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第二章
74話目 イリスさんとレッドボア
しおりを挟む「今日はこの辺りで野宿ね」
馬を繋ぎ、幌馬車を覗きに来たイリスさんとクイナさん。
「うわぁー」
「私たちより酷いわね」
幌馬車を覗き込むイリスさんとクイナさん。
そこにはビーズクッションを抱きしめてお腹にブランケットを掛け眠るユリウスさん、一騎討ちで対決を始めていたハンスさんと相良さん、ビーズクッションを抱え込み飲み物飲みながら観戦する私が居た。
「だあー負けた!」
「まだまだですね」
日が暮れ始めた頃に道幅が広くなった場所に幌馬車を止めて野営の準備をする。
幌馬車とハンスさん達の自前のテントを使用する。
街に向かう商隊も居て野宿にしては賑やかだ。
「ハンスはかまどの準備を、ユリウスは起きて! テントの準備するわよ」
「私は薪探してくるー」
「イリスさん私も行っていいですか?」
「いいよー!」
私とイリスさんは近くの森の中に薪用の枯れ枝を探しに行った。
森の中は意外と手入れが行き届いていた。
「もっと歩きにくいかと思ってました」
「あははは、まあ街道沿いだからねみんな薪探したりして踏み歩くしね」
クイナさんは木に登り折れ掛けの枝をぽっきり手折った。
「それ良いんですか?!」
「え? うん。 落ちる前に折ってた方が安全でしょ?」
「そうですけど……生木使えるんですか?」
「あー大丈夫大丈夫! ユリウスに乾かしてもらうから」
にっこり笑って次の枝に軽々と飛び移った。
「あ! なんかあっちからお肉の匂いがする! 桜行くよー」
クンクンと匂いを嗅ぐ仕草をするとヒョイと木から飛び降り奥の方へ走り出すイリスさん。
「え?! あ……ちょっ……!!待って下さい!」
その後を慌てて追っていった。
走ること10分かろうじて姿を追えてたイリスさんがようやく足を止めた。
息を切らして木に手をついてイリスさんを見る。
「レッドボア発見ー」
イリスさんが対面するのは私の背丈よりも大きい赤い毛並みの猪だ。
興奮状態らしく前足で地面を掘っている。
うわぁ……でっかい。
体当たりされたらスプラッタになりそう。
重量的に軽自動車に衝突されるのと同じだよね?
イリスさんは腰につけていた剣帯から小型の剣を取り出し構える。
こちらからは後ろ姿しか見えないので表情はわからない。
念のため使えるようになった防御魔法を自分の周りに発動させた。
次の瞬間レッドボアが動いた。
意外と瞬発力がある。
あっという間にイリスさんに重量級のレッドボアが迫る。
ぶつかる!!
そう思ったらイリスさんが消え、レッドボアはイリスさんが居た場所を物凄いスピードで通過した。
あれ? イリスさんはどこだ? と辺りを見渡していたら通過したレッドボアがズシンと音を立てて倒れた。
えっ!? と見るとレッドボアの傍にイリスさんが無傷で立っていた。
「お肉ゲットー!」
赤く染まった剣を掲げ喜んでいる。
なにがあったの?!
防御魔法を解きイリスさんに近づくと気づいた。
レッドボアの首に傷がついて辺りが赤く染まっていた。
「桜のアイテムボックスにこれ入れられる?」
「は……入りますよ」
あんぐりと開いた口から返答を捻り出して答えた。
「じゃあ一回戻ってハンス達に血抜き手伝って貰おうー!」
にひひと笑って剣についた血飛沫を払い剣帯に仕舞うイリスさん。
服にもついていたので私が洗浄の魔道具を出して綺麗にした。
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