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第二章

70話目 満喫2

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「カラオケ行かないか!」

部屋で休んでいるとドアがノックされ高梨さんが誘いに来た。

一階にあるカラオケルームへのお誘いだ。

「行けるの?カラオケって予約制じゃないの?」

「今相良さんが確認しに行ってる。 オーフェンさんも居るしせっかくだから行かないかなって思ったんだけどどう?」

「行く!」

灯里が乗り気だ。

「桜も行こう!」

私の浴衣の袖を引っ張ってはしゃぐ灯里。

「私も参加で」

「了解。じゃあ時間分かったら知らせにくるな」

「「はーい」」





「カラオケとは……?」

「歌うことですよ」

時刻は21時過ぎ部屋が空いたと言うことでみんなでカラオケルームに来ていた。

ほろ酔いのオーフェンさんは今から何が始まるのかとキョロキョロしていた。

ソファーに腰掛け高梨さんが飲み物を注文し各々曲を入力していった。



何曲か歌いふと気付いた。

「オーフェンさん……読めてる?」

テレビに映った歌詞を楽しそうに口ずさんでいるようだ。

私の歌う番が来たがちょっとそれどころじゃない。

イントロが流れるのをぶった切ってマイクで聞く。

「オーフェンさんもしかして文字読めてますか?」

みんな酔っ払いだらけで気づいてないようだったがその発言で一斉にオーフェンさんを見た。

「読め…………読めてる!」

聞かれた瞬間にはアルコールで何を聞かれたのかよく分からない様子だったが、発言を復唱し自分でもおかしい事に気付いたようだ。

音量を落としテレビに映った歌詞を指さす。

「これはなんて書いてありますか?」

「大きな力で」

「「「「読めた!?」」」」

異世界じゃこちらの文字は読めなかったはず?

こちらに来たら読めるとは何で? 魔法の力?

「そう言えばテレビも普通に聞けてたわね……」

「って事は話もできるの?!」

カラオケタイムはお開きになって検証タイムになってしまった。

その後は売店でおつまみやお酒を買い込み相良さん達の部屋に行った。

「これにはこんなことが書いてあったんですね」

文字が読めると気付いてからはオーフェンさんは色んなものの説明を読み始めてしまった。

「ついでにこれも読みます?」

私はタブレットを差し出しこの間取ったウイスキーや焼酎の作製工程を見せた。

「あぁ……読めます」

操作方法を教えるとスクロールしながら読み込み始めた。

「これが出来るようになったらあちらの世界でも果実酒が作れるようになりますね」

「覚えて帰らないとな」

「春子さんはそのまま読めるのでプリントアウトして……いえネット通販してお渡ししますね」

「は?」

「私の能力はお取り寄せですもん。こっちで購入したものはあっちで出せますもん」

「あ…あぁ……お願いする」

「さてとそっちの話は済んだかな?」

私とオーフェンさんの話が付いたところで相良さんが口を開いた。

ちなみにテーブルには売店で買ったお酒やらが並んでいた。

購入費用は私が出した。あとで取り寄せ出来るようにするために。

「では冒険者ギルドの件ですが……」

そう言って切り出した話題は先日のSランク冒険者のシリウスさんの件だった。

相良さんの特訓の方が怖くてすっかり忘れていたよ。

相良さんの話を聞いたオーフェンさんは頭を抱えていた。

まず冒険者ギルドからの罰は今はまだ保留らしい。

というのもガドラスさんは処分したがっているのだがSランクとなると一介の冒険者ギルドでは裁けないらしく冒険者ギルドの本部にて処分が決まるらしい。

そこで議題に上がったのが私の能力と灯里の能力。

私は取り寄せ、灯里は回復。

冒険者ギルド的には取り寄せよりも回復の方が重要と位置付けたみたいだ。まぁ体が資本だしね。

灯里は今まで冒険者ギルドで献身的に尽くしていたのも評価されていた。

一方私は来たばかりで欲まみれと言う印象らしい。まあ当たってるけど。

上の人達はその欲まみれが灯里に影響を与えて今までのように従順じゃ無くなるのを恐れているらしい。

今まで欠損とか身体異常を全て回復させられたのが出来なくなると困るとの事だ。

ちなみに冒険者ギルドに居る灯里と同じような能力の渡り人は王都に二人だけらしい。

そしてSランクの冒険者が居なくなるのもまた困るとの事らしい。

よって上の人達はシリウスさんを排除すると言う考えはなくむしろ悪影響を排除しようとした事を褒めていたそうだ。

今は謹慎中だが近いうちに解除される見通しらしい。

「何じゃそりゃ!!」

忘れていた怒りが沸き立って来た。

「酷いな」

「全くです」

「本部は老害ばかりだからな……」

はっと我にかえり、そんな話を灯里が聞いて大丈夫なのかなと思って灯里を見ると仄暗い瞳をしていた。

「灯里……?」

「私ね。今特訓してるの」

「うん……?」

「今までは回復魔法以外に魔力を使う事なんて考えた事なかったんだ」

「うん」

「だから桜もうちょっと待ってね。もうちょっとコツを掴めたら処せるから」

「う……うん?」

灯里静かに怒ってる。何?何のコツを掴もうとしてるの?!

周りのみんなもそんな灯里の怒気に押されていた。

「私も防御魔法使えるようになって来たから大丈夫だよ!灯里も無理しないでね」

「うん!」

「まあ……桜さんの能力が公表されたら手のひら返ししそうですけどね」

呆れたようにそんな事を相良さんが言った。

「能力? 確かに……こちらの世界に来れるとなったら流石の冒険者ギルドの上のやつらも貴族達から槍玉に挙げられるだろうな」

そこにオーフェンさんが食いつく。

「違うんですよ……」

哀愁を漂わせた目でオーフェンさんを見つめそっと視線を外した相良さん。

「違う?」

そんなオーフェンの今後の苦労がオーフェンを除くみんなが分かっている為、皆が憐れみを込めた目で見た。

「何ですか」

怪訝そうな顔をするオーフェンさん。

「こっちに来た時間が17時前ですよね。明後日の朝まで時間もある事ですし明日別の宿に行きますか?」

そっとテーブルの上にカタログギフトを出した。

「なんだなんだ?」

オーフェンさんを除く皆は意味を理解している為慈愛に満ちた笑みで承諾した。
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