異世界でお取り寄せ生活

マーチ・メイ

文字の大きさ
上 下
71 / 274
第二章

71話目 2軒目

しおりを挟む




次の日早めにチェックアウトして相良さんのお店に戻ると決めていた旅館の申し込み番号を入力し再び別の温泉へ向かった。

先に着いた私と灯里、次に来たのがオーフェンさんと春子さん、最後に相良さんと高梨さんが到着した。

「桜見て!」

「うわっ!!」

フロントは5階にあるらしくラウンジにはウッドデッキがあり美しい山並みが見えた。

そちらに行って二人でソファーに腰掛ける。

景色に魅入ってると不意に肩に手を置かれた。

「桜さん。ちょっとお話宜しいですか?」

オーフェンさんだった。

何かに耐えたような押さえた声をしている。あ、これ春子さんから聞いたな。

「何でしょうか?」

にっこり笑って振り返った。

「何故昨日教えてくれなかったんですか? 皆さん知ってましたね? 老骨に鞭を打つつもりですね?」

「お待たせお待たせ」

そこに相良さん達が合流した。

「入れ知恵はお前か相良!!」

クワッと牙を剥くオーフェンさん。

相良さんはあーと察した様子でこちらをちらりと見てオーフェンさんに視線を戻し微笑んだ。

「調整……頑張って下さい」

言われたオーフェンさんは何かを言おうと口をパクパクしてグッと口をつぐんだ。

何かを飲み込んで長いため息を吐いた。

「もういい……」

その様子を春子さんはやれやれと言った様子で見ていた。

「何かあったのか?」

受付をしていてそのやりとりを見ていなかった高梨さんがやって来たのでオーフェンさんが知ったんだよと教えてあげた。

皆んなでエレベーターまで行き2階の客室へ向かった。

「ここも凄いすごい!」

部屋の中は入ってすぐにダイニングがあり、その先にダブルサイズのベッド、その奥にオープンテラスと露天風呂があった。

室内は間接照明で灯りがとられ落ち着く雰囲気だ。

「灯里テラスに行こう」

「うん」

円形の檜の露天風呂の隣には座面が広くとられたソファーが置いてあった。

「風が気持ちいいね」

「そうだね」

「せっかくだから入っちゃう?」

「そうしようか」

服を脱ぐとシャワースペースで洗い湯船に浸かった。

「灯里灯里」

「何?」

「アイスいる?」

「いる!」

アイテムボックスからアイスとスプーンを取り出して二人で味わった。温泉入りながら食べるアイスは背徳感の味だった。

各々自由に時間を過ごして夕食を済ませるとガーデンラウンジに行った。

テラス席もあり木々がライトアップされている。

ここではカクテルや洋酒が注文できるようで各々飲んでみたいカクテルを注文した。

特に身分証などは要求されなかった。こっちにくる時もそうだけど魔法のおかげかな? まあいいや。


「さて……」

オーフェンさんが口を開いた。

「桜さんは今後の方向性として……何かやりたい事はありますか?」

「やりたい事ですか?」

「はい。 まず渡り人は不老です。 それは知ってましたか?」

「「「え?」」」

それに反応したのは私と灯里と高梨さん。

春子さんと相良さんは無反応だ。

「病気や怪我では死ぬから不死ではない。 が、老いはしない。 魔力を回復できると言う事はそれらに気を付ければ永遠にこちらにいられると言う事だ。 そんな中で桜さんは何がしたい。 何が望みだ?」

え……。

あ……そっか。

私短期の旅行と思ってた。

ちょっと行って魔力使って美味しいもの食べて珍しい所に行って楽しんで帰る。

魔力回復出来るって知ってチート来た! やった! って思ってた。

長く居られても寿命で死ぬんだと思ってた。

そっか……。

魔力を回復出来るって事はそういう事なのか。

「そしてこれは桜さんだけではなく他の渡り人の問題にもなってくる。高梨さん、本宮さん、あなた達も今後何がしたいですか?」

ハッとして二人を見た。

これは発端は私だけど他の人も私が巻き込んだんだ。

「私は元々オーフェンが死んだら戻るつもりだったわよ」

黙ったままの私達に向けて春子さんが言った。

「私は魔法を極めるつもりでしたよ」

元々魔力の回復方法を探してました。と言う相良さん。

「まあ、今すぐ答えを出せと言うのは無理な話です。それを考えて教えて下さい。それによって最終的な目標を決めます」

少なくとも灯里さんの魔力量がバレる前に決めて下さいねと苦笑しながらオーフェンさんに言われた。

これでこの話は終わり後はカクテルやお酒の話に移った。

私のやりたい事……。

みんなの話をぼんやりした頭で聞いていた。



宿泊し相良さんのお店に戻ってきた。

今は早朝だ。

オーフェンさんと春子さんは家に帰ってからギルドに行くと帰って行った。

高梨さんも家に帰って行った。

灯里は相良さんが送って行った。

私は防御魔法が使えるようになったので一人で家路についた。

私は何がしたいんだろう。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】

一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。 追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。 無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。 そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード! 異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。 【諸注意】 以前投稿した同名の短編の連載版になります。 連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。 なんでも大丈夫な方向けです。 小説の形をしていないので、読む人を選びます。 以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。 disりに見えてしまう表現があります。 以上の点から気分を害されても責任は負えません。 閲覧は自己責任でお願いします。 小説家になろう、pixivでも投稿しています。

ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀
ファンタジー
 雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。  場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

転生テイマー、異世界生活を楽しむ

さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】 事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。 神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。 作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。 「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。 ※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。

処理中です...