素材でも持ってきてくれたんか?」
別の声も聞こえた。 年配の男性の声だ。
「素材は持ってきてないです」
「渡り人が来たんじゃろ? スタンピートの素材は出なかったんか?」
「今回は狼系が多かったみたいですが魔石も持ってきてません」
「何もか?」
「毛皮も牙も魔石も無いです」
「……何しにきたんだ? ただでさえ貴族どもからの催促が面倒くせぇんだ……暇潰しだったら殴るぞ」
「イライラしなさんな。 手を痛めたら道具作れなくなるじゃろ」
というか私ドアの前で待ちぼうけ? どのタイミングで入ればいいの?
「そうだ。 お茶……僕お茶入れてくるよ」
さらに別の男性の声がした。 部屋には相良さん以外で三人いるのか?
ドアノブが周りドアが開いた。
「あれ?」
「こ……こんにちは?」
なんか気まずい。 いや、盗み聞きするつもりはなかったんだよ? 入るタイミングがなかったんだよ!!
心の中で言い訳をした。
室内に入れてもらうとそこには素材やら作りかけの魔道具やら図面やらが雑多に置かれていた。
作業机が二つあり一つは渡り人と思われる目つきの悪い男性が、もう一つの作業机には中年の背の低い赤茶髪の髭面の男性が座っていた。
「粗茶ですが……」
お茶を入れて戻ってきた男性も渡り人っぽい。 少し気が弱そうに見える。
真ん中に置かれている机の上にお茶を置いてくれた。
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