上 下
36 / 274
第一章

36話目 ハンスさん達と食事会1

しおりを挟む
「おいしっ」

何品か味見をさせて貰った。

パプーのチーズ焼きは塩胡椒が効いてて美味しかった。

パプーのまろやかな甘味にピリッとした塩胡椒それを包むトロリと蕩けたチーズ。エールに合う!!

燻製も何の木を使ってるか分からないけど良い香りがする。

炒め物は野菜がシャキシャキしてて美味しい。

エールで流し込めば最高だね。

………エールの炭酸の弱いけど。

惜しい。惜しいなと思いつつつまみが美味しいから進むんだよね。

「あ、ハンスさん!果物ありがとうございます!」

ドタバタしてたせいで雑になっていたお礼を言う。

「皆さんに依頼受けて貰ってると思いませんでした」

「良いよいいよ。ついでだったし」

「そうそう!時期も良かったし」

「何ならもっとあるわよ」

「時期…?」

「今日行った場所が植物系の魔獣が出るポイントだったんだ。今の時期は大人しいから楽に狩れたよ」

え…?ハンスさんの言葉に手にしていた果物を見る。もしかしてこれって………。

「植物の魔獣の果物………?」

「そうだよー!」

「なかなかに美味でな」

「毎回採りに行くのよね」

「ら…ランクは……?」

「Aランクになるかな?」

Aランク!?

片手で持っていた果物を両手で持ち直す。

「あはははは!言ったろ。今の時期は大人しいって。スタンピートまで減らすために狩りに行ったんだ。いつものことさ」

「スタンピートになると凶暴になるからねー。美味しいのに」

「実も半分は潰れちゃうんだよね。美味しいのに」

「実に勿体無い。美味しいのに」

そんなに美味しいの……?

皆さんの顔と果物を交互に見る。柚子のような見た目の果物は色は黄色い。皮も少し硬めだ。

「ど…どうやって食べるんですか?このまま剥けばいいんですか?」

味見したいな。魔獣って言ったってもう既にお肉食べてるんだ。関係ないね!

「皮が硬いから刃物使って剥くのよ。見本見せるわね」

そう言ってクイナさんが自分の荷物から果物とナイフを取り出すと剥き始めた。

りんごの皮を剥くようにクルクルと回しながら剥き、柚子の果実のような実を半分に割くれた。

「どうぞ、食べてみて」

「いいんですか!ありがとうございます」

「まだまだいっぱいあるから」

一房取り口に含む。果肉を噛むと果汁が溢れた。

「濃い!」

味は蜜柑の味を濃くした感じで種もなく食べやすかった。

「魔獣だからか種ないんだよね。食べやすいでしょ」

「はい!」

「そう言えば採取依頼って足りたのか?これならまだいっぱいあるぞ?」

そう食べながらハンスさんが聞いてきた。

これでお酒っ作ったら美味しそう……。

「良ければ追加で買い取らせてもらえないですか?」

「良いぜ。お金はいいからどれくらい欲しい?」

「いや!お金は払います!」

「いいっていいって」

「じゃあ代わりに何か出しますか?」

「いやいやいやいや。前にもらった分を返させてくれよ」

それだとこちらが気持ちよく使えないじゃないか。だってこれ1kg白金貨1枚だもの。

他の人たちを見ても受け取ってもらえなさそうだった。

「こちらも流石にキロ単価白金貨1枚の物をタダで貰うわけにはいかないので…じゃあ代わりに円で支払ってもいいですか?」

「円?」

「はい。向こうの世界の通貨です」

ここで盗聴防止の魔道具を発動させた。

「私の魔法はあちらの通貨が基準になってます。白金貨1枚で十万円です。その分取り寄せで支払わせてください。受け取ってもらえないなら貰えません」

ハンスさん達は困ったような表情を浮かべた。

「分かった。それで手を打とう。ただし5kg分渡して白金貨1枚分。こちらの譲歩はそれまでだ」

何の譲歩だ!それだとこっちがお得になってるじゃないか!お得になってるのか?ん?

