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第一章

39話目 孤児院と依頼1

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次の日

朝市で野菜を買い込むとハンスさん達が言っていた孤児院にやって来た。

場所は冒険者ギルドなどがある西区の外れ、だいぶ年季の入った二階建ての建物である。

近くまで来ると子供の賑やかな声が響いていた。

「ここかな?」

表の崩れた木の門を通りドアをノックした。

賑やか過ぎて聴こえないのか返答がない。

ドンドンッ!!

心持ち強めにノックする。

ガチャっ

「はーい」

ドアが開いた。

目線の高さに人がいない。そう思い目線を下げると女の子がいた。ちっちゃい。

「どちらさまですかー!」

元気よく対応してくれた。

目線を合わせるようにしゃがみ、

「先生に会いにきたんだよー先生はいるかな?」

と聞いてみた。

「居るよ!せんせーせんせー!!」

二パッと笑うとドアそっちのけで走っていってしまった。え?置いてけぼり?

声が遠ざかって行く。声が止むと…………


「ドア開けっぱなしで何やってるの!!危ない人だったらどうするの!!」

「ごめんなさいー」

怒声が聞こえた。

その後パタパタと足音が聞こえ、

「失礼致しました。……あら?」

グレーの髪を一つにきっちり纏め上げ眼鏡をかけた細身の年配の女性が現れた。

足元には先ほどの女の子が引っ付いている。

「オリバー先生ですか?」

「はい…そうですが?」

オリバー先生は怪訝な顔をした。





「貴女が昨日の方でしたか」

応接室っぽい場所に案内され腰を下ろす。

孤児院の室内は質素ながら丁寧に補修されており掃除も行き届いている。

先生の指導の賜物だろうなと辺りを見渡してそう思った。

オリバー先生はお茶を入れてくれ、一緒についてきた女の子は別の女の子と共に庭に遊びに行ってしまった。

「ごめんなさいね。アレクとユリナにはキツく叱っておいたわ」

ハンスさんの言った通りだ。

あははは…と愛想笑いで流しておいた。

「ところで…ご用件をお伺いしてもいいかしら?」

「あ…はい。こちらの子供達にお手伝いして欲しいことがありまして……お時間空いてますか?」

「まもなく掃除も終わるから空いてるけど…何をさせるつもりですか?」

警戒するようにこちらを見る。

「大したことじゃないです。果物の仕分けや加工を手伝って欲しくて…スタンピート前で手の空いてる子も多いと聞いたので」

果物の仕分け自体はアイテムボックスに入れればすぐ済むけど傷み具合や虫食いとかは仕分け出来ないもんね。

「果物の仕分けと加工?それならまあ…良いですけど…子供ですよ?」

「そんなに難しくは無いので子供で大丈夫です。今何人くらいお手伝い出来ますか?仕分け出来るなら何歳でもいいです」

「5歳から14歳までで………今なら…そう…16人かしら?」

おお!いっぱい居る!!

「でしたら金貨2枚でお願いします!」

確か果物採取Fランクで銀貨1枚だったはず。果物の仕分けならこれくらいで良いんじゃなかろうか?
無報酬は論外だし。

「金貨2枚。良いでしょう」

にこりと笑って席を立つオリバー先生。
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