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第二章
75話目 物々交換
しおりを挟む「お肉取ってきたよー!」
「お帰り」
野営場所に戻るとテントが一つ張られ近くには火が起こされていた。
「ハンス、ユリウス手空いてるー?」
「おう」
「なんですか?」
火のそばで腰掛けていた二人が立ち上がりこちらにきた。
「血抜きするから手伝って」
「そんじゃ少し離れるか。なに取ってきたんだ?」
「んふふふー、イキのいいレッドボアちゃんだよー!」
「レッドボアか。良いの見つけたな」
「えへん」
腰に手を当て自慢げに言うイリスさん。
野営場所から少し離れ吊り下げるのに良さそうな木を選び側まで行くとユリウスさんが地面に穴を掘った。
「そんじゃ桜アイテムボックスから出して」
「はーい」
アイテムボックスからレッドボアをゴロンと出す。
「これはまた食べ応えありそうだな」
「お酒が進みま……あ、野営だから無理ですね」
ハンスさんが自身のアイテムボックスからロープを出し木に引っ掛けレッドボアの足に結んだ。
それを皆んなで引っ張り上げる。
吊り下げられたレッドボアから血を抜くと私が洗浄の魔道具で穴を綺麗にした。
「桜、見てても平気?」
「何をですか?」
「解体」
「!!……うー……見ます」
「無理すんなよ。誰でも初めは胃にくるからな。気持ち悪くなったらクイナのとこに行って休んでな」
「ありがとうございます」
三人掛りで解体するのをしっかりと見た。 気持ち悪くはなったけど。
「結構な量になったな」
「肉祭りだー!わーい」
解体が終わってお肉をあらかたアイテムボックスに仕舞う。
毛皮に骨、牙、魔石も取れた。
今手元にあるのはハンスさんが両手で持ってるブロック肉だ。
アイテムボックスにはこの塊が数十個入っている。道中食べ切れるか怪しい量だ。時間停止されてるから消費期限ないんだけどね。
後始末を終え野営場所に戻る。
「おかえりなさい」
クイナさんがお湯を沸かし相良さんと一緒にお茶の用意をしていてくれた。
ほうじ茶だ。
クイナさんが敷いてくれたシートに座りコップを受け取りお茶を飲み休憩をした。
「あの……」
皆んなで休憩していると商隊の方から人がやって来た。
「何でしょうか?」
「先程レッドボアを倒したと聞いたのですが……」
「そうですが」
戦闘など無縁の装いの細身の中年の男性に対しハンスさんが対応する。
「私達の主人がお話ししたいと仰ってるのですが少し宜しいでしょうか?」
ハンスさんの後ろで私たちは顔を見合わせる。
食料でも足りないのかな?
あっちの人数多そうだしね。
分けても大丈夫な量だけど。
ハンスに任せるか。
とハンスさんが男性についていったのでその間にこそこそ話す。
あちらの商隊で白い服を着た恰幅の良さそうな男性と話をするハンスさん。
こちらに背を向けているので表情は見えないが男性の表情を見る限り話が弾んでいるようだ。
そうして見ていると話が決まったらしくハンスさんはアイテムボックスから肉の塊を数個渡していた。
代わりに男性は別の人に指示を出して持ってこられたアイテムボックスから壺をハンスさんに渡していた。
どうやら物々交換らしい。
商人と握手を交わし、その後商隊の護衛らしき冒険者と話をしてハンスさんは戻ってきた。
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