「ありがとうございます!」

「何がどうなってるのー?」

「さあ?」

イリスさんとクイナさんは私たちのやりとりを聞いて不思議そうな顔をした。私も同じ気持ちだよ。

「ここで見せてもらうわけにいかないから飯食ったら俺たちの家に行くか」

「はい!」

何とか丸く収まった。

「…ところで」

「?」

「今日のアレ、あいつらを庇うわけじゃないが…アイツらはアイツらで切羽詰まってたんだ」

「どういう事ですか?」

「今魔獣が少ないだろ?要するに暇なんだ。閑散期」

「仕事が少ないんですね」

「そう。余裕あるやつは休暇を取ったりよその街に出稼ぎするが…今日の奴らは孤児だからな…」

「孤児…」

「孤児院の子達も冒険者登録して孤児院を支えるって奴が一定数いる。むしろ先生がシッカリしてるから尚更役に立ちたいってやつが多い」

「あー……仕事したいのに仕事がなくて焦ってあんな感じになっちゃったんですね」

「そう言うことだ。根は悪くないはずだ。今頃先生に叱られてるはずだ」

「そうなんですか」

「まあ、もう少ししたらスタンピートが来そうだし落ち着くだろう」

「スタンピート…」

なんだろう。スタンピートってもっと怖いやつじゃないのか?ハンスさん達やhowto本にもウエルカムって感じで書かれてるんだけど。

「そうそう!稼ぎどきじゃー!狩って狩って狩りまくるぞー!」

イリスさんが大声を上げた。それに呼応する形で三人が声をあげた。

問題なさそうならいいか。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

雪月 夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

今日も聖女は拳をふるう

こう7
ファンタジー
この世界オーロラルでは、12歳になると各国の各町にある教会で洗礼式が行われる。 その際、神様から聖女の称号を承ると、どんな傷も病気もあっという間に直す回復魔法を習得出来る。 そんな称号を手に入れたのは、小さな小さな村に住んでいる1人の女の子だった。 女の子はふと思う、「どんだけ怪我しても治るなら、いくらでも強い敵に突貫出来る!」。 これは、男勝りの脳筋少女アリスの物語。

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜

ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった! 謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。 教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。 勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。 元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。 力を持っていても順応できるかは話が別だった。 クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。 ※ご注意※ 初投稿、試作、マイペース進行となります。 作品名は今後改題する可能性があります。 世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。 旅に出るまで(序章)がすごく長いです。 他サイトでも同作を投稿しています。 更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

おもちゃで遊ぶだけでスキル習得~世界最強の商人目指します~

暇人太一
ファンタジー
 大学生の星野陽一は高校生三人組に事故を起こされ重傷を負うも、その事故直後に異世界転移する。気づけばそこはテンプレ通りの白い空間で、説明された内容もありきたりな魔王軍討伐のための勇者召喚だった。  白い空間に一人残された陽一に別の女神様が近づき、モフモフを捜して完全復活させることを使命とし、勇者たちより十年早く転生させると言う。  勇者たちとは違い魔王軍は無視して好きにして良いという好待遇に、陽一は了承して異世界に転生することを決める。  転生後に授けられた職業は【トイストア】という万能チート職業だった。しかし世界の常識では『欠陥職業』と蔑まされて呼ばれる職業だったのだ。  それでも陽一が生み出すおもちゃは魔王の心をも鷲掴みにし、多くのモフモフに囲まれながら最強の商人になっていく。  魔術とスキルで無双し、モフモフと一緒におもちゃで遊んだり売ったりする話である。  小説家になろう様でも投稿始めました。

卸商が異世界で密貿易をしています。

ITSUKI
ファンタジー
主人公、真崎隼人。 平凡ながらも上等なレールを進んできた彼。仕事思う所が出てきたところだったが転機が訪れ実家の卸商を継ぐことに。 その際、ふと異世界への扉を見つけ、異世界と現代両方での商売を考え始める。

聖女の紋章 転生?少女は女神の加護と前世の知識で無双する わたしは聖女ではありません。公爵令嬢です!

幸之丞
ファンタジー
2023/11/22~11/23  女性向けホットランキング1位 2023/11/24 10:00 ファンタジーランキング1位  ありがとうございます。 「うわ~ 私を捨てないでー!」 声を出して私を捨てようとする父さんに叫ぼうとしました・・・ でも私は意識がはっきりしているけれど、体はまだ、生れて1週間くらいしか経っていないので 「ばぶ ばぶうう ばぶ だああ」 くらいにしか聞こえていないのね? と思っていたけど ササッと 捨てられてしまいました~ 誰か拾って~ 私は、陽菜。数ヶ月前まで、日本で女子高生をしていました。 将来の為に良い大学に入学しようと塾にいっています。 塾の帰り道、車の事故に巻き込まれて、気づいてみたら何故か新しいお母さんのお腹の中。隣には姉妹もいる。そう双子なの。 私達が生まれたその後、私は魔力が少ないから、伯爵の娘として恥ずかしいとかで、捨てられた・・・  ↑ここ冒頭 けれども、公爵家に拾われた。ああ 良かった・・・ そしてこれから私は捨てられないように、前世の記憶を使って知識チートで家族のため、公爵領にする人のために領地を豊かにします。 「この子ちょっとおかしいこと言ってるぞ」 と言われても、必殺 「女神様のお告げです。昨夜夢にでてきました」で大丈夫。 だって私には、愛と豊穣の女神様に愛されている証、聖女の紋章があるのです。 この物語は、魔法と剣の世界で主人公のエルーシアは魔法チートと知識チートで領地を豊かにするためにスライムや古竜と仲良くなって、お力をちょっと借りたりもします。 果たして、エルーシアは捨てられた本当の理由を知ることが出来るのか? さあ! 物語が始まります。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

処理中です...